「通信文化新報」特集記事詳細

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第6936号

【主な記事】

郵政グループ 新中期経営計画
成長分野に積極的投資
2020年度純利益 4100億円超

 「日本郵政グループ中期経営計画2020」(新中期経営計画)が5月15日に発表された。期間は2018年度から2020年度までの3年間。低金利が続き稼ぎ頭のゆうちょ銀行の収益が減少する中、業務の効率化や成長部門へのリソースのシフトや投資により、2017年度の利益水準を確保する。2020年度の連結純利益の目標は4100億円以上とし、成長につながる分野には3年間で数千億円規模の投資も検討する。日本郵政の長門正貢社長は「これまでで最も厳しい3年間になる。10年後を見据え、種まきをする時期」と話す。ユニバーサルサービスを確保しつつも、新会社での事業の推進やM&A、業務提携などを通じて業績拡大を図る方針だ。

 2017年度の一時的な利益(睡眠貯金利益や選挙)を除いた実質的な連結当期純利益は4004億円。2018年度の目標は3300億円に置いているものの、徐々に回復させ2020年度には4100億円プラスアルファにする。
 内訳は日本郵便が650億円、ゆうちょ銀行が2800億円、かんぽ生命が930億円。ゆうちょ銀行は2017年度と比較して300億円利益が減少するが、グループ全体で利益を回復させる。チームJPとして「トータル生活サポート企業」を目指す。
 グループ連結で1株当たりの当期純利益100円以上、同配当は50円以上を目標にしている。
 日本郵便は郵便物の減少傾向を見越し、郵便中心の事業運営から郵便と荷物の2本柱の事業運営にしていく。Eコマースの市場拡大は今後も続くことが予想され、宅配事業の事業比率を現在の3割(0.6兆円)から5割(1兆円)にしていく。2020年までにゆうパックの年間取扱数10.5億個を目指す。これに伴い集荷の担当者を荷物にシフトさせるなどリソースの再配分を進める。
 窓口事業については、地域のニーズに応じた個性や多様性のある郵便局を展開する。長門社長は「郵便局は規模を縮小するのではなく、より強化し、より一層活用することにより地域のニーズに応えつつ収益を確保する。地域との共生への取り組みを進めたい」と郵便局ネットワークの維持を強調した。
 現場の声を反映し、郵便局を活用した商品・サービスを提供することや地域のニーズに応じるため、窓口の営業時間を多様化することも同計画に盛り込まれた。長門社長は「従業員やステークホルダーとも相談し可能なところから実施したい」と話す。
 トール社については昨年度に人員のリストラや組織の簡素化を進めた結果、業績は回復しつつあるという。今後はITの集約やオペレーションの共有などを行い、経費を抑制する。
 国内BtoBの収益拡大に向けて、国内子会社のトールエクスプレスジャパンも含めた国内コントラクト事業会社を立ち上げ、国内・海外で一貫したソリューションを展開することで総合物流企業を目指す。更なるM&Aも視野に入れているという。
 国際物流事業は、エネルギーや小売、工業、医療、テクノロジー、地域ではオーストラリア、シンガポール、中国・アメリカ間、といった成長が見込めるところに経営資源を集中させる。
 ゆうちょ銀行は、財務の健全性を維持しながら運用の高度化・多様化により中長期的で安定的な収益を確保する。リスク性資産を中心に資本を有効活用し、国際分散投資を進める。
 適切なリスク管理をしながら、リスク性資産残高を現在の約79兆円から2020年度末までに約87兆円にする。
 子会社のJPインベストメント(1月設立)を通じて国内の産業へリスクマネーを供給する。財務の健全性の基準として確保すべき自己資本比率を10%程度に設定した。長門社長は運用の状況について「外債に投資しているがヘッジコストが上がっていて、リターンが少ない。ミドルリスクの投資を強化している段階」と述べた。
 事業面では、投資信託の販売に力を入れ、同残高を2017年度末に1.6兆円から2020年度末に3.4兆円とする。2027年度末には10兆円にする計画。サービスでは、口座貸越サービスやスマホ決済、小型ATMの設置を進め、中長期的な役務収益の拡大を図る。バックオフィスの業務を効率化し、2000人相当の人員・300億円相当の経費を圧縮。余剰人材のうち、約800人を成長が見込めるコンサルタント業務に振り分ける。
 かんぽ生命は、減少気味の保有契約を反転させ、成長軌道に乗せる。未加入者や青壮年層を開拓するなど営業力を強化するため、郵便局の渉外社員(現在は約1万5000人)を増員し1万7000人から1万8000人規模にする。将来は更に増やし、2万人を目指す。第三分野などの新商品の開発を進め、保障性商品の多様化を図る。
 サービスセンターの業務では帳票の電子化や保全事務のデジタル化を進め、事務を効率化する。これにより2020年度までに1000人分に相当する約30億円のコストを削減する。
 運用面では外債運用やオルタナティブ運用の多様化、株式の自家運用を拡大する。生命保険会社との共同投資も進める。
 グループの不動産事業では、4月に設立した日本郵政不動産を中心に保有資産の開発を行っていく。同社と日本郵便を含めた不動産事業の営業収益は、2017年度末に285億円だが、稼働率の上昇や賃貸住宅の賃料収入の増加を見込み2020年度末には330億円にする計画。
 大型の開発としては五反田の旧ゆうぽうと(2022年度竣工予定)や、日本郵便東京支社・麻布郵便局(2023年度竣工予定)、旧大阪中央郵便局跡地(同)の3つの開発を予定している。3年間で1800億円を投資する計画。長門社長は「これらの事業により、新たな収益を確保したい」と述べ、スピードアップを図るため&Aも検討したいという。


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