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第6849・6850合併号

【主な記事】

医薬品の宅配サービス拡大
日本郵便 地域医療を支援

 日本郵便は、チルドゆうパックを利用した処方医薬品の宅配サービスを7月中旬から始めている。札幌市で1薬局からスタートし、8月には同市3薬局、名古屋市1薬局の4薬局に拡大。来年1月以降には大都市圏での展開も予定しており、10月には衛生用品の注文を受け付け、ゆうパックでの宅配も開始する。新たな地域医療への貢献として期待も高く、日本郵便物販ビジネス部の井上雅史専門役は「今後注目されていく取り組み。薬局としっかり連携しながら展開していきたい」としている。

 宅配サービスは調剤薬局や医薬品の卸事業を展開するメディカルシステムネットワーク(田尻稲雄社長、北海道札幌市)と連携し、高齢者施設や在宅で医療を受ける患者向けに、郵便局が調剤薬局の処方医薬品を集荷し、高齢者施設や自宅に届けるもの。
 医師が往診し、医薬品の処方箋を出した後は、薬剤師が対面で服薬指導を行っているが、輸液など重い医薬品を運ぶのは薬剤師の負担になっている。ゆうパックの利用により、薬剤師が機動的に動けるよう、負担軽減を図っている。
 7月中旬に札幌市で1薬局からスタートしたが、8月には同市で3薬局に拡大。同社が顧客基盤を持つ名古屋市でも1薬局が取り扱いを開始した。
 「名古屋市は高齢者施設の数も多く、同社のオペレーションの中間機能やコミュニケーションがしっかりしている」(井上専門役)という。
 今後は取り扱いの検証を進めながら、来年1月以降と4月以降にエリアを複数に拡げ、段階的に全国展開を目指す。拡大エリアは東京・大阪を中心に、関東圏や大都市圏を検討している。
 品質管理も「大事に確認しながら取り組んでいる」。輸液は0度から30度という温度管理が求められるため、現在はチルドゆうパックを利用しているが、通常のゆうパックへの切り替えも検討。
 名古屋という土地柄に加え、今年は猛暑であることから、メディカルシステムネットワークがサーモスタットのようなセンサーを使い、ゆうパックで送ったときの温度の幅を測定。また、冬の北海道はマイナス気温になるため、厚生労働省とも温度データを共有しながら取り組みを進める。
 同社は「日本全国、最後まで同じサービスで送ることができる」とゆうパックの品質を高く評価している。日本郵便には他の複数の調剤薬局からサービスについての問い合わせがあり、条件が合えば新たな提携を検討するという。
 スタート直後ということもあり、月間の取扱数は約20個だが、取扱拡大も見込まれている。同社の子会社であるファーマホールディングス直営の調剤薬局(なの花薬局)が約400店舗あるほか、仕入れや物流面で協力関係にある薬局が約1400店舗あり、在宅患者向けの処方箋医薬品を月間で約1万2000件扱っている。他の大手調剤薬局の販売分も含めると数万件規模にのぼるという。
 都市部での潜在需要も高い。厚生労働省によると、2010年から2025年までの15年間で、75歳以上の高齢者の増加数が上位の都市部6都府県(東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、千葉県、愛知県)では、その合計が約373万4000人にのぼり、この間の全国の増加数約759万2000人の半分程度を占めている。
 1995年から2010年までの15年間の増加数が約253万7000人であったことと比べると、約1.5倍のスピードで増加している。
 増加数が一番多いのは東京都で、2010年123.4万人から2025年197万7000人へと74万3000人増加する。増加率が一番高いのは埼玉県で、2010年58万9000人から2025年117万7000人へと倍増する。
 「市場規模は拡大すると思うが、大きな市場が出来上がる前に、地域の高齢化サービスの足掛かりのところにきちんと入っていく。在宅患者と向き合いながらサービスを展開してきたと後に評価されるためには、今から取り組む必要がある」。
 10月には、日本郵便のグループ子会社の通販機能を活用し、薬剤師による服薬指導の際に、衛生用品の注文を受け付け、ゆうパックでの宅配を開始する予定。
 「紙おむつからスタートさせ、患者の話も聞きながら、徐々にラインナップを増やしていく」。紙おむつは使い方の説明が必要であるため、患者が複数名入所している高齢者施設に薬剤師を招き、メーカーによる説明会を開くなど、丁寧な対応で取り組んでいる。
 井上専門役は「今後注目される社会的貢献、総合生活支援サービスの一つになっていく。在宅の患者がどんなものを求めているのか、薬剤師はどんなことで苦労しているのかなど、どういった助けができるかを考えている。薬剤師は地域医療のキーになる。薬局としっかり連携しながら展開していきたい」としている。
 また、日本郵便は昨年2月から、医薬品等の通販事業を展開している。
  ㈱ココカラファイン(塚本厚志社長、神奈川県横浜市)と連携し、日本郵便の通販サイト「郵便局のネットショップ」に、ドラッグストア専用ページを開設。取扱商品は、指定第2類・第2類・第3類医薬品、医薬部外品、健康食品、化粧品、日用品など約7000アイテム。
 利用者の症状に合った薬を症状別に選びやすいコンテンツで、体質や生活に合った薬であるかを確認できる問診チェック機能付き。土・日・祝日も薬剤師と連絡をとることが可能で、個別の相談に応対する。
 決済手段は、パソコンやスマートフォンを使ってゆうちょ銀行の総合口座から直接決済できる「ゆうちょ即時振替サービス」のほか、クレジットカード、コンビニ前払い、Pay-easy、代引き。注文の商品はゆうパックで配達される。
 日本郵便では「今後もお客さまの生活支援を追及し続け、受け取り場所、取扱商品を拡大していきたい」としている。


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