「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6881・6882合併号

【主な記事】

柘植参院議員が質問(参院総務委)
[ユニバコスト]政府にも責務
負担の仕組み早期に確立を


■柘植参院議員 郵政事業が民営・分社化されて今年の10月で10年を迎え、改正郵政民営化法が施行されて5年が経とうとしている。旧民営化法では、郵便のユニバーサルサービスの提供義務のみが課されていたが、改正法では郵便ユニバーサルサービスに加えて、貯金及び保険のユニバーサルサービスの提供義務が課せられ、郵政事業に係る基本的な役務を確保することが法定化された。改正法は当時提出されていた郵政改革法案を政府が取り下げ、自民党、公明党、民主党(現民進党)の三党合意に基づく立法府の意思を反映した議員立法として成立した。
 改正法7条3項では、政府に対して、日本郵政及び日本郵便の責務の履行の確保が図られるよう必要な措置を講ずるという責務を課している。つまり、立法府としては郵便、貯金、保険のユニバーサルサービス提供義務は日本郵政、日本郵便だけではなく、政府に対しても相応な重要な責務を課していると言える。
 そこで、会社と政府が重責を担っている立場を考え、郵政事業のユニバーサルサービスの現状と課題について順次質問したい。
 総務省の情報通信審議会において、郵政事業のユニバーサルサービスの確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方が議論され、2015(平成27)年9月に総務大臣に答申された。答申におけるユニバーサルサービスの現状認識は、日本郵政と日本郵便の経営努力によりその水準が現在は確保されている。ユニバーサルサービスのコスト試算では、郵便役務は8割の赤字エリアの費用を2割の黒字エリアの利益で賄っている。また、郵便の窓口業務は4割の赤字エリアの費用を6割の黒字エリアの利益で賄っている。
 将来的に郵政事業を取り巻く環境が変化していく中で、将来にわたってこのユニバーサルサービスを確保するための方策の検討が必要だと言っている。現状を踏まえ、郵政事業のユニバーサルサービスを確保するため、短期的に検討すべき方策、中長期的に検討すべき方策を示しているが、具体的にどのようなものか。
 審議会の主旨と目的も伺いたい。ユニバーサルサービスは誰がどこに課した責務か。ここに係るコストはどこが負担すべきか。政府はユニバーサルサービスは日本郵政と日本郵便が黒字だから確保されているという答弁だが、それらを考え合わせると、このユニバーサルサービスを日本郵便が一義的に負担すべきかどうか、見解を伺いたい。
●高市早苗総務大臣 郵政事業のユニバーサルサービスは改正法により、日本郵政と日本郵便に郵便、貯金、保険のユニバーサルサービスの提供義務が課されている。係るコスト負担はまずは改正法7条2項に基づき、2社が収益力強化などの経営努力により対応していくことが基本となっている。
■柘植参院議員 ユニバーサルサービスは国が日本郵政と日本郵便に課した責務ということで、日本郵政と日本郵便が自ら手を挙げてやりたいと言ったわけではないということなのか、確認させていただきたい。
●高市総務大臣 改正法7条3項で、日本郵政と日本郵便のユニバーサルサービス提供の責務の確保が図られるよう政府が必要な措置を講じることも規定されている。
■柘植参院議員 短期的、中長期的に検討すべき方策とは具体的にどのようなものか。
●安藤英作政府参考人 短期的に検討すべき方策は日本郵政及び日本郵便の両社における経営効率化の推進、郵便局ネットワークの活用による収益の拡大等が示されている。不断に努力は続けられている。最近は郵便・物流ネットワークの再編がある。二種やはがきなどの料金改定などが予定されている。同時に、国についてはインセンティブとなるような方策を検討することが適当であるとされていて、税制措置などを要望させていただいている。中長期的に検討すべき方策は(中略)検討会を開催し、現在検討をしている。夏頃に一定の取りまとめを行いたいと考えている。
■柘植参院議員 コストの算定手法を伺いたい。日本は金融をユニバーサルサービスコストに加味している関係上、非常に難しいものがあることは重々承知している。コストがどれだけかかるかは国民に知っていただかないとなかなか理解が得られない観点から、算定方法を分かりやすく、私どもも分かるように説明いただきたい。(中略)ユニバコストのところで問題になるのは、算出したコストが会社の経営状況に非常に依拠していることも、大きな問題だと思っている。
 なぜなら、ユニバーサルサービスを安定的に提供するためには、そういった(会社の経営状況に依拠する)状況を除去しながら、計量的に示していかなければ毎年毎年不安定なコストが出てくることで日本郵便、日本郵政の経営に携わった方々も非常に心配をしながら経営をしなければならない状況も起きてくる。なかなか難しい。明確にコストの算出を考えていただきたい。
●安藤政府参考人 何分にも膨大な要素がある。諸外国の例を見ても確立された方法がない。時間をかけて少しずつ改善していきたい。現在、検討会では算定手法のモデルのリバイズ(改定)を行っている。郵便・物流ネットワークの再編など現在、日本郵便で取り組まれているが、モデルに取り込んで従来のモデルよりも合理的な方法になるように努力している。
■柘植参院議員 審議会でこの問題を議論してからもうかなり年月が経っており、長引けば長引くほど責務を課せられた日本郵便や日本郵政の経営の方々は大変でいろいろと心配する。一定のコストの形を示していただき、どこが(政府と会社が)どういう負担をしていくかの議論に入っていかなければいつまで経っても(方向が定まらず)、日本郵便がしっかり経営しているといっても作業がもし遅れてしまったならば、将来大きな禍根を残すことになる。1日も早く総務省として責任あるコストの明示を願いたい。
●安藤政府参考人 現在、検討会で算定方法のモデルの検証を行っている。夏頃には方向性を取りまとめたいと考えている。モデルを使った算定となると、日本郵便の方から多種多様で膨大なデータを提供していただかなければならない。データの中には、例えば郵便・物流ネットワークの再編の結果を反映したものや、6月に予定される二種郵便料金改定を反映したデータも盛り込みたい。そうなるとどうしても時間がかかってしまうことがある。それまでの間は既存のモデルに基づき、インプットしたデータは少し時間が経っているが、これを活用していろいろな検討に使っていきたい。
■柘植参院議員 日本郵便の経営をどう基盤強化を図るかが極めて大事だ。今、そのために、それに携わる方々は懸命な努力をして頑張っておる。日本郵便や日本郵政には同業他社にはない政府による上乗せ規制が掛かっていることも事実だ。日本郵政と日本郵便が行おうとする自由な経営を阻害している要因となっている。
 例えば、郵便法令に基づいてあまねく公平で安いものを提供するとあるが、具体的な例として、原則1日1回の配達、また個人、企業への宛て所配達、三種と四種といった政策的郵便物など郵政省時代に規制が掛かったものがそのまま残り、サービスもそのまま。このことは日本郵便の自由な経営の阻害要因であり、経営を圧迫していると言っても過言ではない。
 日本郵便には全国の郵便局を設置する難しい義務があり、かつ、それを現行水準で保てと法令上にある。こうした規制が日本郵便の経営を圧迫し、これからのユニバーサルサービスの提供に大きく影響がある。
●金子めぐみ政務官 郵便法に定める認可、届出といった制度的な課題を含め、省令で対応可能なものは3月末に必要な改正を行った。総務省として今後とも、日本郵便の経営状況などを注視していくとともに、郵便法令に関する見直しは日本郵便におけるユニバーサルサービスの提供状況、また日本郵便の意見を踏まえ、必要な検討を行っていく。
■柘植参院議員 郵便局ネットワークの維持については、新潟県が金子先生の地元、奈良県が高市先生の地元だが、郵便局の状態がどうなっているか。新潟県には郵便局が534局ある。局長1人と社員1人の2名局は49.6%を占める。言葉を換えれば、非常に過疎地が多い。それが実態だ。奈良県を見ると、241局のうち2名局は19.1%という比率。これからの大きな課題は過疎地の郵便局をどういう形で守っていくか。おそらく、一番経費の掛かるところで、今簡易局という問題が少し浮上している。
 簡易局と直営局の違いは、直営局は日本郵便が管理をしている会社で、簡易局は日本郵便と受委託をした郵便局。しかし、法律的には簡易局も同じようにユニバーサルサービス義務が課せられた局。ユニバーサルサービスを提供する郵便局になる。会社が経営効率のために直営局を廃止してコストの少し安い簡易局に移行した場合に、簡易局がこれから先、本当にユニバーサルサービスを提供し得る郵便局としていけるのかどうか、非常に危惧をする。
 地方創生や地域の中で郵便局は懸命に頑張っておる。自治体との業務提携、様々なビジネスを模索しながらやっている。
●高市総務大臣 郵便局は日本郵便株式会社法によって会社の営業所であって、郵便窓口業務、銀行窓口業務及び保険窓口業務を行うものとされているが、原則として直営の郵便局の設置となる。
 簡易郵便局法によって郵便、貯金、保険の三事業全てを行う場合には、委託による簡易局も法令上郵便局とみなされる。この法令に沿って、日本郵便が郵便局を設置し、ユニバーサルサービスの提供を行っていただくことが大切だ。
 自治体との連携や地方創生の中での役割、高齢の方々の暮らしを守る地域の大切なインフラとしての役割、様々な取組みが考えられるが、ビジネスとしての可能性についても、政府としてしっかり日本郵政グループとも議論をしながら検討を進めていきたい。
■柘植参院議員 大臣の在任中にユニバーサルサービスが安定的に提供できる枠組みを作っていただき、将来も安定的に持続可能な形になっていくよう、格段のご努力と指導を心から願う。


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