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第6880号

【主な記事】

三事業ユニバ維持で質疑
[柘植参院議員]コストの責務問う


 中盤を迎える今国会で、郵政事業に関する議論が激しくなっている。自民党の柘植芳文参院議員は「(三事業の)ユニバーサルサービス確保は、誰がどこに課した責務か。係るコストはどこが負担すべきか」と質し、菅家一郎衆院議員は「郵便局ネットワークを住民サービス向上にさらに活用すべき」と指摘した。高市早苗総務大臣は「改正郵政民営化法7条3項に、政府が必要な措置を講じることも規定されている」と答弁し、また「地域の暮らしサポート事業の担い手に」と郵便局の役割に期待を寄せた。

 自民党の柘植参院議員は4月11日の参院総務委員会で「『郵政事業のユニバーサルサービスの確保方策』の答申が2015(平成27)年9月に出された。ユニバーサルサービス確保は、誰がどこに課した責務か。係るコストはどこが負担すべきか。政府は日本郵政、日本郵便が黒字だから確保されているというとの答弁だが、そのことを考え合わせるとコストを日本郵便が一義的に負担すべきか」と質した。
 高市早苗総務大臣は「郵便に加え、貯金と保険のユニバーサルサービスの提供責務が日本郵政と日本郵便に課されたことから、将来にわたり提供責務の履行が図られるよう、必要な方策の検討を進めて短期的、中長期的に検討すべき方向性の答申を受けた。コスト負担は収益力の強化や経費削減など経営努力により対応していくことが基本」と答弁した。
 柘植参院議員は「ユニバーサルサービスは国が日本郵政と日本郵便に課した責務ということで、日本郵政と日本郵便が自ら手を挙げてやりたいと言ったわけではないということなのか、確認させていただきたい」とも質問した。
 高市総務大臣は「改正郵政民営化法7条3項で、日本郵政と日本郵便のユニバーサルサービス提供の責務の確保が図れるよう政府が必要な措置を講じることも規定されている。総務省検討会においても、日本郵便から示された課題を検討するとともに引き続き日本郵便の経営状況やユニバーサルサービスの提供状況を注視する」と答えた。
 民進党の藤末健三参院議員は4月11日の参院財政金融委員会で、「日本郵政と日本郵便には金融のユニバーサルサービス義務が課されている。全国津々浦々に郵便局ネットワークがあるが、今後、郵政グループがユニバーサルサービスを維持し、利用者利便を高めるためにフィンテック(金融とITの融合)のような事業にも乗り出していくと思う。ぜひ、金融2社の株式売却益を日本郵政グループの成長に投資すべきだ」と要望した。
 これに対し、大塚拓財務副大臣は「2014(平成26)年12月に『売却収入は企業価値と株式価値の維持向上のために活用する』方針が示されている。使途は一義的には日本郵政の経営判断になるが、政府としても株式を保有し、日本郵政の企業価値の最大化を図ってほしい。フィンテックなども含め、日本郵政グループの価値を高める投資をしてくれることを期待している」と応じた。
 公明党の稲津久衆院議員は4月4日の衆院総務委員会で「改正法を制定して以降、一番求められているのはユニバーサルサービスの提供。現場は相当苦労して事業運営されている。日本郵政グループの状況を見ると、郵便の取扱い量が減少。金融窓口業務は増えているため営業収益は若干増加しているが、人件費が非常にかかっているため、結局は増収減益になっている。かんぽ生命も新規契約は増加したが、保有契約の減少により減収減益。ゆうちょ銀行は貯金残高約180兆円の大きな変化はないが、低金利により資金利益が約1000億円程度減っている。これらの状況を踏まえ、(三事業の)ユニバーサルサービスをいかに継続し、提供していけるか真剣に考え、対応していかなければいけない」と訴えた。
 共産党の梅村さえこ衆院議員は同委員会で「日本郵便の働き方改革の認識を伺いたい」と質問。高市総務大臣は「日本郵便から2017(平成29)年度事業計画を提出いただいたが、人材が最も重要な経営資源とされていた。認可にあたり、将来に向けた経営基盤強化への投資を行うために、働き方改革を含む社会経済情勢を踏まえ、利用者利便の向上などに配意する要請を行った。環境づくりに期待したい」と語った。
 社民党の又市征治参院議員は3月9日の参院総務委員会で「日本郵政や日本郵便がユニバーサルサービスを維持するために企業努力を行うのは当然だが、国も条件整備に一層努力を払う必要がある。民営化の推進とユニバーサルサービスの維持をどう調和させるか」と問うた。
 高市総務大臣は「改正法7条2項に沿い、日本郵政と日本郵便が収益力の強化やコスト削減などの経営努力によりユニバーサルサービス提供の責務を果たすことが基本。その上で総務省と日本郵政グループが収益力の強化を進め、ユニバーサルサービスの安定的な提供を行っていくことが大事になる。2017(平成29)年度の与党税制大綱に『経営基盤の強化のために必要な措置の実現に向けた検討をするとともに、引き続き所要の検討を行う』と記していただいた」と答弁した。
 自民党の菅家一郎衆院議員は3月7日の衆院総務委員会で「人口減少、地域力が低下する対応の一環として、郵便局ネットワークを活用すべき。証明書交付事務は昨年11月末時点で170市区町村、599局が取り組んでいる。前向きな国の方針のもとで自治体と郵便局が連携を図る必要がある。マイナンバーカードなども活かしながら財政支援も行って、住民サービス向上のために活用すべきだ」と指摘した。
 高市総務大臣は「郵便局は公益性と地域性を発揮し、地域の生活インフラ機能を果たしている。維持強化を図るのは非常に重要。ワンストップ・カードプロジェクトアクションプログラムに郵便局への証明書交付端末の設置検討を盛り込んだ。現在、日本郵便に市区町村への設置スペースの無償提供や試行設置を検討いただいている。地域の暮らしサポート事業の担い手として郵便局の役割に期待している」と強調した。


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