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6954号

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郵便局活性化委 働き方改革で意見
“研修・商材が多すぎる”

 情報通信審議会・郵政政策部会・第10回郵便局活性化委員会(主査=米山高生東京経済大学経営学部教授)が9月13日、総務省で開かれ、「民間企業・郵便局の働き方改革の事例と提言」をテーマに、コンサルティング会社「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長(かんぽ生命保険社外取締役)がプレゼンテーションを行った。日本郵便やかんぽ生命保険など八つの企業・団体の取組みや改善結果などについて紹介した。

決済スピードが遅いの指摘も

 プレゼンの最初に小室社長は「労働時間を減らした企業は売り上げが上がっている。離職率の低下や採用する人の質や量の向上。企業によっては顧客満足度が高まったところもある」と働き方改革の成果を強調する。
 残業代が減ることを恐れる社員の声に対して、これらの多くの企業では、削減された人件費分は、研修や様々な支給方法で社員に還元しているという。
 かんぽ生命では、2015年5月から働き方改革に取り組んでいる。残業時間は毎年減っており、2017年度には2014年度比43%減を達成した。削減された人件費をeラーニング費用に充てている。
 業務効率を上げるため「朝夜メール」を導入し、業務の遅れの原因を分析し改善に役立てている。その内容は、朝その日の業務内容を15分から30分単位で書き出して、上司にメール。仕事を終えたところで、ズレが生じたら理由を書いて再びメール。残業は発生時点で部長に申請することも義務付けた。
 また、AIを活用することで、ベテランにしかできなかった保険の支払い業務ができるようになったほか、対応に使っていた時間が4分の1に短縮した。これらの取組みにより残業が削減され、現在はサテライトオフィスも試行的に取り組んでいる。
 日本郵便本社でも「8時間集中DAY」や「スマート会議」の実施により、2017年度には全体の年間残業時間が前年度と比べて22%(約9万3300時間)削減された。1人当たりに換算すると64時間となる。
 日本郵便の担当者によると、8時間集中DAYというのは、ノー残業デーと同じだが、「会社から残業するな」と指示されるというよりは「自ら8時間で仕事を仕上げて帰る」と主体的に取り組む姿勢をより明確に打ち出した。
 効率を上げて、その日の仕事が6時間で仕上がった場合は2時間の有給休暇を取って帰ることも認められている。
 同社では、残業せずに帰ることは、その時間が、趣味やスキルアップ、家族との時間に充てられて“楽しい”と思ってもらえるよう、意識改革を促している。
 スマート会議は、会議時間は30分と決めて、その中で結論を出すよう心掛ける。ペーパーレス化を図り、会議資料はパソコンを利用するようにした。
 日本郵便では、2017年度からモデル局に選ばれた郵便局が、働き方改革に取り組んでいる。モデル局はエリアマネジメント局の川崎大師局と利府局、単独マネジメント局の豊島局、青葉局、仙台中央局、福島中央局、生野、泉南の8局。東北の青森県中央局、盛岡北局、仙台北局、秋田中央局、山形南局、会津若松局の6局も自主的に同改革に取り組んでいる。
 川崎大師局では、窓口を2か所から3か所に増やした結果、移動時間の短縮と作業効率がアップし、期間雇用社員の残業が減った。また整理整頓に取り組んだところ、倉庫に使用していたスペースが空き、商談スペースとして活用することにした。顧客との話もしやすくなり、保険の年間売上の15%を1週間で売り上げることができた。
 豊島局では、これまでの「指示待ち文化」から「自ら問題発見・解決策を考える」ことにチャレンジした。
 小室社長は日本郵便の問題点として「研修が多すぎて業務を圧迫している」「商材が多すぎてカウンター周りが煩雑」「車両管理がアナログで、車両の連携が取れず、効率的な配達ができていない」「共働きとの接点がなく、新規のいない中での高齢者への繰り返し販売を行い、訪問回数が増えて生産性が低下する」を挙げた。
 また、法律などの制約があり、自分たちでは容易に変えられない問題点としては「土曜日も稼働し、管理職の土曜出勤の回数が多くなり、若手が管理職になりたがらない」「2万局一斉平等が求められ、なかなか決済ができないこともあり、本社決済のスピードが遅い」「ノウハウが属人化しているのに異動が多く、ノウハウが消失している」「前々年度発給の未消化年休が5月以降の付与となり、4月に消化しようとしてもできない」などがあるという。
 これらの問題に対して小室社長は五つの改革を提言している。
①「支社に権限を持たせることにより、スピーディな意思決定ができる。指示待ち文化を変え、地域の特色を出す」
②「多すぎる商材は選別して、販促用のポスターなどはPOSレジからオンデマンドで発注できるようにする。多くの企業は販促物は製作前に店が自発的に発注する仕組みを採用している」
③「研修を集約し開催回数の上限を決める。日程は年度初めに通知すれば仕事の計画が立てやすい」
④「社員の業務評価に再配達への熱心な取組みや交渉を加える」
⑤「共働き夫婦に対してゆうちょ銀行・かんぽ生命・日本郵便の商品を連携して営業するため、デジタル戦略を一元化する。それにはスマートフォンを使ったアプリで、接点を持つ。小学校の給食費の引き落としは最初の接点(ゆうちょ銀行で口座を開設する)として有効で、これを3社共通のアプリにする」
 小室社長は「働き方改革により魅力的な組織にしていかなければ、今後ますます職員の確保が難しくなる。ユニバーサルサービスが履行できなくなると、国民にとっても大きな損失になる。トライアルした局では喜ばれる価値を増やしながら売り上げ増も実現している。障壁となる法律があるならば前向きに改正の検討を進めていただきたい」と締めくくった。
 東條吉純主査代理からの「まだまだ取り組むことがある感じだが、どのように受け止めているか」という質問に、日本郵便の小池信也執行役員は「ご指摘を謙虚に受け止め、会社を挙げて取り組みたい。超過勤務は毎月見ており、見える形で減らそうとしているが、内実が伴わなければならない。仕事のやり方も含めて見直している。研修や商材が多いことは担当部署と具体的に詰めているところ。決済スピードが遅いことについてもすでに手を入れ始めている」と話している。


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