「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6877号

【主な記事】

郵政OB 郵便局を支える
北海道由仁町 郵政事業協力会

 北海道空知管内の最南端にある由仁町(ゆにちょう)は、南北に夕張川が流れ、田園風景が美しい自然豊かな町だ。新千歳空港から約40分、札幌から約1時間だが、過疎化が進み高齢化率(65歳以上が占める割合)は38.7%、人口は5400人。郵政OBがオピニオンリーダーや郵便局を巻き込み、北海道で初めて「郵政事業協力会」のモデルを立ち上げた。これに続き仁木町(余市郡)でも発足している。民営化前に全国にあった郵便局利用者の会と同様のもので、郵便局への要望や意見を出すとともに、郵政事業への支援、協力、自治体との連携などを目的としている。まだ雪の残る由仁町を訪ねた。

 由仁町に郵政事業協力会が発足したのは平成27年11月。北海道・郵政退職者の会「郵雪会」の前会長・髙瀬弘さん(由仁町社会福祉協議会会長、元・北海道地方郵便局長会会長)が、地域と郵便局の密接な関係を強化するため、郵政退職者連盟(小宮和夫会長)の支援を得て立ち上げに奔走した。
 会長に竹田光雄さん(前・町長)、副会長に川股博さん(元・町議会議長)、西村明博さん(元・町土地改良区理事長)に就任してもらい、他に町のオピニオンリーダー、郵政OB、町内の三川郵便局(髙松英樹局長)、川端郵便局(山田善人局長)、由仁郵便局(髙瀬雅人局長)ら17人が会員となっている。
 由仁町は少子高齢化、過疎化が進む。髙瀬さんは「民営化で郵便・貯金・保険の各事業に様々あった利用者の会や預金者の会といったものがなくなり、一時は郵便局と地域の関係が非常に希薄となった。郵便局の支援で地域の人が楽しんだパークゴルフ大会なども中止され、郵便局と地域との接点が失われてしまった」と話す。
 そうした状況を改善、以前のように地域と郵便局が協力、地域に合ったサービスを提供してもらうために、様々な提言を行っていくことなどが協力会の大きな目的。「郵政事業は地域を支えており、地域の声を聞いてニーズに合ったサービスを拡大していくことが重要。そのため、郵政OBが中心となり郵便局を支援していくことにした」と語る。
 竹田会長も「郵便局は地域住民の拠り所。町長時代に町民の安心、健康、教育、福祉の充実に取り組んだが、そうしたことも全てに郵便局が関わっている。住民は何かあれば郵便局に相談に行く」と、郵便局への期待の大きさを強調する。
 「日常生活に郵便局はなくてはならないもの。郵便局がなくなれば、なお一層、過疎化が進む。郵便局に協力したいと会を立ち上げた。地域の郵便局を支えていきたい」と思いを述べる。
 5年くらい前に川端郵便局が廃止になるとの話が出た。もし郵便局が廃止されれば金融機関は川端地区から全てなくなる。町役場から15キロ以上も離れていて公共交通機関も不便だ。住民は危機感を持ってなんとかストップをかけたが、こうした事態は今後も懸念される。「学校や医療機関がないと人は住めないが、郵便局もその一つ」(竹田会長)。
 川股副会長は「若い人はATMでいいかもしれないが、高齢者にとっては窓口が絶対に必要だ。郵便局への信頼は大きい。局長が積極的に地域に出て、住民と触れ合えるような仕組みが必要。局長を支援するような会社の体制が充実すれば、住民と接する機会も多くなってくると思う。住民の中に飛び込んでいける郵便局であってほしい」と期待を口にする。
 郵雪会の佐々木守事務局長も「郵便局は特に過疎地では生活インフラ。民営化後は多くの協力団体も廃止になり、地域住民との接点も少なくなってきたように感じる。もう一度、地域の住民の意見を伺いながら、郵便局としてできることは何かを考えることも重要。郵雪会も応援していきたい」と、地域のニーズを掘り起こすことも役割の一つと意義を語る。
 髙松局長、髙瀬局長も「社員が減っており、地域を回ることも難しい面があるが、地域との触れ合いは郵便局にとって大切。積極的に要望を郵便局に届けてほしいし、地方があってこそ郵便局の全国ネットワーク。この全国ネットワークをいかに活かしていくかが課題」と述べる。
 協力会では自治体との連携も強化していく考えだ。平成17年4月からは川端郵便局で住民票などの交付事務を取り扱っているが、今年4月からは三川郵便局でも同様のサービスを行うとともに、由仁町の支所業務が始まっている。文書収受事務で、役場に提出しなければならない書類などを受け付け、役場に届けるサービスだ。
 松村諭町長は「交通機関も少ない集落で、高齢者が役場まで来て書類を出すことは大変。郵便局で受け付けてもらえるのは頭が下がる思い」と感謝する。そして「地域の郵便局を絶対になくさないでほしい。郵便局は水道などと同じように生活インフラ、不可欠なものだ。郵便局がなくなったら、住民は年金の受取りなど郵便から金融までのサービスが受けられなくなる。ぜひ、地域から郵便局をなくさないでほしいと強く願う」と強調する。
 郵便局への地域住民の信頼は大きい。そして、地域の郵便局を支える協力会の役割にも大きな期待が寄せられている。


>戻る

ページTOPへ