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第6776号

【主な記事】

郵政民営化委が意見書
地域密着型サービス、多機能拠点化を提言
自治体と郵便局の連携を

 郵政民営化委員会(増田寛也委員長)は4月17日、民営化の進捗について総合的な意見書をまとめた。実質6年ぶりに見直す意見書は、委員会が日本郵政グループ各社や関係省庁に行ったヒアリングのほか、鳥取県や宮城県などへの地方視察、有識者100人に対するインタビューを踏まえ“地方創生”の観点から郵便局が自治体や地元企業と連携し、「地域密着型サービスの検討」や「多機能拠点化を図る」ことなどを提案。介護など高齢者ニーズに対応する新たなビジネス展開にも期待を寄せた。全国約2万4000に張り巡らされた郵便局ネットワークを〝希少な価値〟とし、グループ各社が重要な経営基盤として有効活用を表明している点を評価した。意見書は5月8日にも安倍晋三首相を本部長とする郵政民営化推進本部に提出される。

 意見書は17頁にわたるもので、グループ各社の検証のほか、「上場準備」や「郵便局ネットワーク」という項目を設け、今後の課題や期待を記している。上場については3月31日に予備申請を行ったことや、東証が発表した「金融2社については流通株式比率に係る基準(35%以上)を適用しない」などを紹介し、委員会として「上場準備が着実に進んでいる。コーポレートガバナンスの強化に努め、市場との対話能力の向上を図ることが大切」と引き続き注視していく意向を示した。
 日本郵政について、昨年9月のグループの資本再構成を評価。人事政策では、専門的な能力の獲得と社員全員のレベルアップをどう体系的に取り組むかが重要と指摘した。また、日本郵便の「女性活躍室」設置などの成果を注目することを記した。赤字を抱える病院事業は、最近の医療行政に対応する観点から機能の見直しもあり得るとし、中長期的にグループ内で介護など高齢者ニーズに対応する新たなビジネス展開の可能性を探るなど、多角的な観点から検討する必要があると明記した。
 日本郵便については、デジタルメッセージサービスは行政機関を含む様々な企業や団体の情報を安全に受け取ることができると評価。国際物流は早期の取り組みが不可欠とし、投資を行うに当たっては、メリットや戦略を国民や投資家に分かりやすく説明する必要性を強調した。また、宅配便事業統合により生じた二重システム併存状況の解消に向けて、サービスの改善や次世代郵便情報システムの構築が成果を上げ、2010(平成22)年度に1185億円の赤字だったものが13年度は332億円まで縮小したとし、16年度のゆうパック黒字化に期待感を示した。
 一方、窓口事業ではアフラックのがん保険、不動産事業や物販、広告業務、行政サービスのほかに「郵便局のみまもりサービス」など今後の重要な視点として、「地域密着型サービスの在り方」を検討すべきと意見した。
 窓口事業の営業利益は比較的安定的に推移し、13年度も375億円(前年度比103億円増)を確保しているが、収益の大半を占める金融2社からの受託手数料は減少傾向にある。利用者のすそ野を広げる努力も大切で、日本郵便とセゾン投信の業務提携の動きに着目。収益の多様化を図り、金融2社の受託手数料に過度に依存しないようにすることが課題と位置付けた。
 ゆうちょ銀行は低金利が継続する中で利ざやの縮小に伴い、業務粗利益は減少傾向にあり、主に経費削減により補っているとの見方を示した。個人顧客を対象とする手数料ビジネスを強化することで、金利に依存しない役務収益を拡大。その観点で投資信託、コンビニエンスストアのATM設置や新型ATMの開発などに取り組んでいる。給与や年金口座など顧客のライフサイクルに応じたメイン化商品のクロスセル、手数料ビジネスの強化が有益と強調した。
 かんぽ生命は民営化前の旧契約件数の減少が費差益として表れている。支店内に郵便局のパートナー部を設置。営業支援や事務指導を行い、日本郵便との連携強化の成果や、コグニティブ・コンピューティング・システムを活用した支払い業務の高度化の展開に期待を寄せた。 
 郵便局ネットワークについて、農協や他の金融機関が相次いで撤退する中、全市町村を網羅したネットワークは“希少価値”と強調。「積極的に地域における郵便局の存在価値を認めたい。そのコストを負担と捉えるのではなく、グループの重要な経営基盤として有効に活用する観点でネットワークを活性化することが重要」と指摘した。
 委員会が視察する中で、「地域によっては行政連絡会のような公的組織から郵便局が除かれたところもあり、郵便局と地域、自治体との関係が薄くなったという話もあった」と報告。「〝地方創生〟が重要な政策課題となった今、様々な地域を適切に支えていくためには多くの機関による協力が不可欠。郵便局ネットワーク強化のために、自治体や住民との意見交換の機会の設置を含め、日常的にきめ細かなコミュニケーションの充実を図ることが大切」と結論している。
 委員会後の記者会見で増田委員長は「郵便局ネットワークは地域の状況の変化に柔軟に対応し…とは、ネットワークの機能強化の観点で集落の集約状況によっては動かしてもよいのではないか、という意味だ。これから郵便局だけが頼りという市町村はどんどん増えていく」と語った。
 また、「県によっては県内130か所の多機能拠点づくりを進めているところもある。どう確保するかとなった時にコンビニも動いているところもあるかもしれないが、多機能拠点として郵便局を活用するやり方もある」と強調した。


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