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第6965号

【主な記事】

土曜休配 働き方改革に対応
[日本郵政] 長門社長 早期の郵便法改正を望む

 日本郵政の長門正貢社長は11月28日の定例記者会見で、総務省の郵便局活性化委員会に、土曜日配達の休止などを説明したことに関し、「郵便物は年々減少しているが、一方で郵便事業は週末や深夜に依存している労働環境にあり、働き方改革への対応が求められている。これらの状況を改善することが喫緊の課題」とし、「安定的なサービスを提供していくには、労働環境の改善を図るために、ユニバーサルサービスの内容にも踏み込んだ抜本的な業務の見直しが必要」と強調、「郵便法の改正が必要となり、次期通常国会での改正を望む」との考えを明らかにした。

 会見では総務省の情報通信審議会郵政政策部会の郵便局活性化委員会に11月16日、日本郵便から郵便物の配達頻度の見直し、土曜配達の休止、送達日数の見直し、送達日数原則3日以内の繰り下げについて説明したことに関し、「郵便物は年々減少し、2001年度の約262憶通が、2017年度には約172億通となっている。電子メールやSNSなどの通信手段の多様化により、減少傾向は継続していく可能性が高く、郵便に求められているニーズと変化に即したサービスの提供を行っていく必要がある」との認識を示した。
 一方で「郵便事業は週末や深夜に依存している労働環境にあり、近年は労働力不足による長時間労働も問題となっている。働き方改革への対応が求められているなか、これらの状況を改善することが喫緊の課題。こうした環境下で安定的なサービスを提供していくには、労働環境の改善を図って働き方改革を進めるとともに、ユニバーサルサービスの内容にも踏み込んだ抜本的な業務の見直しが必要と考え、今回の要望に至った」と強調した。
 また「これにより郵便から荷物分野への経営資源のシフトも進めたい。今回の要望事項は、郵便法の改正が必要となる。日本郵便の今後を見据えれば、ぜひとも実現したい。闊達に議論いただきたい」とし、「差し迫った状況にあり次期通常国会での改正を望む」ことを明らかにした。
 2019年3月期の中間期決算については「郵便物流事業、とりわけゆうパックの収益拡大により、日本郵便が発足した2012年10月以来、初めて中間期で黒字となったことや、かんぽ生命の資産運用収益が堅調に推移したことから、日本郵政グループの純利益は前期を435億円上回る2237億円となった。通期の業績予想3300億円に対する進捗率は67.8%となり、今後の見通しを考慮して500億円上振れさせて3800億円に上方修正した」とした。
 今年5月に公表した中期経営計画2020のスタートとしては「おおむね順調だった」と評価した。下期については「郵便物流分野でゆうパックの収益は順調と見込む一方で、料金改定に伴う年賀はがきの販売減少というリスクも想定される。金融分野は金利が低位で推移するなど厳しい環境が続いており、決して楽観できない。日本郵便はゆうパックの利益確保と年賀はがきの確実な販売、ゆうちょ銀行は運用の一層の高度化・多様化や手数料などの非金利収益の多様化、かんぽ生命は新たな顧客層の開拓や運用の多様化などに取り組み、実績を積み上げていきたい」との考えを示した。
 年末の郵便局の繁忙については「お歳暮の配送が本格化することでゆうパックなどの荷物の増加が見込まれる。荷物の引受け状況は一時期に比べると一段落したとはいえ、12月期は例年平常月の5割増しの取扱量になる。区分け、配達について万全の体制で臨む」と改めて強調した。
 具体的には「昨年同様、業務の標準化に向けて大口のお客さまには差出日、差出時間、配達の猶予などを要請。アルバイト等は11月19日現在で9割程度確保できている」とし、「不足する場合には社員の応援などにより対応。施設の借り入れ、小包区分機の増配分、運送便の確保、本社・支社社員の応援体制の準備等を行っている」とした。
 年賀はがきについては「11月27日現在、収入ベースで前年比101%の販売状況で推移。今年も人気アイドルグループの嵐をコミニュケーションパートナーとして起用し、あらゆる世代に日本の文化と言える年賀状を楽しんでいただこうと趣向を凝らしている。東京2020大会寄附金付、ご当地キャラ等を題材にした寄附金付地方版などを取り揃えており、ぜひご愛顧を」と呼びかけた。
 また、配送ロボットの実証実験について述べた。日本郵便ではドローンなど将来を見据え、新しい技術と物流の融合に向けた取組みを行っている。配送ロボットによる実証実験を昨年12月に福島県南相馬市スポーツセンターで行ったが、2回目として「実際の道路に近いリアルな環境で、配送などの実証実験を検討している。今回も福島県での実施を検討中で、自治体などと調整中」とした。
 このほか、会見では配達の見直しなどサービスレベルを下げることについての質問が出たが、長門社長は「郵便は年率マイナス2.2%と減少傾向だが、大家族から核家族へというようなフレームがあって配達先は増えている。1996年度は4990万軒だったが、2017年度は6240万軒。郵便も減っており、1か所当たりの配達通数は1.39通から0.92通となった」と述べた。
 そのうえで「経営へのインパクトは、仮に昨年の物数の172億通で2.2%減だと、単純計算で今年度は3.74億通ほど減る。すべて62円のはがきとすると年商ベースで約232億円、82円の封書だと約307億円の減となる。危機意識は非常に強い」とした。
 これに加え「働き方改革が問題になっている。労働力のひっ迫問題もあり、今回の意思決定につながっている。有効求人倍率は今年4月で1.45倍だったが、一般運搬業務は2.57倍、運輸の中の郵便事務は6.05倍。労働力ひっ迫は日本全体のテーマだが、とりわけ我々が風圧の高いところにいる。土曜日配達の担当者は5万5000人、さらに、深夜帯の区分業務等の担当者は8700人。働き方改革が大きなテーマでもあるということからも、配達頻度の見直しが必要ではないかと思っている」と背景を説明した。
 また、実施したアンケート結果として「料金を値上げして土曜配達を行う」よりも「土曜配達を休止する」方が良いとする回答が、個人で72%、企業で75%と圧倒的に多かったことを紹介した。
 ゆうパックの伸び率が落ち着いてきていることに対しては「昨年度に2~3割ほど増えていたが、4月が21.2%、5月18.0%、6月8.5%、7月6.0%、8月2.7%増えたが、9月はマイナス7.2%だった。小口は3月から平均12%を値上げし、大口には絶えず見直して、かなりの伸び率で価格を上げさせていただいたこともあり、伸び率は落ちているが売上ベースでは当初計画をまだ上回るレベルにある。もちろん、量はあった方が良いが、そのために単価を下げるといった施策は絶対に取らない。労働対価にふさわしい価格という政策は変えず、様々な意味でのクオリティで差別化を図っていくしかない」との考えを改めて明らかにした。
 来年は平成から改元されることに伴い10連休(4月27日~5月6日)がある。その対応については「書留や速達、ゆうパックなどは配達するが、普通郵便は日・祝祭日は配達しないとなっている。初日が土曜日なので、この日はともかく、その後は理論的には配達しない日になる。しかし、国民の皆さまに不便をかけるのではないかと想像できるので、最終決定はしていないが何らかの対応を検討したい。郵便局も金融窓口を含めて、サービス提供のあり方として前向きに検討していきたいと思っている」とした。


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