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 年/月

第6939号

【主な記事】

利用者目線で多様な役割を
郵便局活性化 郵政政策部会が答申案

 総務省の情報通信審議会郵政政策部会(米山高生部会長)は6月4日、「少子高齢化、人口減少社会等における郵便局の役割と利用者目線に立った郵便局の利便性向上策」(2月に諮問)の答申案をとりまとめた。
 これまで行った地方自治体やシンクタンク、利用者団体などからの郵便局の強みを生かした提言や日本郵便、総務省・地方自治体の取り組むべき方向性も盛り込まれた。表現を一部修正の後、パブリックコメントを実施し、6月下旬以降に答申を行う予定。
 答申案には、郵便局の強みを生かした郵便局に期待される役割として、「行政サービスの補完」や「暮らしの安心・安全」「住民生活」「まちづくり」のサポート、「郵便局のサービスの多様化」が示された。
 行政サービスの補完としては、主に自治体の窓口業務の受託や行政手続きのサポートを想定している。「郵便局の端末から自治体の端末への自動入力」や「テレビ電話を活用したオンライン行政手続きサポート」「パスポート交付手続きの本人限定受取サービスの活用」などが提案されている。
 暮らしの安心・安全では、自治体と連携しICTや既存のネットワークを活用し、安心・安全につながる情報を郵便局が収集する。郵便局の車両やバイク、郵便ポストにカメラセンサーを取り付けて児童や高齢者の見守りを行うなどがある。
 住民生活では、民間企業と連携し郵便局スペースを活用する。「民泊やカーシェアリングなど鍵の受け渡し」「郵便局の空きスペースでの保育サービス」「地域金融機関のATMや窓口の設置」「農産物の集荷・拠点配送」「買物支援や病院の予約、移動手段の手配支援」「市販の薬の販売(コンビニで販売されている範囲のもの)」などが提案された。
 まちづくりでは、郵便局ネットワークやスペースを生かした地域の様々な団体の情報発信や活動での活用、多言語対応などがある。具体例として「郵便局のスペースを使い地域のイベントや講座などの実施を支援する」「都市部の郵便局での地方の地場産品のPRや移住定住コーナーの設置」「郵便局と観光案内所をテレビ電話でつなぎ観光案内を行う」「訪日・在留外国人へのサービス向上のための多言語翻訳アプリを活用したサービスの拡大」「ゆうちょ銀行の口座申請の英語版の作成」「郵便局に無料Wi―Fiを整備する」「シェアサイクルのステーションポートの設置・自転車の貸出サービスの提供」などが挙げられた。
 郵便局のサービスの多様化では、ライフスタイルの変化に対応し、サービス提供を柔軟にできるようにする。具体例として「郵便局窓口での支払いに現金のほかクレジットカードや電子マネーも使えるようにする」「窓口開設時間を地域のニーズに応じて柔軟に変更できるようにする」などが盛り込まれた。
 郵便局の利便性向上に当たっては、「本来業務の利益で、ボランタリーで様々な施策を実施することを期待することは困難。利便性が向上するものであってもユニバーサルサービスの提供に支障のない範囲で実施する」「サービスは郵便局がビジネスとして実施できるよう、ネットワークなどの利用者、郵便局の利便性向上の受益者の適切なコスト負担の下で実施されるべき」「ICTを活用し業務を効率化し、そのリソースを有効活用し、ユニバーサルサービスと郵便局の利便性向上策の実施を両立する。その際にアイデアを地域に向けてアレンジする人材が必要で、外部人材の活用が重要」「郵便局は地域性や環境、大きさなどにより期待される役割が異なると考えられることから、規模や実情を、地域や自治体のニーズに合わせた利便性向上策を実施する」といった基本的考え方が示されている。
 国における取組みとしては、実証事業「郵便局×地方自治体×ICT」を実施する。自治体のニーズの高い郵便局の利便性向上策について、ICTを活用しながら、複数の地域で実施し、効果の検証や費用対効果の分析を行う。その成果をメニュー化し全国の郵便局や地方自治体に展開する。メニューの中から地域のニーズに合ったものを選択し導入してもらう。
 国が取り組むこととして、郵便局が自治体の行政の窓口事務を受託するに当たり、公権力の行使に該当しない業務のうち、郵便局で受託できるものの範囲を明確にする。地方自治体の職員が常駐しなくてもICTを活用することで管理できる方法について検討する。そのうえで、制度面の課題があれば見直すなどの検討を行う。
 利便性向上策はその多くが行政ニーズや地域の課題解決であることから、実施に当たり、地元の地方自治体と連携しながら進めていくことも提案され、地方自治体にはコーディネーターとしての役割が期待されている。地方自治体には利便性向上策の内容や必要性に応じて一定のコスト負担も検討してもらう。
 第8回郵便局活性化委員会では、泉本小夜子郵政政策部会委員(公認会計士)が「キヨスク端末はコスト負担もあり、郵便局のパソコンを使ってできるものもある。お年寄りが郵便局の窓口に来て局員に教えてもらいながら申請し、アウトプットも郵便局のパソコンからできるのではないか」「農産物の集荷・配送は、道の駅の配置にもよるが、道の駅に持っていかなくても郵便局で道の駅の役割を受け持ってもらってもいいのではないか」との意見を述べた。
 他にも「サポートという表現はお金になりにくいイメージ。ビジネスという言葉をどこかに入れてもらいたい」「人員を郵便から荷物にシフトさせることを盛り込んではどうか」「受益者を地方自治体も入るような表現にする」といった意見があり、主査一任という形で表現の一部を修正する。
 最後に小林史明総務政務官は「答申はいいものにしていきたい。その後、我々が行うのは場づくり。地方自治体が中心になり場を作る。地元の方々を含め外部人材と一緒になり地域をどうまとめるかだ」と述べた。
 同日、郵政政策部会長の会見が行われ、通信文化新報の「郵便局利便性向上策に自治体が民間企業やNPOなどへの参加の呼びかけや、役割分担などのコーディネートの役割を果たすことについて、自治体側からの意見は」との質問に、米山部会長は「地方自治体へのインタビューで希望を聞く中で、サポートを超えて広い意味での受益者としての意識を持ち、郵便局と協業・共同参画していただけるという意向があった。全ての自治体というわけではないが、特に過疎地を持つ自治体は積極的だと思う」と述べ、総務省も「自治行政局は同じ総務省内なので議論をしながらやっていきたい」とバックアップの意向を示した。


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