「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6776号

【主な記事】

地域を元気に! 
限度額引上げは高齢化社会の必須条件
柘植芳文参院議員


 


■地方創生に関して、郵便局でのふるさと納税は、千葉県内の局では自治体と連携し、名産品の発送などはカタログで一括して扱うことを始めたが、他の地域も知恵を絞れば様々なことができそうだ。
 ふるさと納税は地方税増収などを目的に作られた制度で、今かなりのブームになっている。現場ではふるさと小包などをプレミアムに乗せたいという話も出ている。ふるさと小包だけをターゲットにするのは間違いで、総合的に郵便局の地域の価値をどう高めていけるか、そのために知恵を出して自治体と協力し合うことが大切だ。
 結果的には儲かることになるが、収益を挙げることだけを目的にするのは良くない。様々な角度から、どのような形でふるさと納税に協力できるか知恵を絞ってほしい。
 ふるさと納税は確定申告する時の煩雑さ、納付書がなかなか取得できない。地方ごとに申込書の形式が異なる、投資番号になっていないことから調べるのが大変などが指摘されていた。菅官房長官が総務大臣時代に地方税収を増やす施策として作られた仕組みで画期的な制度だが、そこに郵便局を絡ませることで使い勝手の良いものにできないかを提案した。今回、郵便振替書が国税納付書を代替し、自治体が確定申告をしてくれるなど我々が提案した内容がほぼ認められる形で使い勝手の良いものに改正された。

■「郵政事業に関する特命委員会」(細田博之委員長)が発足し、金融2社の限度額引上げを議論する場がようやく設けられた。
 限度額見直しというと、その一点だけに議論が集中してしまう。しかし、限度額問題は郵政事業の歯車の一つに過ぎない。例えば、ユニバーサルサービス、株式の上場、それから年金受給者への対応、いずれも関わる問題だが、限度額の議論をすると地域金融機関の反発が沸騰してくる。ゆうちょ銀行の限度額は1991(平成3)年来変わっていない。
 当時の自分の生活環境を振り返ると、1000万円の貯蓄など夢のまた夢だった。しかし、時を経て退職金をいただいたり、子どもにお金をもらう年齢になると、その時点で郵便局から銀行に金を移すことはなかなかできないものだ。結局、利息のつかない郵便振替口座の方に振り込む。当時と比べると高齢化率は上昇し、年金をもらう人口が年々増えているにもかかわらず、地域金融機関が撤退したりしている。
 その中でユニバーサル義務を果たさなければならない郵便局は“地域の砦”として残っている。高齢者の方々に年金が振り込まれた時に1000万円をオーバーしてしまうケースは頻繁にある。年金を支給する取扱金融機関として郵便局が使えないのは一種の社会問題でもある。一人暮らしの高齢者の方が、少ない年金を高いタクシー代を払って取りに行くのではあまりに可哀そうだ。
 そうした時代にあって「局長さん、10万円おろしてきて」と郵便局が以前にやってきたような年金受取も代行できる温かい政策が必要ではないのか。1000万円という限度額が本当に国民にとって適切なのか、を考えてほしい。
 また、日本郵政グループのうち、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が上場する中で、市場が最も重視するのはゆうちょ銀行だ。その現状を見た時に限度額が1000万円で抑えられ、反転しているとはいえ民営化時に比べて減少し、懸命に工夫しながら国債を少しずつ投資に回し、ようやく経営を保っているのがゆうちょ銀行。
 そもそも銀行は現在額をたくさん持たなければ運用ができない。限度額を規制されたままの銀行に市場は魅力を感じないだろう。少しでも風穴を開けて、経営がある程度上向きになるような展望を持たせなければ4兆円の復興財源も生み出せない。そうした意味でも、市場である程度良い価格で売れるようにするため、限度額引上げは欠かせない必須条件ともいえる。
 この問題は郵便局という単一の組織の問題というより、高齢化や人口減少という社会全体を考えた場合にも極めて重要な問題だ。

■限度額引上げが郵便局のためだけでなく広く“地域”のために重要な制度ということか。
 そう感じている。特命委員会が発足以降、急に取材が増えて、限度額がどうなのか聞きに来られる。記者の人には、限度額だけを取り上げる報道の仕方は一面的だと伝えている。日本郵政グループ全般の企業価値や公的使命、地域貢献などはすべてリンクしているが、限度額はそのうちの歯車の一つ。論じるなら、そうした他方面から論じてほしい。政治家もそういう見方が多い。そうした議論に終始しない方向に進むように働きかけている。
(つづく)


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