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第6959号

【主な記事】

現場に寄り添って仕事
[東海支社]山﨑雅明支社長インタビュー


 エリア局出身、現場をよく知る支社長が初めて誕生した。約4万人の社員を率いる山﨑雅明日本郵便東海支社長(執行役員)は就任して約4か月。「支社の仕事を現場に合った形に変える」と様々な取組みを始めている。防犯やコンプライアンス、金融営業の推進の仕方、郵便・物流のコストコントロールなど現場では課題が山積している。山﨑支社長は「本社は変わり始めた。東海支社も変わっていかなければならない」と意気込む。                                                       
(永見恵子)

支社の業務を見直す


■就任して一番に取り組みたいことは。
 私は全国郵便局長会の副会長をしていた時に、会社の副代表主幹(2014年10月に創設/全国局長会の会長と副会長が代表主幹・副代表主幹を務める)を2年間務めた。その間、本社と意見交換や議論をしてきた経験が、支社長になり、とても助けになっている。
 本社で議論をしていて、髙橋会長や横山社長、米澤上級副社長が本社を変えようとしているのがよく理解できた。
 一方で、支社は本社ほど変わらなければならないとは捉えていなかった。着任してみると、支社は民営化前後とほとんど同じ状態。支社も変わらなければならない。変えるのは私の役目だ。
 現場の課題を解決していくためにも、副支社長、副本部長、各部長と共にまずは支社の業務の見直しや会議、研修のやり方から変えなければならないと思っている。そして皆が協力してスタートしてくれていると実感している。

■変わるということは。
 現場が一生懸命、営業して稼いでくれて、支社がある。だから、支社は現場に寄り添った仕事をしなければならないと思う。
 支社は指示文書や各部門のデータの分析はするが、現場は指示通り動いているのか。またその指示が現場にとって良いことかも含めて、サポートできているか。分析を活用できているのか。これまでの支社はそれらを検証する力が弱かった。
 営業推進や郵便・物流分野のデータを集めて分析はするけど、データを使って現場の仕事に生かすのは道半ばだということが、この2~3か月の間によくわかった。それを直すために、まずは支社の仕事を整理しようと。そうして時間を生み出したら社員も勉強し、現場の実態を見て、サポートやアドバイスができる組織にしたい。
 今、毎朝幹部ミーティング、毎週月曜日は経営会議を行っているが、副支社長、副本部長、各部長はしっかり課題を共有して、一枚岩で課題解決に頑張ってくれている。

■分析データが生かせいていないということだが。
 会議の資料は必要な資料だけを出すように指示している。「現場が読まない資料は出すな」ということ。持ち帰ってもほとんど見ないような無駄なことは止めて、「ここだけはどうしても見てもらいたい」という分析資料に絞り、対策会議をするように指示している。
 不要な資料を作らないことで時間が生み出せる。その時間を活用して部署ごとに何人現場に出せるのか、2週間ほど前からその計画を立ててもらっている。

■現場に出て確認することは。
 指示したことを現場がやっているか確認しなかったら意味が無い。見たうえでできていないのだったらサポートするし、方法を考える。なぜできていないのかをあらゆる方法で検証する。
 現場はできないことは隠さずに言ってもらいたい。支社でできないものは本社に依頼することもできる。
 また、コンプライアンス、防犯、交通ルールなどいろんなルールがあるが、現場に行ったら、ルールが守られているかも見てきてもらいたい。
 「ルールを守って正しく仕事をする」ということは、お客さまからの信頼を得るための第一条件だ。

部門ごとの連携を強化

■課題解決のために取り組んでいることは。
 防犯、コンプライアンス、金融営業の推進の仕方、郵便・物流のコストコントロールなど各部門に課題がある。私はこれらの課題を、副支社長、副本部長、各部長と共に、自分も勉強しながら、課題ごとに現場を見て、問題点を解決するための協議を行っている。
 現場で仕事をやりにくくさせているものがあると、他の局にもあるのではないかと、広く見直しをしている。各部署にそういう問題があり、整理しているところ。これが結構大変で、体が2つ欲しいくらいだ。

■会議のやり方も変えたということですが。
 これまで会議は部門ごとにやってきたが、より効果を上げるためには、合同での会議も必要。部の連携をマネジメントするのも私の仕事。郵便・物販担当の副統括局長と郵便営業の部署、法人営業の部署が合同会議をすることもある。金融、法人、物販は一緒に会議をすれば、営業計画も立てやすい。
 他にも、地区統括局長と地区副統括局長は一堂に会して会議をしていたが、それは分散した。

■研修はどう変えた?
 損益を気にしながら管理者が仕事やマネジメントをするために、支社は研修の内容を示さなければならない。例えば、どういう話法やロールプレイングがいいのかを作って、現場に提供する。それを使っているのかについても現場で確認するように言っている。
 研修は、支社が主催するものと現場が主催するものの棲み分けをしようと整理しているところだ。現場の研修は、人材育成、営業推進、防犯、コンプライアンス…。これらの研修は結構な量で、研修に時間が忙殺されているところもある。改善が必要だ。

地方創生に貢献する郵便局を

■全国郵便局長会でも推進している地方創生への取組みは。
 今の支社長は民営化前の郵政局時代とは違い、トップセールスが必要になっている。ゆうパックの法人のお客さまや物販の会社を中心に積極的に会社回りをしている。
 「お互いにWinWinの関係を築き、共に成長する」という会社の方針を実践するためには、支社長はトップセールスマンでなければならないと思っている。それが地方創生にもつながる。

■具体的な方法は。
 ふるさと小包や郵便局ネットワークを活用し、地場産品を販売する。物販の会社を回って、「郵便局と一緒にやりませんか」と打診している。例えば、地元で800個から1000個の商品を売る会社があったとしたら、郵便局の販売ルートに乗せれば、もっと売ることができる。東海支社管内には2000局の郵便局があるが、一致協力して販売すれば、かなりの数が売れる。
 商品が売れれば、生産者や企業が潤い、仕事があるので定住する人も出てくる。郵便局だけでできるわけではないが、そういうことで郵便局は地域に貢献できるのではないか。

■自治体との連携は。
 日本郵便は社会的使命を持っている。だから地域に頼りにされ、地域の発展に役立つ郵便局でなければならない。
 地方創生や地域活性化は、各県知事様をはじめ、自治体の首長、地元企業も含めて、郵便局との協力関係を作っていかなければならないので、精力的に訪問させていただいている。
 郵便局も「住みやすい町づくり」に参加していくことは大事で、更に強力に進めていきたい。
 自治体と協定を結んでいるが、郵便局は大雨や台風の時でも、配達をしているので倒木や堤防の状況など情報がわかる。それらを自治体に情報提供しなさい、と言っている。協定を結んでも何もしないのでは信頼関係は生まれない。
 また、ふるさと小包やみまもりサービスをふるさと納税の返礼品にしていただく取組みも強力に進めている。おいしい産品は繰り返し購入いただける。みまもりサービスも地域のお年寄りの安心・安全を守る郵便局の社会的使命の役割を果たす一環と考える。
 うまく活用して、地域の活性化と郵便局の活性化・成長を考えなければならないというのも支社長の仕事。人口減少の中、地域が元気になることは郵便局ネットワークを守ることにもつながるからだ。

権限と責任を明確に

■ネットワークの将来像の実践は。
 本社は地方が自由闊達にやってくれればいいと思っている。ネットワークの将来像の中で、現場がやりたいことが挙がって来ており、集約している最中だ。
 それを進めるに当たっては、支社に権限を付与する方がよいと思っている。問題は権限と責任。権限が付与されれば、責任を持つということだ。支社は地区統括局長に権限を下ろしているが、「責任は持てよ」と言っている。
 公序良俗に反せず、ルール・マナーを守ることは当然のこと。後は地域から見てどうかということで判断する。
 当たり前だが、現場が本社のルールから逸脱してやることはない。
 本社のルールの中でもできることはたくさんある。小さな局のロビーで野菜の販売をしているが、昔はそんなことはできなかった。私が全国郵便局長会の副会長をしていた時、本社では「何かあった時に責任はどこが取るのか」など、いろんな議論があった。
 私は、棚貸しをして、地域の人が喜ぶ、郵便局も何がしかの手数料がもらえる。問題が起きても生産者がそれでいいというのなら、賛成という意見。そういったことを本社の人と議論して現在はOKになっている。一度本社が認めたことで類似したことは、支社に承認の権限が与えられて、支社でできるようにすればいいと思う。

■支社長・執行役員になって変わったこと。
 事業説明とあいさつが増えた。案件も会議も多く、それで時間が取られてしまう。2か月過ぎたころから、要領もわかり、現場に出ることができるようになった。
 変わったことは、収益と費用をコントロールしながら利益を出すことが仕事になったこと。しかし、やらなければならないことはわかっている。
 収益は営業を推進することにかかっている。費用は人件費の削減が一番大きいが、そのための方策もまた現場を回って確認している。
 人件費は課題だが、要員が厳しい状況にある。仕事のやり方や見直しもしなければならない。まだ改善の余地はあると思っている。

■ランチミーティングを始めたということですが。
 支社長室は衝立を外し、出入りは常にオープンにしている。地区統括局長にも支社に来たら「顔を出せよ」と言っている。
 「今度の支社長はどんな人だろう」と気にしている社員もいる。「みんなといろんな話をしよう」と着任して1か月位してから、支社の社員とランチミーティング(それぞれが弁当を持ち寄る形)を月に4~5回、行っている。
 私をみんなに知ってもらう、みんなの考え方も聞きたい。会社のことや将来のことなど雑談も入れて話している。現場から「こういう資料を使えて、ありがとう」と言ってもらえることを目指さなきゃ。ランチの場でそういう私の考えを共有できるようにしている。


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