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第6965号

【主な記事】

わかちあいプロジェクト
生活困窮者に米を
[福井県越前市]郵便局も協力


 地元の郵便局長の働きかけで、郵便局が生活困窮者に米を運ぶ協力をすることになった。福井県越前市では「わかちあいプロジェクト」が始まり、11月8日に初めて生活支援の米が運ばれた。
 武生郵便局、越前市、越前市社会福祉協議会(以下、市社協)、JA越前たけふ(以下、農協)の4者間で9月25日、同プロジェクトの協定書を交わし、市では食糧支援の募集を行ってきた。
 同プロジェクトは、生活保護を受けるまでではないが、生活が困難になった人に米を送り、生活を立て直してもらうのが目的。
 4者は、それぞれの役割を果たしプロジェクトを進めている。
 越前市は水道料金を滞納している人の督促状に、募集のチラシを入れて案内をする。市社協は申し込み受付や相談、配送の手配を行う。
 農協は米の寄付を募り保管する。米の仕分け作業は、市が社会福祉施設に委託することにした。
 郵便局は割引料金のゆうパックで米を届けるほか、配送の際に異変があれば連絡するという役割。配送にゆうパックを利用する理由は「生活困窮者が米をもらっていることを知られたくない」という気持ちに配慮してのこと。民生委員や市社協職員が直接、米を持っていくと、周囲に困窮していることが分かってしまうからだ。
 市社協では「借金を抱えている」「急に仕事を辞めることになった」「病気で治療費がかさむ」などの理由で困窮している人を対象に、「日常生活緊急援助事業」を行っている。生活相談や生活指導を行い、必要に応じて米も支給している。
 年間130件ほどの相談があるというが、同プロジェクトは潜在的な困窮者の掘り起こしにある。
 越前市社会福祉課の波多野翼主査は「生活困窮者は、社協に相談に来る人以外にもまだまだいると思う。そういう人の方が心配だ。地域の関係が密接なだけに、生活に困っていることを近所に知られたくないという人もおり、どのように救済するかが課題となっている」と話す。
 その話を市から聞いた武生国高郵便局の岡田有旦局長は「郵便局でも何かお手伝いはできないか」とゆうパックで配送することを提案した。
 ゆうパックの集荷は単独マネジメント局の武生郵便局が扱っていることから、岡田局長は6月末に武生東部会の地方公共団体連携担当の辻岡大道局長(岡本局)と社会福祉課の出口茂美課長らとともに、武生局の前田英昭局長を訪ねて協力を要請した。
 北陸支社にはゆうパックの料金の無料化を要請したが、許可されなかったという。福祉や地域貢献などに利用するということで、特別に割引料金が適応されることになった。4者で協定を結ぶことになり、北陸支社を通じて本社の許可も得た。
 コシヒカリは人気で農協には余剰米がないということから、米が集まるかどうかも課題の一つだったが、農協から「新米が収穫される秋口なら、農家から備蓄用の古米を出してもらえるのではないか」という提案があり、農家に声をかけてもらったところ、目標(1か月20世帯に米を送る量)の1200キロの米はすぐに集まったという。古米とはいえ、大半がコシヒカリで十分に美味しい。
 9月に越前市わかちあいプロジェクトに関する協定の締結が地元紙などで報道されると、市外の農家からも「我が家の米が人の役に立つのなら」と寄付の申し出があったという。
 同プロジェクトでは月に1回5キロの米が3か月間届く。その後も必要と判断された場合は更新される。10月に市が第1回目の募集を行い、3件の応募があった。市社協で支援が必要かどうかを確認したところ、3件すべてに米を送ることになった。募集は毎月行われ、11月には3件の支援要請があった。
 11月8日に初めての配送があり、福祉施設から武生郵便局のゆうパックの車が出発して配送した。
 「今回の協定で郵便局が貢献できたのも、岡田局長が日頃から越前市の団体などでボランティア活動をしていて、市との良好な関係のおかげで進んだ話」と辻岡局長。
 岡田局長は「とても良いシステムができたと思う。みんなウィン・ウィンで、誰もがハッピーになれる」と話す。
 越前市のわかちあいプロジェクトのようなシステムは、生活に困っている人の助けになり、食糧も無駄にならない。米を寄付した農家も良い行いをしたという気持ちが残る。そして、何より郵便局は地域貢献ができる。全国の郵便局で横展開ができるのではないか。 
(永見恵子)


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