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第6965号

【主な記事】

[北陸支社]西嶋優支社長 インタビュー
「北陸トータルいちばん」を目指す
郵便局と支社の一体化を図る


 日本郵便北陸支社(西嶋優支社長)は、富山県、石川県、福井県下の郵便局(単独マネジメント局3ブロック39局、エリアマネジメント局8地区連絡会628局)を管轄している。西嶋支社長は富山県出身で、平成29年4月1日付で就任、2年目を迎えている。平成年号最後の年賀葉書も販売され、郵政事業にとっての最繁忙期を迎えている11月中旬、「社会の構造が複雑に変わる中、北陸エリアに必要とされる郵便局をどう展開していくかが課題」という西嶋支社長を訪ねた。28年3月の北陸新幹線開業により、観光客の増加や経済効果が出ているエリアと、少子高齢化や過疎化を迎えて厳しい環境にあるエリアが混在しているが、北陸支社の経営計画をはじめ、営業推進状況、損益管理、組織業績評価、今後の展望などを聞いた。
(聞き手は川口弘一編集部長)

■最初に29年度を簡単に振り返っていただけますか。
 29年度のスローガンは「みんなの力でやるぞ『北陸トータルいちばん』」で、損益管理では全国3位、組織業積評価では全国2位であった。支社と郵便局は距離的に近いし、社員の名前と顔が一致することも多く、コミュニケーションが取りやすいと感じた。
 各目標の推進状況は、毎週行っている支社経営会議で情報を共有するとともに、支社経営会議資料は、支社長コメントを付して各郵便局へも送付し、支社と郵便局の一体化を図った。また、各四半期の取組みのポイントについても、支社長メッセージとして管理者向け、社員向けに分けて発信している。

■本年度の経営計画や基本方針、それに付随する主要施策などについて伺いたいと思います。
 スローガンは本年度も「みんなの力でやるぞ『北陸トータルいちばん』」を再度踏襲することにした。
 また、損益改善を早急に進めて改善効果を確実にするほか、ゆうパック等の増加に対応するため、労働力を確保し、コストをコントロールするとともに、業務基盤を整備することにした。
 さらに、預かり資産の拡大、「貯蓄から資産形成へ」の流れの促進とかんぽ新契約の拡大、人材育成等による社員力の発揮に向けた取組みのほか、地方創生やコンプライアンスの徹底等、お客さまや地域からの信頼確保に向けた取組みの強化などである。

■北陸支社の環境を考えると、郵便業務収入やゆうパックの引受け数などは厳しい面があるかと思いますが、現状を含め、見どころのある要素を中心にお話しいただけますか。
 郵便・物流事業では、収益の拡大と営業推進体制の強化に力を入れている。北陸新幹線開業による観光客の増加は石川県(金沢市が中心)に相応の効果をもたらしているが、北陸全体としては大企業や事業所などが限られているほか、少子高齢化や過疎化も進んでおり、郵便業務収入の目標は達成しているものの、多額の上積みは厳しい状況にある。
 一方、ゆうパックの損益改善については、利益感覚を持った取組みにより、前年度の取組みが今年度の成果となって顕著に表れている。
 具体的には、前年度は対象顧客約760社について大口顧客は営業専門要員が、また中小口顧客は郵便局対応として担当を明確にした結果、スピード感を持って取り組むことで意識統一を図れた。
 そして進捗管理を行った結果、7月14日には対応を完了した。下期は対象顧客が約5000社あり、損益改善を早めるため、対象顧客ごと損益を試算し、損益が悪い顧客から優先的に対応するようにした。
 このことが功を奏し、本年度上期の利益額の推進は74.5%となり、全国平均の54.0%を大きく上回っている。このようにスピード感を持ってゆうパックの損益改善に成果を出せたのは、前年度からファーストパーソンレベルにおいても、利益感覚を持った営業スタイルを確立させたことにある。
 今年度のゆうパック引受個数は9月頃から減少傾向にあり、今後は利益質を確保しつつ、引受個数を増加させていくことが必要である。また、9~10月に「ハンパないって北陸2018」と銘打ったインセンティブ付き新規獲得キャンペーンを展開し、期間中約28万8000個のゆうパック、19万2000通のゆうメールを新規獲得した。
 現在も班長の独自性を最大限に活かした「自立型班長マネジメント」(富山県高岡局)や近隣局が連携してエリアで活動する「新川連合」(富山県・新川地域4局)など、フロントラインが創意工夫した個性豊かな手法でゆうパック拡大作戦に取り組んでいる。
 11月1日から全国一斉に年賀葉書の販売が始まったが、電子メールやSNSの普及のほか、高齢者が年賀状を書けなくなってきたなどの理由から年々減少している。
 一方、年賀状は日本の伝統文化であり、郵便局だけが扱っている大切な商品である。そこで今年度から石川県加賀北部地区連絡会の郵便局では、小学生に年賀状を書いてもらうという「ありがとう年賀」に取り組んでいる。
 この取組みは石川県と日本郵便との間で、29年3月22日に包括連携協定を締結しており、その中の「未来を担う子ども・青少年の健全育成に関すること」に基づいて取り組むもの。「年賀はがきを販売する」ということが目的でなく、子どもたちに手紙を描くことに親しんでもらい、手紙文化への理解と体験を深めてもらうことを大きな目的としている。
 北陸支社としては、若年層に年賀状を書いていただく有効な施策であることから、今後、支社内へ展開していきたい。

■そろそろ収束状況にあるが、集中満期の再預入状況をはじめ、定・定新規、年金自動受け取り、投資信託など、ゆうちょ営業の取組み状況はいかがですか。
 10月末現在、総貯金純増と期中お得意さま化顧客数で全国1位を走っているほか、定額貯金満期再預入率で2位、定額定期新規預入率で4位、年金口座獲得件数3位と全国を牽引している。特に定額貯金満期再預入率については、V3の取組みがスタートして以来、2年連続で全国1位を獲得しており、ぜひともV3最終年度である今年度も1位となって、V3のV3(3連覇)を成し遂げたい。
 この点については、各地区連絡会役員局長とも共通認識が醸成できており、北陸が得意とする冬の著増期の取組みで必ず逆転してくれると信じている。
 一方、10月末で販売額7位とやや全国に水をあけられている投資信託の取組みであるが、販売実績そのものは昨年に比べて伸びており、全国の伸びがそれ以上であった。
 ともかく「貯蓄から資産形成へ」の動きを加速させるため、紹介制度を一層活性化させていきたい。とりわけ「つみたてNISA」の取組みに力を入れており、取扱局はもちろん、紹介局の皆さんに「投資の必要性」や「つみたて投資の特徴」、さらには「非課税制度の有利性」などを分かりやすく解説し、「つみたてNISA」の商品性をしっかり理解してもらうことが大事である。
 社員一人ひとりが、「つみたてNISA」という商品が将来に向けた資産形成や福利厚生の面からも優れたものであることを理解してもらい、お客さまにも自信を持ってお勧めいただきたい。
 今後は、金融に携わらない管理者や社員に対してもセミナー等を実施し、「つみたてNISA」のすそ野を広げていきたい。まずは社員に魅力を伝えることを徹底し、足元を固めたい。

■北陸支社というと「かんぽが強い」というイメージがありますが、新契約の拡大、契約維持の強化も含め、かんぽ営業の取組み状況やご苦労などについて伺えますか。
 今年度は①新契約の拡大②契約維持の強化③募集品質の向上④人材育成を大きな柱として各種取組みを展開しているが、特に人材育成は重要課題であると認識している。そこで、今年度は人材育成の一環として、「エリア営業促進プロジェクト」に取り組んでいる。
 新契約システムの導入以降、これまではデータ営業を中心に営業活動を展開してきたが、既加入データによる「既加入者・既加入世帯」中心の営業だけでは、新しい簡保加入者(保有契約)のマーケットは拡大せず、年々実績向上が厳しい状況が続くことが予想される。このプロジェクトは、これまでの「点」の営業から、飛び込み営業等も取り入れた「面」の営業への転換を図り、未加入者・白地開拓・職域開拓につながる新たな営業スタイルを構築するために実施しているものである。
 プロジェクト発足時は手探りであったが、飛び込み訪問を数多く実施することで、苦にならなくなった。どんなお宅でも、訪問できる飛び込み営業をする上での心構えをはじめ、効果的な不在世帯対策やお客さまとの距離感の取り方、未加入者世帯への話法等、少しずつではあるが自信につながっているほか、諸先輩が残してくれた既契約のありがたさが理解されるなど、プロジェクトメンバーの成長を感じている。四半期ごとの評価反省を踏まえ、プロジェクトメンバーも成長している。

■「企業は人なり」ではないが、お客さまや地域の方と接する機会の多い社員に対する人材育成は極めて大事であり、合わせて人材確保の取組みはいかがですか。
 北陸支社管内では、郵便局での労働力不足がさらに深刻化している。配達業務は人的依存度が高く、「求人を出しても集まらない」「採用して間もなく退職する」といった悪循環が続いており、打開策を見い出せないのが現状である。支社としても人材の確保・育成が大きな課題となっている。
 こうした中で、これまでにない新たな発想で配達業務に取り組む郵便局がある。福井県の武生局では、慢性的な外務社員不足で苦労しており、採用しても長続きしない社員がどうしたら長く勤めてくれるか。郵便配達業務は、通常、「配達区」を社員に割り当てるが、採用当初の社員は仕事のやり方が分からないため、慣れるまで時間がかかり、それまでの間は他の社員が応援に入りカバーする。
 配達に慣れても配達能率には個人差があり、時間内に業務を終えることは容易ではないため、いつも他の社員の応援を受けることになり、そのことが大きな負担になっている。そこで、班長や配達精通者が業務量の多い街中の配達区を担当し高齢者や新人が遠方の業務量の少ない区を配達する。このことにより、遠方の区は配達が終わり次第、街中の区を応援するようにした。
 つまり、これまで応援される側だった社員が「応援する側」になることで、「必要とされる喜び」を感じられるようになり、配達への意欲が格段に高まる結果となっている。支社では、到底考えつかない「現場力」に改めて感心させられた。
 この取組みは離職防止にとどまらず、人材育成や多様な働き方への活用、また、防犯施策としても有効なことから、今後の在り方のモデルケースとして、支社内の郵便局へも展開していく(2018年度全国郵便外務取組み発表会でも発表)。

■ダイバーシティというか、昨今、女性活躍が叫ばれていますが。
 北陸支社の女性管理者の割合は9.8%であり、全国の7.2%を上回っているが、2021年までの一般事業主行動計画として当社が掲げる目標の10%にはわずかに足りていない。
 今後の当社の成長には、女性ならではの支店やコミュニケーション力がますます必要であり、今以上の女性管理者や役職者を増やしていかなければならないと認識しており、その意識付けの一つとして、10月に北陸として初めてである「女性役職者研修会」を開催した。
 課長・郵便局長代理を対象に、女性役職者の更なる活躍を推進するため、「キャリア形成の意識付け」、「コミュニケーションスキルの向上」、「働き方の見直し」など、グループ討議を中心とした研修を実施した。
 31人の出席者からは、日ごろの仕事上の悩みや、仕事と家庭の両立といった「ワーク・ライフバランス」等について、女性役職者同士で大いに意見交換をしたり、共有し合い、「明日へのステップにつなげられる有意義な時間となった」という感想が聞かれた。
 また、「異業種交流会」を前年度から開催しており、これらのダイバーシティ推進の取組みは、各郵便局での取組みを含め、情報紙「かがやき通信」を発行して管内周知をしている。

■事業にとって「部内者犯罪」は致命的であり、事故や不祥事を含め、根絶に向けての取組みはいかがですか。
 部内者犯罪はお客さまの信頼を著しく裏切るもので、万一発生すると、今までの努力は一瞬にして水の泡となり、5倍、10倍の努力はもとより、長い年月を有すもので、いかなる理由があろうとも絶対に起こしてはいけないものである。
 「決まったことを、決まったとおりにやることが鉄則」であり、北陸支社独自策として、前年度から配達経験の浅い社員全員と管理者が個別対話を実施し、不安や悩みを聞き、コミュニケーションの強化や職場環境の整備を図っている。
 また、社員の業務知識や防犯意識の向上を図るため、支社作成の理解度テストを関係者に実施し、理解不足の社員を絞り込み、個別指導を隔月実施している。
 このほか、コンプライアンス違反や防犯重点ルール違反発見時の報告については、北陸独自施策を含めて徹底を図るとともに、実効ある指導に活用している。

■地方創生の取組みですが、全国的に地公体と包括連携協定などを締結していますが、北陸支社管内の締結状況やこれはという取組みがあれば紹介いただけますか。
 県レベルでは、2017年3月に石川県と締結したのが皮切りで、福井県とは今年の2月、富山県とは3月に締結した。また、市町村については6市町村と締結している。これは諸先輩をはじめ、局長や社員の日ごろの努力の成果である。しかし、締結することが目的ではなく、それを契機に関係を構築し、地域の発展、事業の発展のために進化させていくことが重要である。
 現在未締結の市町村に対しても、担当局長を中心に、地域のみまもりや道路の損傷等の報告をするとともに、地域との信頼関係を深めていきたい。

■お忙しい中、幅広くお話を聞かせていただきありがとうございました。事業を取り巻く環境は厳しいですが、各種のアイデアや意気込みを伺い、楽しみも出てきました。年度末の吉報を楽しみにしています。


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