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第6869号

【主な記事】

金融2社は同時にせず
長門日本郵政社長 株の2次売却で


 日本郵政の長門正貢社長は1月30日の定例会見で、16日に財務省から発表された政府保有の日本郵政株2次売却について「売却には同意しているが、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式は同時には売ることはない。グループの一体感を守れるかも判断材料の一つ」と述べた。このほか、ゆうちょ銀行の新規業務、かんぽ生命保険の基幹系システムの稼働、また、ダボス会議への出席、安倍総理のアジア・オセアニア訪問の同行などについて語った。

【日本郵政株2次売却】
 財務省は日本郵政株の2次売却の主幹事証券会社の選定準備を進めており、7月には準備が整う。長門社長は「株式売却の事務的準備は期間を要するために進められており、売却時期は市場の動向を見て行うと理解している。(東日本大震災の)復興財源の確保のための株売却に対しては異存はない」と述べた。
 そのうえで、一昨年11月の上場時には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式も同時に売り、その資金で自社株買いをしたが、今回の2次売却と同時には売らず、主幹事証券会社の選定準備もまだ行わないことを明らかにした。
 「金融2社の株式の5割をなるべく早く売り、経営の自由度を高めたいと思っているが、それには金融2社の業況がどうか、ユニバーサルサービスを引き続きやっていけるか、グループとしての一体感を守り続けられるか、株価、市場の株式の需給はどうなっているか、総合的に判断したい。売却はタイミングを待ちたい」と、金融2社の株式売却は政府の2次売却とは連動させない方針を明らかにした。
【ゆうちょ銀行の新規業務】
 ゆうちょ銀行が、2012年9月3日に総務省と金融庁に対して「個人向け貸付業務(住宅ローン・カードローン・自動車や教育などの目的別ローン)」「住宅ローンに伴う長期火災保険を業務とするための損害保険募集業務」「法人等向け貸付業務」の3本を認可申請して金融庁で止まったままになっている。
 この新規業務について、長門社長は「ゆうちょ銀行でどれを優先させるか検討しており、決まったら日本郵政に上げてもらい、グループ全体で議論することになっている。現在、オフィシャルには上がっておらず、最終調整の段階にはない。4年前に捉われず、日本郵政グループとゆうちょ銀行にとって、ベストの新規業務は何かを厳しく見て、決定したい」と考えを述べた。
 申請中の各サービスについて「企業の貸出業務については、中堅企業はリスクをどのように読むか、バランスシートだけでは判断できない。経営者に話を聞くことなども必要で、貸付けに当たり難しいこともあると思う。大企業の融資ならゆうちょ銀行にも専門の審査部があり、貸出業務の経験はないが審査はできる。住宅ローンはスルガ銀行で代理店の経験があり、ニーズは知っている。住宅ローン、カードローンともに業務について内容が分かっていないわけではない」と新規業務についての見方を示した。
【日本郵便年末年始の業務の総括】
 今年の年賀の販売は28億8000万枚で前年比96.6%。元旦の年賀状の配達枚数は前年比94.4%の16億4400万枚。ゆうパックの昨年11月20日から12月30日の間の配達個数は前年比2%増の8800万個となった。
 長門社長は「ゆうパックは遅れないで配達できた。年賀はがきの販売については、今年も減少傾向の縮減には至らなかった」と総括した。
【ダボス会議と安倍総理との同行】
 長門社長は1月14日、安倍総理に同行しオーストラリアを訪問。また世界のトップクラスの経営者や政治家が集まり、世界的な課題について議論する世界経済フォーラム「ダボス会議」(1月17日~20日)にも出席した。
 オーストラリアでの安倍総理やターンブル首相のスピーチについて「両首相からはグローバリゼーションの方向感を絶やさずにやっていきたいという強い意欲を感じた」と感想を述べた。
 保護主義に傾くアメリカについては「長期的には懸念がいっぱいで、かつてのアメリカは日米繊維交渉に始まり、最終的には日本が自動車の自主規制まで行うことになったが、アメリカの繊維も鉄も車も競争力を失い弱くなったうえに、インフレが起きた。今回も中期的にはアジア通貨危機のような副作用が心配だ。ギリシャの国債の満期、イタリアの銀行にも公的資金投入ができていない。フランスとドイツの選挙もあり、ヨーロッパは脆弱。アメリカのアンチ・グローバリゼーションの跳ね返り方によっては、短期的にリスクがある」とした。
 ダボス会議については「中国の習近平主席がオープニングのキースピーカーを務め、多くの人を集めた。今年は習近平さんとトランプ大統領に尽きるという印象を持った。トランプ大統領の政策の方向は厳しく、荒れる年になり兼ねないので、注意して見ていきたい」と語った。

 かんぽ生命
 基幹系システム稼働
 かんぽ生命保険の基幹系システムが1月4日から稼働した。約3200万件の保険契約を管理する業務の中核となるシステムで、2010年に基本設計を始めてから約6年かけ、ようやく完成した。業務効率の向上やビッグデータの処理も高速ででき、新製品の開発などにも対応できる。
 約1200億円を投じた一方で、前システムと比べて保守メンテナンス費用は8年間で320億円、ソフトウエアの開発コストは5年間で180億円削減される。
 健康増進サービスでも活用しているIBMのワトソンとのインターフェースもあり、かんぽ生命では、これを保険の支払いに活用する。またフィンテックなどの新たなニーズにも対応できる。業務面では、夜間のバッチ処理の時間が3分の1に短縮、毎日作成する営業日報もかかる時間が1時間から5分になった。
 長門社長は記者会見で「システム自体のコストダウンが図られ、筋肉質の経営ができる。このシステムをビジネスモデルに乗せて有効活用していきたい」と抱負を語っている。


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