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第6801号

【主な記事】

[総務省懇談会]電子私書箱など検討
日本郵便も実証事業に参画

 来年1月から交付されるマイナンバー(個人番号カード)及び公的個人認証サービスの利活用拡大に向けて、総務省は「個人番号カード・公的個人認証サービス等の在り方に関する懇談会」(須藤修座長:以下、懇談会)を立ち上げ、9月29日に初会合を開催した。懇談会はマイナンバーカードと公的個人認証サービスの利活用を図り、国民にとって安全で使いやすいサービスを明確化するための検討を行い、昨年度に日本郵便が実証事業に参画した電子私書箱にはどのような機能が必要かも含めて議論する。各種証明書類を一括伝送する私書箱は自治体だけではなく、多くの民間企業からニーズが高く、日本郵便が事業主体になれば、超高齢化社会に向けて郵便局の新たなビジネス創出も期待できる。懇談会は年内にも中間報告をまとめ、来夏頃をめどに一定のとりまとめを目指していく。

 6月30日に閣議決定された政府の「経済財政運営と改革の基本方針」と「日本再興戦略改訂2015」ではマイナンバーカードの利活用について、個人情報保護や金融犯罪の防止が確保されることを前提に電子私書箱機能を活用した官民の証明書類の提出や引越、死亡などに係るワンストップサービスの検討も盛り込まれた。
 総務省の懇談会は、公的個人認証サービスのCATV放送、郵便、通信など各民間分野への利活用推進策のほか、行政その他官民の幅広い分野での公的個人認証サービスの利活用を検討。「個人番号カード等の利用検討ワーキンググループ(WG)」と「公的個人認証サービス等を活用したICT利用WG」という二つのWGを設置し、公的個人認証WGの方で電子私書箱の利活用も含めて検討する。初会合には高市早苗総務大臣や二之湯智総務副大臣も出席し、8人の委員と共に内閣府、法務省、厚生労働省、経済産業省が参画した。
 懇談会では、マイナンバーカードを国民に使いやすくメリットのあるカードとするため、実証事業を通じてサービス提供事業者と関係者で作業内容とコストの明確化を目指していく。検討内容として挙げられているのは①戸籍やイベントチケットなどコンビニエンスストアでキオスク端末で交付できるサービス②クレジットカードとの連携③マイナンバーカードに対応するアクセス手段の多様化④電子調達と電子私書箱の活用⑤スマートフォンへの利用者証明用電子証明書の格納⑥地方自治体の利活用方策―の6点となっている。
2014(平成26)年、日本郵便が参画した「電子私書箱と個人番号カードを活用した引越ワンストップサービス」は、ガス会社や水道会社、金融機関など複数個所への連絡が手間がかかり、後回しになりがちなことから一括して電子私書箱に連絡し、登録された行政や企業に一斉に通知される仕組みが検討された。
 保険会社などは契約者宛てに随時、引っ越した際の通知をする文書を送っているが、顧客の移転先が分からず、郵送物が戻ってくるケースも多いという。電子私書箱が実現すれば、それらの手間やコストが削減できる。住所変更通知のワンストップサービスは、年末の確定申告や就職企業に学校などの卒業証明書を送付する場合などにも活用できる。
 懇談会では、本人以外にも第三者の法人が作成した書類も私書箱機能に盛り込むことを検討するが、第三者から来た書類が権限ある人からのものかを確認する“属性認証”を私書箱機能の一つとして考えられないかも話し合う。
 総務省は昨年度、日本郵便との引っ越し一括通知以外にも、少子高齢化と新産業創出を目的に、鳥取県南部町とケーブルテレビとICカードを活用した地域住民向けの見守りサービス、徳島県美波町と防災対策システム、群馬県前橋市と母子健康情報管理などの実証事業を行った。
 例えば、こうした仕組みと日本郵政グループがIBM社、Apple社と実証試験を行う高齢者向けサービスのタブレットと連動すれば、外出先も含めて高齢者や子どもの見守りが実現できることになり、郵便局の新たなビジネス創出につながる可能性がある。また、日本郵便が私書箱の事業主体となると高齢化社会に向けて日本郵政グループの企業価値を高めることにもつながるものと見られる。
 総務省は「昨年度の実証事業では、クレジット決済にマイナンバーカードを連動する技術的手法なども検証した。実用化に向けた課題はあるが、良い形での具体化を目指していきたい」と話している。


 


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