「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6875号

【主な記事】

現場の率直な声を聞く
支社は独自性の発揮も
渡辺 浩関東支社長


 郵便事業のエキスパートとして40年にわたり郵便局で事業に携わってきた関東支社の渡辺浩支社長は「副本部長、部長を県担当として配置し、地区統括局長と連携を密にし、現場の率直な声を聞く」ことに力を入れている。また、日本郵便の経営は厳しいが「支社の独自性を発揮、自分たちで良いと思ったことに挑戦を」と呼びかけ、「エリマネ局のこれまで築いた地域との太いパイプを活かしていただくことが、郵便局が生き残るためにも必要不可欠であり、『地域貢献活動』は最も重要で、支社も積極的に関わっていく」と強調する。
(インタビュー=永冨雅文)

■関東支社管内は都市部と同時に過疎地域も抱える全国を象徴するような地域性があります。事業運営では苦労も多いと思います。
 関東支社の副本部長、部長を県担当として配置しました。地区統括局長との連携を密に、要望など支社に直接言いにくいことも率直に話してもらうようにしています。さらに、共通と金融関係は役職者の中から部会担当を指定しました。関東管内には198部会ありますが、月1回以上必ず訪問するようにしています。単マネ局は185局ですが、これも郵便物流関係役職者を局担当として配置、郵便物流に関する要望を同様に聞くようにしています。
 何でもよいので御用聞きに徹するよう指示し、現場からは「支社との距離が近くなって良かった」という声が上がっています。逆に支社の社員からは「現場を知らなかった」という声がたくさん出ています。
 また、年繁期には支援が必要になります。例えば今年はインフルエンザにかかった人が一つの局で50人ということもありましたが、郵便物流と金融、共通との区別なく応援に出てもらいました。郵便事業に初めて触れたという社員もおり勉強になったと言っていました。

■県担当制っていうのは関東では初めてですか。
 郵便物流に関してはこれまでも行っていましたが、今年度から共通と金融関係で部会までの担当制は初めてです。機マネも始まり、旧集配センターの統合という課題もありました。やはり現場の意見を聞いていかないとなかなか進まないということで、大変役に立ちました。

■機マネは順調にいっていますか。
 単マネ局の窓口は地区連絡会の一員ということで、地区統括局長や部会長との連携も図れています。後は文化の違いですが、単マネ局の目標は大きく、渉外社員はどんどん契約をとってきて、専門に事務処理する内務社員がいます。結果、一人完結型になっていません。エリマネ局から言わせると、窓口でお客さまが並んでいるのに、なぜ後ろで事務をしている人がいるのだ、理解できないという話が最初はありました。
 単マネ局は貯金・保険はできるが郵便はできないなど、専担で仕事を行う部分がありましたが、今では大きく見直され、改善しています。

■事業運営に当たって最も力を入れられていることは。
 「できないことは絶対やらせるな」と言っています。分かりやすく、できることを現場に伝えることです。エリマネ局ですと月1回の営業推進会議の後に地区連絡会会議がありますが、必ず支社の各部から管理社員を参加させ、きっちりと伝えるようにしています。質疑もありますので、意見は持ち帰るようにしています。
 都市部と過疎地では当然、求めるものは違い、地域に合ったやり方があります。2名局、3名局も相当数あります。投信だけで約90品目、がん保険や自動車保険もあり、多くの商品を2名局で対応しろと言っても上手くいきません。ましてコンプラの関係での説明責任があるので難しいですね。
 ところが一例ですが、がん保険は全局で扱っているものの第1四半期で1件も取れていないところがありました。やるとかやらない以前の問題で、お客さまに声をかけていないだけではないかと調べたら、都市部ほど多いのです。逆に2名局、3名局は局周活動で、局長や社員が必ず1か月に1件は取っていました。
 営業推進会議が毎月ありますが「信じられない。第1四半期で1件も取っていないというのはおかしい。これは許されませんよ」と言いましたが、第2四半期が終わっても1件しか取れていません。都市部が課題という面もあります。危機感もあると思いますが、過疎地の方が定期的にマイタウン活動をしているのです。都市部だから忙しいと捨ててしまうようなことは許されません。

■都市部の方が営業しやすい雰囲気はありますが。
 結局、忙しいという名目で声をかけていないのです。私も初めて気が付いたのですが、郵便はゆうパックもゆうメールも万遍なく目標があってやっていくのですが、金融は全部が評価点です。評価点として、例えば貯金純増なら何点、投信なら何点ということで、高い配点と低い配点の項目に約10倍の点数差があるのでどうしても低いものは後回しにしてしまうのです。個々の判断で高い評価点の貯金や保険などを狙った方がいいとなってしまうのです。がん保険も自動車保険も万遍なくやろうよと、この1年は訴えてきました。

■点数的な評価方法というのは課題がありませんか。
 こだわり過ぎるから問題です。ひと昔前だと貯金と保険だけで走るという方式でした。がん、自動車、投信などはなかったので、それでいいのですが、今のように17項目もあると、やはり評価点が高い方へ行きます。
 総合評価がありますから、点数の高いものを取りたいとなります。確かに金融は手数料収入ですから、やはり保険やゆうちょ、投信などから手を出します。そこが金融の難しいところです。

■40数年、郵便に携われてきたと聞いています。郵便収入は目標達成できそうですか。
 たいへん厳しいです。推進は前年比で2日遅れぐらいです。第2四半期までは順調でしたが第3四半期から減収減益になりました。郵便物数の減少が止まらないというのが、いつもの年よりも大きいです。DMやゆうメールなどの広告的なものは増えていますが、本社では一般郵便は2~3%、あるいはそれ以上の減少という判断です。

■ゆうパック、ゆうメールは増えていますね。
 ヤマト運輸の配達しきれないという話もあって、あちらこちらの企業から話が入ってきています。ただ、値下げや利益が出ないことはやるべきではないということで、正当な単価かどうかが重要です。きちんと収益を出すことです。
 それと8割近い人件費ですが、コストコントロールはそう簡単にはいきません。あまりにも強くやり過ぎると社員の感情に影響します。生産性を上げ能率アップをしようという言い方をしています。会社である以上は生産性向上の取組みはいつまでも続くものです。先にコストコントロールありきではなく、あくまで生産性を上げることです。

■郵便だけでの収益確保は難しいですか。
 難しいですね。民営化委員会や総務省でも議論されていますが、ユニバーサルサービス・コストということを更に考えてほしいです。例えば葉書や封書の値段が、現状で正しいかどうかということもありますし、通信教育や第3種、第4種などがあります。民間会社になりましたが、ユニバーサルサービス・コストを考えていかないと利益率の確保は難しいです。人件費は必ず上がっていきます。

■郵政グループの中核として日本郵便の経営が注目されます。
 みまもりサービスも始まりますが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、さらには地方自治体との関係が郵便にとっては切り離せないものです。私が郵政省に入った40年前の頃は、郵便は儲からなくていい、貯金・保険で儲かるのだからとよく言われましたが、会社が別になり上場となると、株主様がいますので手数料だけをどんどん払うわけにもいきません。販売手数料も低下する可能性があります。上場している以上は、自分のところの儲けをなくして日本郵便に販売手数料を払うということはありえない話です。
 郵便が伸び悩む中、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が手数料を下げざるを得ないことになると、ここ数年は厳しい時代になるのではないでしょうか。現在、経営計画を作っていますが、郵便は利益率が厳しく、郵便物の減少になかなか歯止めがかからない、そういう中で日本郵便が単体でどうやって利益を出していくのかが課題です。

■みまもりサービスも始まりますが、自治体との連携も重要になります。
 民営化前はひまわりサービスや道路損傷の情報提供など様々なことを行っていました。分社化の影響でしょうか、ほとんど取り止めになりましたが、再び県や市町村と包括協定を結び、できることからどんどん進めていこうという方針になりました。
 特に地区統括局長や部会長は、市町村に驚くような強いパイプがあります。分社化になってからは、単マネ局は市町村とのパイプが少なくなっており、郵便のつながり以外はそれ程ありません。今は地区統括局長と単マネ局の幹事局長、支社も一緒になってどんどん自治体に行っています。4月ぐらいには関東5県とは全て締結できる見通しです。市町村ともどんどん進んでいます。

■日本郵便とゆうちょ銀行、かんぽ生命との連携については。
 毎週1回、エリアパートナー会議があり、3社が集まって打合せをしています。推進状況や情報を交換しながら密接に連携しています。やはり3社が一体となって進んでいくことが大切です。
 本社が決めないといけない方向性は当然あると思いますが、そのまま郵便局へ流したらダメだと思います。支社は現場に分かりやすく、不安のないような形で伝え、現場が明るく元気に活動できるようにすることです。私たちの仕事は、ユニバーサルサービスの典型です。不安の起きないような伝え方をして、「これだけはやらないと絶対にダメだよね」という言い方をすることです。

■全国それぞれ地域性は同じではありません。支社が独自に判断して、お客さまに最もふさわしいサービスを提供することも必要ではないでしょうか。
 私のように現場から入ってきて思うのは、もっと権限移譲が必要ではないかと感じます。本社のある方は、権限移譲はみんなが勝ち取っていくものだと言っていますが、その通りです。権限移譲をと言っても、では何を移譲するのかとの話になります。
 私たちも本社の目をあまり気にせず、良いと思ったことは支社の独自性を発揮する時代ではないかと思います。言われたことだけを行っているだけならば支社などいりません。これからは支社によって独自性が出ていいと思います。

■本社に聞くという体質が強いのでしょうか。
 聞いてはダメなんです。聞くということは1つの責任回避だと思います。関東では組合が選んだ女性渉外社員やセンターリーダーとの意見交換などを四半期に1回ぐらい行っていますが、現場の生の声がたくさん出てきます。
 そうするとやはり「本社に伝えます」「本社に確認をとります」と話すことがありますが、良いことはやればいいのだと思います。それが活性化につながります。やってみてまずかったら見直せばいいし、自分たちで良いと思ったらやろうという方向を基本としています。

■郵便局長や社員の皆さんは、地域貢献などに積極的に取り組んでいます。
 郵便局の地域貢献などは全面的に応援し、支社も積極的に関わっていくことにしています。郵便局が生き残っていくためにも地域貢献は最も重要なことです。貯金、保険など他の民間会社も行っていますが、特にエリマネ局は土曜日、日曜日でも頑張ってもらっています。地域施策は単マネ局が苦手な部分でしたが、郵便局会社と郵便事業会社が統合になり、たいへん良かったと思うのはこうした部分です。
 私は単マネ局しか所属してきませんでしたが、地区会や地区連絡会が地域と太いパイプを持っています。地域貢献への支援は、部長も各県担当に置いていますので大いに活用してほしいと思います。地域にとってやはり郵便局は大事だという方向になれば、事業が大変な時も絶対に乗り越えられると思います。


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