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第6958号

【主な記事】

3日以内配達で議論
郵便局活性化委 働き方改革も


 情報通信審議会郵政政策部会の第11回郵便局活性化委員会(米山高生主査=東京経済大学経営学部教授)が10月12日に総務省で開かれ、日本郵政グループ労働組合や集配局の銀座郵便局と盛岡中央郵便局から、夜間や深夜の作業量が増える業務の仕組みや人手不足などの現状が報告された。「深夜の作業を日中に行っても3日以内の送達は可能か」という質問もあり、郵便法の3日以内の送達と働き方改革をめぐる活発な議論が行われた。

 日本郵政グループ労働組合からは石川幸徳書記長が出席し、「郵便・物流事業の現状~郵便職場で働く者の立場から」をテーマに、従業員の業務の実情が報告された。石川書記長は「郵便物の減少は続いているが、業務量は逆に増えている。荷物の増加によるものだけでなく、作業工程が増えている」と現状について述べた。
 その理由として、定形外郵便物の多様化・大型化により、仕分け作業が機械ではできないうえに、配達の際に郵便受け箱に入らないため再配達が増えていることを挙げる。特に追跡系郵便物(書留、速達、本人限定受取、レターパックプラス、代金引換、ゆうパック)が増えたことに伴い、夕方や夜間帯、休日の配達員の業務量が増加しているという。
 10月に増える翌年のカレンダー(定形外郵便物)は郵便受け箱に入らず、不在なら再配達。引受数も多いため、課題の一つになっている。
 サービスや種類の多様化、郵便物の大型化により業務量が増えたこと、人手不足を残業でカバーしていることなどにより、残業量も増えているという。2017年度の内務・外務合わせた全体の超過勤務は、前年比12・8%増となっている。
 同組合では、無駄な仕事の整理・効率性の追求として100項目の業務の見直しなどに取り組んでいる。
 銀座郵便局からは生島顕一局長が業務や労働力の確保について説明した。銀座局のエリアは中央区、港区・千代田区の一部で、ビジネス街が多くを占める。不在率が少ないのが特長。約1万5000社から「会社が休みの土曜日は配達不要」という申し出があり、土日祝日は平日と比べて、引き受け配達共に少ないという。
 銀座局は地域の輸送オペレーションを行っており、郵便物は19時、ゆうパックは19時と4時に取り扱いのピークを迎える。夕方から夜間・深夜の時間帯の作業が中心となっているが、人手不足から募集をかけても応募が少なく、人材の確保が難しくなっている。
 同局は正社員と期間雇用社員合わせて1197人が働いているが、48人が不足しているという。残業や非番や週休の人が出勤する形でカバーしており、割増賃金が必要となっている。
 盛岡中央郵便局でも岩手県内の高い有効求人倍率(1・49倍、8月現在)のあおりを受けて、必要な人員の確保ができていない。その理由として、松田健局長は時給単価が安いことやバイクでの配達、ゆうパックの荷物が重いことが敬遠されていることを挙げる。必要人数に対して、23人が不足しているという。同局でも銀座局と同様に人員の不足分は超過勤務や休日出勤でカバーしている。
 泉本小夜子委員の「夜の作業が中心になっているが、それを次の日の朝からの作業にすると、郵便法の3日以内の送達は間に合うのか」という質問に、日本郵便の小池信也執行役員は「現在3日目になっている離島など数%の地域は4日掛かることになる」と郵便法の規定が守れないと回答。
 更に泉本委員は「数%のために大変な思いをして働くなら、工夫を考える余地はあるのではないか」と提案。小池執行役員は「今の仕組みでは夕方に投函したものを翌日配達している。どこかで区分作業が発生してくる。東京―大阪間は翌日配達を維持しながらというところでやっている。どこに行くか分からない荷物が混じっているため、全部見ないといけない。それらを分けたうえで何ができるか検討してみたい」と回答した。
 労働組合からの問題点として挙げられた定形外郵便物やサービス・商品の種類が多いことについて、泉本委員からは「定形外の料金を上げる、カレンダーは扱わない、サービスや種類を見直すことはできないか」と質問。
 小池執行役員は「利用者の利便性を高めるため、商品を作ってきたが、扱いが多岐にわたり複雑になってきた。我々もオペレーションと料金の整合性ある体系について検討している。昨年6月には定形外の規格外の利用料金を見直し、7月にはゆうメールの規格外で取り扱っていた筒状のカレンダーは取り扱いを止めた。定形外・規格外ともに必要があれば引き続き、郵便法の範囲内で役所と相談しながら見直しを行っていきたい」と述べた。
 郵便と荷物の配達についての質問もあった。日本郵政グループ中期経営計画2020にもオペレーションの一体的見直しが打ち出されているが、石川書記長は「郵便と小さなゆうパックの併配に取り組んでいるが、1人の配達員がバイクと4輪は適応でき、シフトやスキル上は難しいことではない。トータルの労働力に限りがあるという意味では、労働力の柔軟な配置は決して簡単ではない」。小池執行役員も「荷物をバイクに載せることや4輪を増やすことなどはあるが、がらりといきなり変えることは難しい」と発言した。


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