「通信文化新報」特集記事詳細

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第6939号

【主な記事】

郵便局ネットワークの維持を
北海道地方郵便局長会 佐々木靖会長


 北海道地方郵便局長会の佐々木靖会長(札幌中央地区会長/手稲駅前)は、5月20日に開かれた全特郡山総会で理事に就任した。広大な北海道、都市部と多くの過疎地を抱え、地区会の事情は大きく異なる。「会員への的確な情報伝達とコミュニケーションを深め、組織強化と人材育成に努める」ことを強調する。また「地方創生に積極的に取り組み、郵便局ネットワークを維持することが地域にとって重要」と語る。〈インタビュー=㈱通信文化新報社長 永冨雅文〉

 コミュニケーションを深める
長会は組織強化や後継者育成などの課題があります。まずは北海道地方会の運営にどのように取り組まれますか。
 局長会の活動などについて、北海道を含めて全国の状況を的確に伝えることで、会員の皆さんも動きやすくなると思います。情報の伝達とコミュニケーションを深めることが一番の役割と考えています。
 北海道は部外任用が少なく、社員から局長になるケースが増えています。少子高齢化で、住んでいる人も社員も減少傾向ですので、局長、役職者を含めて北海道全体で協力していかなければなりません。社員や局長の交流なども活発に行って、各地区で人材を育て、全道で活かしていくことも考えています。

営局舎率は。また、コミュニケーションを深め、風通しの良い組織にということでしょうが、会員の皆さまへメッセージを。
 北海道は約20%です。やはり局舎を持つと意識も高まってきますので、歴史ある先輩から局舎を譲り受けることも含めて進めていきたいと思います。
 また、組織強化には会員一人ひとりの力が本当に必要です。役員の力だけでは難しいので、状況を含めて様々な情報を発信しますが、コミュニケーションを深めて協力することが、業績向上を含めて組織の活性化につながると思います。
 話し合うことが一番です。何を考えているのか分かりますし、みんな優秀な局長ですから、話せば知恵も浮かんできます。ただ、これからの時代は局長もさらにグレードアップと言いますか、積極的に情報を集め、知識も広げていくことが求められます。
 働き方改革とかフィンテック、AIだのITなどといった言葉が飛び交う時代ですので、地区会での局長研修も多く実施しています。時代の流れ、ニーズ、変化に対応していかなければなりません。窓口でも今までどおりのことをやっていてもだめなので、情報も含めて局長も役職者も、若い社員も絶えず勉強していくことです。

長会は部会が要と言われています。部会の活性化も重要と思われます。
 部会長の機能発揮は大事です。業務では副統括があり、実績だけを上げていくのであれば部会長としての機能はあまり必要とされないかもしれませんが、局長会の組織力を高めるために、会員をまとめる重要な役割があります。
 また、全特からの情報がしっかりと降りるように、地区会長会議では忌憚のない意見を出してもらい、コミュニケーションを深めるフリートーキングの時間を多くして意見交換をしています。
 局長会は部会が基本です。特に新任の地区会長の地区に入り、半日くらい膝を交えた部会長との意見交換を行い、意思疎通を図る取組みをしています。副会長だった昨年から始めましたが、今年も6月からスタートしました。
 聞く耳を持てばみんなが話してくれて、問題点も明確になり、解決策も出てきます。北海道は広く、都市部もあれば過疎地も多く、それぞれ抱える事情が違います。
 札幌中央地区会は115局ですが、30局くらいの地区もあります。都市部も課題はありますが、郡部も悩みは多いです。

 地方創生を推進、〝婚活〟も 
営化から去年で10年となりました。この間は郵政事業にとって激動の時代でした。
 みんなで頑張り、よく乗り切ったなと思います。昔からの地域と共にという意識があったからこそでしょう。仕事や会社の形態など大きな変化に耐えられたのは、やはり自分たちだけが良ければというのではなく、地域のためにという思いが強くあったからです。
 自分たちだけの収益、組織だけを考えるのではなく、先人から受け継いだ地域と共にとの150年近くになる歴史への思いがあったからこそ乗り切ってこられたと思っています。

営化の当初は郵便局現場も混乱しましたが、改正法によって改めて公益性・地域性が重視されるようになりました。郵便局は変わってきましたか。
 単に地域の人口が減ってきたからと、多くの金融機関は店舗の統廃合や人員削減が話題となっていますが、やはり郵便局は残してほしいとの声は大きいものがあります。
 そうした思いに応えなければと我々も頑張ってきました。公益性・地域性というのは、昔からのものですから、我々の中に染みついています。
 目標はどんどん厳しくなり、要員もそうです。加えて働き方改革です。さらに女性活躍推進といわれますが、我々はかなり進んでおり、定時に帰るのが定着してきています。
 子どもを保育園にあずけている女性も、だいぶ働きやすい環境になってきていると思います。それほど違和感はありません。地区会などにも発信して、研修会もしていますが、上手にシフトしているのではないでしょうか。

海道は広大で、札幌一極集中の一方で過疎地も多いです。局長会が取り組んでいる地方創生の現状は。
 地方創生に関しては、179市町村のうち158市町村で包括連携協定を締結しています。今後も積極的に進めていきますし、地域貢献活動もどんどん推進していかなければなりません。
 北海道には多くの美味しい食材もあり、ふるさと小包として全国に発信していけます。
 地方自治体との包括連携協定は、昔の街づくり協議会のようなものを作り、自治体の意見を吸収して会社に働きかけ、自治体業務などを郵便局が受け入れていく地域に根差した活動、さらに経済の活性化を行うという意義があります。利益ではなく、町全体での物産開発などです。
 また、包括連携協定の一つとして婚活に取り組むことにしています。地方活性化、人口増対策という面からも、「郵便局の婚活“ポスコン”」と題して行っている福岡県筑前東部地区会から、ノウハウを教えてもらい、北海道でも初めて実施することにしました。
 今年は7月と9月に宗谷と根室で開催しようと準備をしています。

岡県で行われているのは、ポストを置いて、最後に意中の人に手紙を投函する方式になっていますが。
 福岡県筑前東部地区会の方法と全く同じです。成功すれば郡部がたくさんありますから、継続して行っていきたいと思います。
 どのくらいの人が集まるか心配ですが、まずはやってみようと地区会で実行委員会を立ち上げ、広報活動にも取り組みます。自治体の広報に載せてもらうことも考えています。
 婚活は独自に実施している市町村もあるようですが、局長会が主体となり、会社が協力、自治体が後援という形で連携して取り組みます。こういうことができるのも郵便局ネットワークがあるからこそだと思います。

 自治体との連携を強化 
便局ネットワークの将来像について、一定の結論が出ました。現在の郵便局を維持するとなっています。
 現在の郵便局ネットワークを維持するとなっている意味は重要です。将来につながる内容が多く含まれていますが、今から取り組んでいかなければならないと思います。
 日本郵政の長門正貢社長も郵便局は減らさないと言っていますし、我々もそれを信じて、将来像をまとめるに当たっては郵便局を減らさず、都市部は都市部で、郡部は郡部で成り立つような方策を具体的に考えていくことが重要との立場でした。
 概要が決まりましたが、残すためにはどのように経営していかなければならないか、当然、都市部は営業をしっかりやっていく、郡部はユニバーサルサービスが中心になると思いますが、具体的な方策はこれからです。
 ユニバーサルサービスや郵便局ネットワーク維持には当然、ゆうちょ銀行やかんぽ生命もからむ交付金・拠出金制度の関係もあります。北海道は特に過疎地が多いので、しっかりと取り組んでもらいたいと考えています。

便局運営の弾力化も入っていますが、北海道では由仁町で役場の支所業務を受託しています。
 由仁町のような例は当然、今後も考えられます。役場の業務を郵便局で行うというのは、北海道では可能性は高いと思います。包括連携協定の切り口としてもどんどん進めていきたいです。
 自治体は場所代、人件費もかからず、郵便局では手数料収入になります。自治体は手数料を払っても経費節減になるでしょう。そのためにも郵便局を維持していかなければなりません。

配センターの統合も進んでいますか。北海道は特に2名局が多いと聞いています。運営上、苦労も多いのでは。
 管理者のいない集配センターも多くありましたが、局長が社員の育成を含めて責任を持つということで、統合は今年で3年目ですが着実に進めています。
 北海道は2名局も多いですが、将来にわたってどう地域の中に残していくか、集配業務との兼ね合いも考慮しながら、地域のために知恵を出し合っていくことです。
 地域から公共的な機関がなくなると、ますます過疎化が進みます。金融を含めユニバーサルサービスを行う郵便局は、いわば地域にとって最後の砦です。
 特に過疎地では、公共性・公益性を重視した郵便局経営が必要であり、2名局の果たす役割も重要です。
 交付金・拠出金の制度も期待しますが、ユニバーサルサービスコストについてはまだ議論の余地があり、過疎地でもしっかりと郵便局ネットワークが維持できるように法整備が必要と思っています。

海道のみまもりサービスの契約状況については。
 昨年度は全国で約8700件、北海道では約680件で、目標の50%くらいです。今年度は早めに取り組み、年内には目標を達成しようと思っています。北海道は高齢者の1人暮らしの人も多く、需要はあると思います。ただ、お年寄りが過疎地に住み、札幌など都市部に子どもがいるという状況をいかに把握するか、郵便局での連携を強化することが必要です。
 また、北海道では町内会でも見守りを行っている地域は多いですが、お金がかかり人手が足らないという課題があり、郵便局のサービスを利用したいという市町村もあります。包括連携協定の締結を進めており、自治体と組んで実施することも進めたいと考えています。郵便局が一括して請け負えば割引もあるなどというのが最もふさわしいのではないかと思います。
 さらに、ふるさと納税の返礼品として採用してもらうことにも取り組んでいます。


全員営業で全種目達成を目指す
浅草橋郵便局(東京都)統括局長 池田淳一局長

 事業を取り巻く環境は依然として厳しいが、平成30年度も1か月半が過ぎ、新たな中期経営計画が発表された。それによると、郵政事業の持ち味を活かした新たな取組みも示され、各郵便局では地域との関わりを持ちながら、与えられた目標の達成に向けて本格的な取組みが始まったところである。
 そのような中、再度V1を目指す東京支社管内の郵便局を訪ねた。取材したのは、東京都東京中央北部地区連絡会の統括局である浅草橋郵便局(池田淳一局長)である。

 同局が所在する東京都台東区は、東京23区の中央からやや北東寄りに位置し、東は隅田川に接し対岸の墨田区との区境となっている。東京で最も古い市街地の一つで、浅草寺は建立1400年の歴史がある。
 区内の人口は微増傾向にあり、現在の人口は約20万4000人で、主な見どころは「浅草寺」「鳥越神社」「入谷の鬼子母神」「上野恩賜公園」などがある。6月に行われる「鳥越祭り」は有名で、毎年20万人の人出で賑わう。
 浅草橋局の概要

 JR総武線浅草橋駅で下車。西口改札を出て左の方向に約50メートル進んで右折し、約200メートル先の交差点を左折して清州通りに出て右へ曲がり、150メートルほど北進すると、右手前方に目的地である浅草橋局が見えてきた。
 池田局長は鹿児島県鹿児島市で生まれ育ち、昭和56年11月2日付で東京・芝局に採用となり、数局転勤後、平成10年3月26日付で浅草橋局長に就任、21年目を迎えている。24年4月からは統括局長を務めている。
 スタッフは局長、局長代理、課長、課長代理2人、主任2人、一般、期間雇用社員4人の12人。利用世帯は約2000、利用者は4400人ぐらいで、1日当たりの来客数は200~250人となっている。

 地域あっての郵便局
 池田局長は豊富な局長
歴を生かし、「お客さまがいて、地域あっての郵便局」という理念に基づくとともに、「お客さまから信頼され親しまれ、相談しやすい」郵便局づくりに努めている。
 そのためには、「明るい笑顔」や「さわやかなあいさつ」でお客さまを迎え、用事が済んだ後は気分よく帰ってもらうことが大事であり、社員が生き生き、伸び伸びと力を発揮できるような職場の雰囲気づくりに配慮している。
 また、CSも大事であるが、それ以上にESも大事にしており、社員に対しては誉めたり、改善すべきことは速やかに改善してもらうよう、アドバイスをしているようである。
 与えられた目標は達成

 厳しい事業現況が続いているが、局長と社員は「与えられた目標は少しでも速く達成するんだ!」という強い信念を持ち、バランスのとれた営業推進を心掛ける一方、自局の強みである郵便や物販を更に伸ばすための工夫と努力をしている。
 また、貯金や保険の金融商品についても、役職者を中心に、「全員営業の定着」に努め、できるだけ早く目標を達成できるように努めている。万一、推進に遅れが生じた場合には、原因を分析し、挽回策を検討し、速やかに軌道修正をするようにしている。
 このほか、2週間に一度は営業関係の打合せを行い、常にガイドラインを見据えながら万全を期している。
 人材育成にも配慮

 統括局長であり、局を留守にすることが多い。そのため、役職者はもとより、社員の育成には常に配慮しているようだ。業務にしろ、営業にしろ、エリア局の社員はかなり幅広い仕事をしなければならず、そのためには高い意識と、相応の知識やノウハウが必要となる。
 そこで、年2回は役職者会議を行って共通認識を持ち、統括局にふさわしい人材の育成に努めている。また、性格、得手不得手などにも左右されることもあり、「OJT」や「自己啓発」を併せながら取り組んでもらうなど、人材育成にはかなりの神経やエネルギーを注いでいる。このほか、現在の役職より一つ上を目指して頑張るよう、激励している。
 ミーティングの充実

 原則、朝礼は毎日行うこととし、司会は輪番で行っている。役職者は「当日の行動目標」や「お願い」などを全員が発言し、必要に応じて局長がアドバイスを行っている。
 また、できるだけ終礼を行い、「当日の成果・反省」を行うとともに、翌日のやるべきことなどの確認も行っているようだ。
 地域活動の実施

 郵便局が主体となった地域活動は実施できにくくなったが、地域行事には積極的に参加するように努めている。局長は「浅草橋五丁目柳北町会」の総務部長を務めたり、「鳥越神社十八ケ町睦」の町代表を務め、年間を通して地域との関わりを持っている。
 今後は社員も巻き込みながら、新たな取組みをしたいとのこと。


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