「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6936号

【主な記事】

日本郵政グループ 3月期決算
純利益4606億円


 日本郵政グループの2018(平成30)年3月期連結決算が5月15日に発表された。当期純利益は4606億円となった。前期は豪物流子会社・トール社の減損処理を行ったことから289億円の赤字だったが、4896億円増の黒字転換を達成した。今年3月に上方修正していた数値を106億円上回った(2.4%増)。中期経営計画の最終年度に当たり、計画に定められた連結ベースの当期純利益目標4500億円を超えることができた。

 グループ連結ベースの経常収益は12兆9203億円(前期比3.0%減)となったものの、経常利益は同15.2%増の9161億円だった。
 グループ各社の当期純利益をみると、日本郵便は前年比4437億円増の584億円、ゆうちょ銀行は同12.9%増の3527億円、かんぽ生命は同17.9%増の1044億円。  
 通期予想比達成率では、ゆうちょ銀行(100.4%)、かんぽ生命(121.5%)の金融2社も100%を上回ることができた。一方、日本郵便の通期予想比達成率は、449.8%。
 長門社長は「前期のトール社等にかかわる、のれん代減損計上により218億円に上る償却負担等がなかったことや、昨年6月1日からのはがきの10円値上げにより300億円を超える増収があったこと、他社からの流入も含め宅配便が大きく増加したこと等が要因」と説明した。
 2019年の通期業績予想は、グループ連結ベースの当期純利益が対前期比1306億円減の3300億円となる見通し。ゆうちょ銀行の同927億円の減益見通し(当期純利益2600億円)が大きく影響するものと見られている。他の連結2社も減益を予想しており、日本郵便は同134億円減の450億円、かんぽ生命は同164億円減の880億円となる見通し。
 長門社長は「新中期経営計画期間の中でもっとも厳しい1年が今年度になると考えている。低金利の影響をもっとも敏感に受けるのが今年度となる」と述べた上で、「金融2社による一層の手数料収入の増額、資金運用の深掘り、ゆうパックの取扱量のアップ・利便性向上やオペレーション態勢の一層の整備、トール社の経営改善・成長等に懸命に取り組んでいきたい」と対応策を説明した。
 1株当たりの期末配当は、日本郵政グループ民営化10周年を踏まえた特別配当の7円と合わせて32円とする。通期配当は中間配当金25円と合わせて57円とし、配当性向50.5%とする。2019年3月期の通期配当は50円を予定している。

安全・安心・交流の拠点に
郵便局活性化委 全特、JP労組が意見

 総務省の情報通信審議会郵政政策部会の第5回郵便局活性化委員会(米山高生主査=東京経済大学経営学部教授)が5月9日に開かれた。全国郵便局長会や日本郵政グループ労働組合に対してヒアリングが行われた。全国郵便局長会からは青木進会長が出席し「郵便局に期待される役割と郵便局の利便性向上策」をテーマに、これまでの取組みや将来に向けての郵便局活用策について説明した。実際に郵便局の業務に携わる局長から直接、現場の声が聞きたいと、委員らからは質問が相次いだ。

 青木会長は郵便局に期待される役割として「地域の安全・安心・交流の拠点」になることを挙げた。具体的には▽郵便と金融のユニバーサルサービスの提供▽防災(局長1万人が防災士の資格を持つ)▽高齢者対策(みまもり・買い物サービスなど)▽過疎地対策(地方創生支援、行政事務の受託)▽地域のコミュニティ機能。
 利用者利便の向上策としては、「お客さま本位の姿勢」を基本に、日本郵便と話し合いを重ねながら「郵便局ネットワークの将来像」を策定してきたことを明らかにした。
 その柱となるのは「地方創生」と「地域貢献」。これらを進めるに当たり局長会が重視することは、「公共性・公益性とユニバーサルサービスの提供」で、そのためには「2万4000の郵便局ネットワークを維持・向上させることが必要なこと」を強調した。
 3事業のユニバーサルサービスに加え、今後は地域のニーズに合った金融商品の提供や高度なコンサルティングサービスも想定している。75歳以上の後期高齢者が増える「重老齢社会」に向けたサービスの開発や、地域のニーズに合った商品・サービスを展開する。
 青木会長は「地域の特性を生かした商品を増やしていきたい」と述べている。地域のニーズに合わせ、郵便局運営の弾力化や窓口時間の多様化についても検討しているという。
 鈴木茂樹総務審議官の「窓口時間の短縮とあるが、例えば午前中は窓口、午後は営業で各世帯を回るといったやり方もあるが、どう考えるか」との質問に、同席した山㟢雅明全特副会長は「その問題は、会社と全特、現場の局長とネットワークの将来像の中で、議論しているところ。共通認識を持ちながら会社と一緒にやっていこうと考えている」と回答した。
 小林史明総務大臣政務官の「郵便局にテレビ電話を設置すれば、保険などいろんな手続きができる。場合によっては遠隔医療など販売手数料がもらえれば郵便局で行うメリットもあるのではないか」との提案に、青木会長は「将来的にはそういうものもあると思うが、郵便局の歴史の中で大切なのは地域との信頼。それには相対でやるのが基本。私はそこに力を入れてきた」と回答した。
 大平展子専門委員の「重老齢社会に向けたサービスとあるが、実現はいつになるのか。買い物難民対策などリンクできるものはあるか」という質問に、青木会長は「外出可能な人は局に来てもらい、自治体と連携し、例えばカードを作り、ポイントが溜まったら『元気で頑張ったね』と言って粗品を差し上げるとか、見守りで毎日、声をかけながら大変なことが起きたら自治体に相談することが考えられる。2人局で非常勤を1人配置すれば300世帯は回れる。買い物などいろんなことができる」と回答した。
 郵便局が地方創生を支援するに当たり、「町全体の活性化や経済発展につながること」を基本に置いている。ふるさと小包やゆうパックを活用した特産品の販売は、局長会としては地方創生に有効だと考えており、今後は更に観光や第6次産業への支援にも取り組む。
 地方産品の業者向け国際配送サービスやふるさと小包カタログ掲載商品の試食・展示即売会の開催、都市の郵便局窓口ロビーを活用した地域特産品の物産展の開催などを通じて、地域産品を支援していく。
 自治体との連携強化の方針も明確にしている。自治体とは、地域の見守りや情報の提供などを行う基本協定の締結を進めるとともに、一緒に「まちづくり協議会」を立ち上げて、自治体のニーズを聞きながら地域貢献のために郵便局ができることを提案していく。過疎地については、撤退する金融機関や自治体の支所の事務を引き受ける。
 過疎地での自治体事務の受託について、横江公美専門委員の「自治体の受託事務は、過疎地の郵便局で実施するところが少ない。過疎地の郵便局の黒字化に役立っていないのではないか」という質問に対して、青木会長は「郵便局は2人体制が多いが、都市部に利益が上がるような仕組み。過疎地は、損益の改善をやっている。買い物サービスやみまもりサービス、地域の物産販売などに取り組んでいる。上場したからには黒字になるような事業展開をしていく。ユニバーサルコストもこれからは重要な問題」と述べた。
 郵便ポストを地域の情報発信の拠点にするアイデアとして、ポストに観光案内や防災、ゆうちょ銀行のATM、Wi-Fiスポットなど必要な情報にアクセスするためのQRコードを貼るなどの取組みが紹介された。
 地方を訪れる外国人観光客も増えていることから、外国語にも対応した情報にもアクセスできるようにしている。
 竹内健蔵専門委員の「訪日観光客に向けたサービスの中で、郵便局でできるものはないのか」という質問に、青木会長は「外国人観光客に郵便局に来てもらう仕組みを考え充実させていかなければならないと思っている。長崎などに海外から大型客船が来るが、到着した時に郵便局の移動車でパンフレットを持っていくなど、いろんなオーダーがある中でできるものはしっかりやっていきたい」と述べた。
 小林政務官の「在住外国人が口座を作りたい、ATMが使いづらいといった要望があるが、窓口の対応をどのように感じているか」との質問に、青木会長は「個人的には外国人専門の窓口を置く郵便局を指定してもらい、外国の方にはそこに行っていただく。これから本社と相談したい」と述べた。
 日本郵政グループ労働組合からは、柴愼一中央副執行委員長が出席し、「社会構造の変化に対応した郵便局の活用」について説明した。日本郵政グループの持続的な成長に向けては、ラ・ポストの例を挙げ、高齢者を対象とした個人向けの商品・サービスの提供や、郵便配達員に訪問してもらい、みまもりサービスや買い物代行、家電の設置、パソコンの操作支援などを行っていることを紹介した。
 米山主査からの「かんぽ生命の渉外社員が高齢化しているが、会社や組合の対応は」との質問に、柴副執行委員長は「民営化された時は渉外社員は約2万人だったが、現在は約1万5000人になっている。募集しても人が集まらない。定着してもらうには厳しい営業指導や古い体質、文化を変えていくことが大切だが有効な手立てがない」と回答した。
 また、横江専門委員も配達員の確保について質問。柴副執行委員長は「時給が同じならバイクよりヤマトは車に乗れると言われる。教えて育てることもしているが定着率は低くなっている。オペレーションを軽減していくことも必要」と述べた。
 最後に小林政務官は「郵便局は何でもできそうというのは根本に信頼があるからだと思う。郵便局ネットワークは重要なインフラでどう大事にするのかを基本に、手数料を稼げる形にしていかなければならない。局長会はエリアごとにあり、文化や経済圏に一体感がある。それぞれにやりたいことがあり、それをやりうる仕組みになっている。ルールを変えれば、もっとやれると思うことがあればどんどん言ってもらいたい」と締めくくった。


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