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 年/月

第6901号

【主な記事】

日本郵政株の2次売却始まる
最大で1.4兆円規模
1000億円を自社株買い

 財務省は11日、政府保有の日本郵政株式の2次売却を実施すると発表した。売却規模は、日本郵政の自社株買いの1000億円を含めて、最大で1.4兆円。今回は市中での基本売却(約1.2兆円)と市場動向により調整できる追加売却(約0.1兆円)の2段階に分けての売り出しとなった。調整枠の設定は、民営化した会社の政府保有株の売却では初めて。
 政府は日本郵政株を現在80.45%を保有しているが、今回の売却によりその保有率は上限で約57%(追加売り出しがない場合は58%~59%)となる見込みだ。
【政府の日本郵政株2次売却】
 日本郵政の政府保有株の売却は、郵政民営化法で定められた「政府は3分の1まで、日本郵政株式を売却する」に基づくもので、政府が今回、市中で売却する株式数は最大で9億9009万9100株(発行済み株式の22%)。
 その内訳は基本分が9億1393万7600株、追加売り出し分が7616万1500株(上限)。
 売却に当たっては、2014年の参議院総務委員会の「日本郵政株は可能な限り株式が特定の個人や法人に集中することなく、広く国民が所有できるように努める」という附帯決議に基づき、国内比率を約8割(個人が76%、機関投資家が4%)とし、国内での販売に重点を置いた。全国で広く販売できるようシンジケート団(証券会社など)は、過去最大の61社(海外は11社)でとなった。
 売り出し価格や追加売却も含めた株数が決まる条件決定日は、9月25日から27日の間で決まり、条件決定日の翌日から2日間が申込期間となる。申し込みまでのスケジュールとしては、11日の公表と同時に投資家への営業活動を開始。13日から21日までは投資家向けのプレゼンテーションが行われる。
 12日と13日で投資家にヒアリングを行い、参加の意向を把握。15日から条件決定日までに、その需要に応じてディスカウント率(前日終値からの割引率として2%、3%、4%の3種類ある)を決定し、売り出し価格を決める。売り出し価格は、条件決定日の前日の株価の終値にディスカウント率を掛けたものとなる。
【日本郵政自己株式取得の決議】
 日本郵政は11日、取締役会を開き、取得価額総額1000億円を上限とする自己株式取得を全員一致で決議した。取得の理由として「株主還元の強化と政府保有株式売却に係る株式需給への影響の緩和」を挙げている。
 取締役会では社外取締役から「株式需給への影響を緩和することを目的にしていることや、TosTNeT-3による取引であるため、取引条件の公正性が担保されていることなどから、当社の少数株主にとって不利益なものではない」などの意見が寄せられたという。
 日本郵政は同決議により、13日に東京証券取引所の自己株式立会外買付取引「TosTNeT-3」(前日終値を基に時間外取引で買い付ける)を通じて1株1373円で、7283万3200株を約1000億円で取得した。
 上場時に行った買い付けを含めて、政府売り出しで購入した日本郵政の自社株の保有率は11.08%となった。
【株価と企業価値】
 日本郵政の株価は、7月以降は1300円から1400円で推移している。上場時の売出価格は1400円だったが、今回はこれを下回りそうだ。財務省では「郵政株は資産株として安定した配当を求めるという性質の株で、3%後半の配当利回り。上場時に購入された人はすでに3回の配当を得ていることも考慮する必要があると思う」としている。
 今後、金融2社の株式の売却により、その分の配当も減ることになり純利益や企業価値にも影響することについて、財務省では「株式の売却で得た資金で自社株買いもある。投資をする際はリターンに見合ったものを買えば、価値は維持される。投資には見極めが必要。長中期的に企業価値向上にしっかり取り組んでいく。それについて日本郵政は投資家にしっかり説明していると思う」としている。
 長門正貢社長は9月8日に開かれた内外情勢調査会主催の懇談会の講演で「日本郵便は3兆円の売上でほぼ3兆円の経費。費用は3000億円の削減の余地があるのではないか。また、M&Aやアライアンスで売り上げが上がるのであれば、文化や価格が合うことが前提だが、聖域なく行いたい。低金利が続くと覚悟し、厳しい環境でもサステナブルに収益が出るようにしていきたい」と述べている。

■野田総務大臣の株売出へのコメント
 野田聖子総務大臣は12日の閣議後の記者会見で「今回の政府の日本郵政株の売り出しに当たっての感想と日本郵便へ成長戦略に期待することは」との記者の質問に、「政府の郵政株の売却は、完全民営化の一つのステップだと思う。日本郵便の郵便ネットワークを活用して、利用者目線で、利用者にとってハッピーな窓口を作っていくことが地道ではあるが、成長戦略になるのだと思う」と述べた。


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