「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6788・6789合併号

【主な記事】

“試食販売”で中元商戦
横浜東部西神奈川部会 都市部の物販に活路

 中元商戦で苦戦しがちな都市部の郵便局で、収益向上に向けた抜本策として「試食販売」が始まった。デパート地下街やスーパーマーケットでは当たり前の光景だが、人員不足などを背景に郵便局ではほとんど実施されなかった試食販売を横浜市東部地区連絡会の横浜西神奈川部会(串田和子部会長/横浜ガーデン山)全10局が、郵便・物販の低迷を打開しようと共同でスタートした。部会内3人の新入社員を“試食隊員”として育成し、各局を1週間ずつ回りながら局入口で5社商品の試食サービスを展開。顧客を呼び込む戦略として事前通知によるライフプラン相談会も併せて行い、地域住民から好評を博している。7月10日までに4局で実施されたが、昨年までと比べて2倍以上の顧客が中元商品を購入するなど成果は上々、勢いを付けて秋口には米の試食販売も計画中だ。

 横浜市は、ファッショナブルで風情ある街並みが観光スポットとして若者を中心に人気を集めるだけでなく、大中小企業の本社も多く、人出で賑わう都市部。そうした中で横浜市東部連絡会(串田明彦統括局長/横浜池辺)は貯金と保険では南関東支社で常時トップクラスを維持してきた。しかし、都市部共通の問題として、駅周辺の繁華街にはデパートや洒落た店が乱立することから、頒布会を中心とするカタログ物販の売り上げは最下位に近く、連絡会の悩みの種になっていた。
 郵便・物販担当の加藤豊副統括局長(横浜六角橋)が、こうした状況を打開し、目標に対する実績を示す「推進率」においても反転攻勢していこうと串田部会長と協議し、イベントを中心に郵便局に人を呼び込む戦略を打ち立てた。
 同部会はJR横浜駅から少し離れた住宅街を中心に10局で構成されているが、やはりカタログ物販で苦戦していた。協議の結果、郵便局としてはかなり珍しい“中元試食販売”を実施することを決定。部会で試食道具一式を購入し、1週間ごと各局を回り、局内や局入り口で試食販売を実施した。
 新入社員が「いらっしゃいませ。よかったら一口召し上がりませんか」と声をかけ、会津天宝のおかず味噌、㈲クラストのメロンゼリー、㈱河京の喜多方ラーメン、㈱イトー屋の神戸ハヤシ、㈱鎌田水産のめかぶスープの5商品を来局者に勧めると、物珍しさも手伝い、予約も含めて中元商品の売り上げが大きく伸展した。
 中元を紹介する物販カタログは、郵便局の規模により少ない局で4~10冊、多い局で16~32冊置いてあり、近年は非食品のものも増えているが、ふるさと小包などを中心に食品での取扱いは現在も相当数に及ぶ。顧客から「どのような味か」を問われても、社員自身が食したことのないものも多く、実感のこもった説明が難しかった。
 加藤副統括局長は「横東連絡会126局を回る中で、試食販売を実践している局はわずかに数局だった。しかし、個局で1商品という形態で、部会として数商品を取り扱うなど戦略的に動いているところはなかった。実践してみると、こちらの想像以上にお客さまの反応は良い。やはり、味見という体験に勝るものはない。昨年までは中元期間に商品売上ゼロに近い日もあったが、試食販売を開始した6月8日の週は5日間に中元商品だけで10万円以上売れた。大口小口と様々あるため、金額でどの程度増えたという詳細な分析はこれからだが、4局の実績では、顧客数は少なくとも昨年の2倍以上に増えている。部会では炊飯器3台を購入しており、秋に向けて米の試食も実施する」と意欲を示す。
 中元商品の価格はいずれも送料込で3000円前後。一つ売れるごとに業者の売り上げになるが、郵便局にも実入りがあり、多く売れれば重要な物販収益源となる。試食に使う商品代金は業者負担で行われているが、販売実績がそれ以上に伸びているため、元手がとれる格好だ。
 横浜西神奈川部会では試食販売を実施する週に来局者を増やそうと、かんぽ生命のライフプラン相談会を同時に行うこととし、ポスターなどで事前通知しながら多くの来局者に〝味わいの逸品〟を提供している。
 既に、横浜ガーデン山局、横浜三ツ沢局、横浜菅田局、横浜六角橋局での試食販売を終え、今後は横浜神大寺局、横浜片倉局、横浜六角橋北局などでも予定されている。
 加藤副統括局長は「頒布会などのカタログ販売は主に地方が強い。都市部は気軽にデパートや量販店まで行けるため、カタログで購入する必要性を感じてもらえないためだ。全国でも物販トップクラスの連絡会は主に地方で、頒布会が継続的にとれていると聞いている。そうした地域では試食販売は必要ないし、過疎地を中心とする少人数の局では向かないやり方だが、人出の多い都市部で物販に苦戦する地域では、試食販売の効果は高いと思う」と強調する。
 また「試食販売とライフプラン相談会の抱き合わせ作戦のために、横浜西神奈川部会では、ローカウンターを作りやすい仕切りと保険設計書作成のためにパソコンにつなぐケーブルも部会で購入した。地域のお客さまに『郵便局に行けば何か面白いことをやっている』と思っていただけるネットワークを目指したい」と話している。
 横浜市東部連絡会は中元商戦突入に備えて、5月28と29日に単独マネジメント局の横浜中央局と連携し、局前で「ゆうゆうイベント」を開催。その際にも来局者や横浜駅周辺を行き交う人々に中元カタログの試食販売などを実施した。



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