「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6872号

【主な記事】

高まる郵便局の役割
改正過疎法成立の見込み
20市町村を追加指定

 自民党は2月14日、過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)を今国会で改正する方針を決めた。昨年9月に公表された国勢調査の結果を受けて見直すもので、改正案が成立すると過疎地に全国20市町村が追加される。過疎地が拡がり、買物支援や安否確認など持続性ある対策が急務となっている。政府の「集落ネットワーク圏」の形成支援事業の資料には、基幹集落の中心部分に郵便局舎が描かれており、守り手としてのネットワークを示唆。「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」では過疎地の行政サービス継続が課題と記され、郵便局の役割にも期待が高まっている。

 過疎法改正の運びになったのは、昨年10月に公表された2015(平成27)年度の国勢調査の結果を受け、人口減少などの最新データを法律に反映させる必要性が浮上したため。
 野党との協議を進め、今年度中に成立、4月1日の施行を目指す。改正により、過疎対策事業債(過疎地に指定された市町村のみ発行できる地方債)の対象に市町村立専修学校も加わる。
 新たに過疎地に指定されることになったのは青森県板柳町、岩手県陸前高田市と野田村、宮城県山元町、秋田県にかほ市と井川町、福島県石川町と浪江町、茨城県利根町、栃木県塩谷町、千葉県東庄町、神奈川県真鶴町、石川県宝達志水町、静岡県下田市、京都府南山城町、兵庫県神河町、奈良県御所市と三宅町、明日香村の20市町村。
 現在、全国1718市町村のうち、過疎地に指定されているのは797市町村で46・4%と半分近くを占める。過疎地面積は国土全体の58・7%と半分を上回っているが、日本の人口1億2709万人のうち1045万人と8・2%。過疎地が拡がる一方、人口減少は加速し、高齢者を中心に人の点在が一層進むことが予想される。
  総務省は個々の集落で集落機能を維持することが困難な場合、基幹集落を中心とする複数集落で「集落ネットワーク圏」を形成し、将来も地域住民が暮らし続けられるよう「過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業」を2016(平成28)年度当初と補正予算約6億円を確保し、17年度予算案で約4億円を要求している。
 「過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業」は、商店や病院など集落同士が連携し、ネットワークの形で周辺集落と共に一つの圏域で日常生活機能を維持しようとするもので、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」と連動した施策。住民自ら組織を作り、自主的な取組みを支援する。ネットワーク圏や過疎の市町村のソフトな取組みを応援するが、資料の「基幹集落」との文字の下には郵便局舎のイラストが描かれている。
 また、総務省は地方創生と地域経済の好循環確立の新規予算として「地域の暮らしサポート実証事業」に1億7000万円を計上している。
 人口減少、高齢化によって生活機能が低下した地域住民の暮らしを守るために、地域の高齢者に対する「買い物支援」など暮らしを支えるサービスのビジネス化が可能か否かをJ―STAT(統計と地図を組み合わせたシステム)で分析。サービスの担い手の役割分担や費用負担、適正な利用者負担の在り方など事業の枠組みを関係者間で構築し、暮らしの下支えを徹底的に行うビジネスに取組む自治体を支援する事業となる。
 この事業の資料にもサービスの担い手として、郵便局舎の小さなイラストが描かれ、「郵便局など」と図に記されている。
 総務省は「過疎地域の郵便局は存在することが一番の過疎対策。郵便局が自治体と連携して取り組んでいただければ過疎法に記されている施策を使えると思う」と語る。
 地方創生施策に関して、高市早苗総務大臣は2月10日の記者会見で、記者団の「地域おこし協力隊が4000人を突破し、インフラのような形で全国に協力隊が存在する形になってきたが、どう活用していくべきか」との質問に、「現役隊員の約4割が女性。20~30代の隊員が約7割を占めている。若い方々の感性で地域を元気にしていただいている。多くの隊員が定住に際した起業を考えているため、任期終了後に地域で起業できるプロセスをしっかり構築することが必要だと思う。今年度は新たに『協力隊クラウドファンディング官民連携事業』や『協力隊ビジネスアワード』も実施する。事業化研修の充実や強化に取り組んでいきたい」と意欲を示した。
 通信文化新報の「地域おこし協力隊と地域の暮らしサポート実証事業との関連性は」には、「地域の暮らしサポート事業は、協力隊に特化したものというより、高齢者の方々の買い物支援なども含め、地域社会で生じる様々な困りごとを応援する地域社会のネットワークを活用していく事業」と強調した。
 事務局からは「地域の暮らしサポート実証事業は、ヒトと情報の大きな流れを地域に生み出す目的の『チャレンジふるさとワーク』と題する新規施策の一つとして創設した。地域おこし協力隊との関係は現段階で個別に想定しているわけではないが、サポート実証事業は見守りや防犯など地域のニーズに応じた事業を各地域でどのように解決するかとの観点から生まれた。当然、協力隊員の方々が携わることは想定できる」と説明があった。
 過疎法各党実務者協議会で民進党の実務責任者を務める奥野総一郎衆院議員は「過疎地で自治体に代わる機能の必要性は今後、急速に増す。人口減少で限界集落が増える中、地域をサポートする郵便局の役割はますます高まるだろう。地域の〝安心の拠点〟の役割をさらに強化してほしい」と指摘する。
 自民党の瀬戸隆一衆院議員は「過疎地で一番困るのは買物難民問題とお年寄りの安否対策。日本郵政グループがみまもりサービスを本格化するのは日本の大きな課題を解決する道筋。ただし、ビジネスだから採算性も真剣に考えた上でスタートしてほしい。都会在住の子世代は田舎に住む親世代のために支払いをしてよい、むしろ支払いたいと思っているのではないか。そうした客層をつかんでいくことが重要」と強調する。
 自民党の徳茂雅之参院議員は「郵便局の役割が増すのは間違いないが、郵便局だけで地域を支えるのは難しい面もある。地域に根差して問題点や特性など知り尽くす郵便局長が、地域で頑張る企業と自治体を郵便局も参画する形で〝つなぐ〟役目を果たしていただきたい。地域活性化に向けて、郵便局が発信する様々なアイデアが待たれている」と期待を寄せた。
 昨年3月にまとめられた「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」では、安心した暮らしを営める持続可能な地域社会の形成に向けて、過疎地の行政サービスをどのように継続していくかを重要な課題と指摘している。半官半民の役割が求められており、現在そのための地方版独立行政法人の設立も検討されている。




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