「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

6964号

【主な記事】

郵便局活性化委 日本郵便が法改正を要望
土曜休配、送達日数4日に
全国均一料金 例外の見直しも


 日本郵便は11月16日に開かれた情報通信審議会郵政政策部会の第12回郵便局活性化委員会(米山高生・主査=東京経済大学経営学部教授)に、「土曜日の郵便物の配達休止(速達・特殊郵便を除く)」「送達日数を現状の3日から4日に変更する」「郵便物の全国均一料金の例外の見直し」を提案。関連する郵便法の改正を要望した。国民生活とも密接に関係しており、利用者である国民の理解も不可欠となる。審議に当たり米山主査は同委員会で「関係者の意見を十分に聞き、丁寧な議論を行いたい」と方針を示した。

 今回の制度見直しへの要望は、郵便物の減少による赤字の改善や働き方改革、業務の効率化などを実現するために、同社では、料金値上げではなく、サービス水準の見直しを選択した。
 郵便物の配達日数や送達日数については、郵便法の第70条に「1週間に6日以上の配達を行う」「差し出されて3日以内に送達する」などの郵便業務管理規定が示されている。土曜日の配達休止(週5日配達)や送達日数を4日に変更するには、法改正が必要となる。
 日本郵便では配達日数を週5日にする理由として▽郵便ニーズの変化や週休2日制の定着など土曜配達の相対的な重要度が低下していること▽配達要員の確保が困難となっており、配達物が減少している土曜日を休配とすることで、人材を荷物に再配置できることを挙げている。
 日本郵便によると、普通取り扱い郵便物の土曜日配達のために出勤する社員は現状では全国で5万5000人いるが、法改正されれば、そのうち4万7000人の再配置ができるという。それらのリソースを荷物の配達や別の業務への再配置ができる。土曜にバイクが稼働しないため、燃料費の削減にもつながる。
 送達日数の変更は、区分などの作業時間を深夜から翌日の朝に切り替えることにより、一部では送達日数が4日になることから、改正を求めた。働き方改革の一環として、深夜労働の軽減を図るのも目的の一つ。
 影響を受ける普通取り扱い郵便物は全体の56%・約96億通だが、4日目の配達となるのは0・1%・700万通。翌々日配達が84%・約81億通、3日目配達が16%・約15億通。
 これらの改定により、週の前半に郵便物を出さないと週内には届かなくなる。月曜日に出せば水曜日に届くが、水曜日に出した場合は土日を挟むため、届くのは翌週の月曜日になる。速達は変更なし。
 泉本小夜子委員は「速達の利用が増えて日本郵便の収入が増えるのではないか。料金設定はどのように考えるか。翌日の区分は郵便だけなのか」と質問した。
 諫山親執行役員副社長は「速達も減少しているが、改定により、速達のニーズが高まるのなら、動向を見極めたうえで料金を見直すこともあるのかと思う。ゆうメールは形状が郵便に近く、郵便と同様の見直しを行っている」と答えた。
 全国均一料金と例外については、郵便法第67条に「第一種・第二種郵便物の料金は配達地により異なる額が定められていないこと。ただし、会社の1事業所において引受、配達を行う郵便物料金を除く」と規定されており、配達区域内で引き受けて配達する場合は、特別の割引料金を適用している。
 しかし、ネットワークの再編により、地域区分局が統合され、地域区分局と配達局が一致しなくなった。今回の改正により、配達エリアとは違う地域区分局でも特別割引料金が適用されることになる。
 同社ではそのメリットについて▽特別料金を適用する郵便物の差し出し場所が拡大することで、利用者の利便性が向上する▽配達局から地域区分局への輸送が不要となり、業務の効率化が図れることを挙げている。
 これらの要望を受けて総務省では、その効果の検証や対応策を検討する。今回日本郵便が選択したサービス水準の見直しの妥当性を検証する。検証項目としては、2017年のはがきの値上げの影響、他のサービスを見直すより適切な理由、土曜休配の影響、4日目に配達されるケースとその理由・対象の絞り込み、郵便区内特別郵便物の対象範囲を拡大した場合の影響など。このほか、ユーザーアンケートや外国の事例の紹介なども行う予定。
 日本郵便が提出した郵便事業赤字については、東條吉純・主査代理が「毎年200億円ずつ赤字が増えていくのは、社会に対するインパクトが大きい」と述べており、総務省では要望が実現した場合の日本郵便の試算に基づく2020年以降の財務上の効果についても検証する。
 同委員会では出席した委員らから意見があった。東條主査代理が「ユニバーサルサービスの水準引き下げの影響を緩和する観点から言えば、例外を利用すれば、一部のエリアは水準を引き下げなくて済むので良いところもあるのではないか」。
 桑津浩太郎専門委員は「2020年以降の需要の減少による200億円の赤字はそうだろうと思う。リソースの再配置で対応したのは英断だったと思う。しかし、この引出しは今回しか使えない。3年から5年の余裕ができたに過ぎない。サービスの開発や改善はこのタイミングが正念場。目標を設定するのが良いのではないか」。
 関口博正専門委員は「値上げをせずにサービス水準に踏み込んだ会社の意思は尊重すべき。郵便は落ちているが、荷物は増えている。雇用は吸収できる。労働環境を良くするということで、スピード感ある審議をすべき」。
 横田純子専門委員は「現状では朝の6時に区分が終わることになっているが、午前2時に終わらせるなど他のパターンも見せて欲しい。その中でこれが一番良いというのを比較できれば、利用者も納得できるのではないか」。
 泉本委員は「今回は郵便にフォーカスしているが、荷物も含めて再配達を止めないと、夜の作業を減らしても配達で回る人の負担は変わらない。再配達を減らす施策も提案してもらいたい」。
 石山アンジュ専門委員は「エリアごとの収支予測、人員不足の予測を提示してもらいたい」、大平展子専門委員は「日本の郵便制度の特色は、安全安心、低料金で利用できること。その原点を忘れないでもらいたい」。
 最後に米山主査が「郵便から荷物に内部補助があるのであれば、そのコストについて公正性、透明性が必要」と述べた。
 法改正までには、同委員会での関係者ヒアリングや議論を経て、総務省が法改正案を作成。法案を同審議会に諮問、パブリックコメント、答申、閣議決定という手順を踏むことになる。


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