「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6744号

【主な記事】

日本郵便 上海で初の商談会
商物一体型ビジネスモデル確立へ

 日本郵便は9月3、4の両日、中国・アジア販路開拓チャレンジ2014「日本商品商談会IN上海」を上海世貿商城(上海マート)で開催した。商談会は日本郵便として初めて開催するもので、昨年10月に上海に設立した現地法人「郵便(中国)国際物流有限公司」が協力し、商談成立後のロジスティックサービスを中心に、日本企業の中国進出、販路開拓支援などをトータルでサポートすることを目的として開かれた。食品、日用品、生活雑貨や環境商材など日本の逸品を扱う日本企業38社が出展し、中国のバイヤーなど2日間で約1000人が来場した。中国側が評価したのは、地域に根差した約2万4000の郵便局ネットワークとブランド力。日本各地の良い商品を幅広く揃えたことに注目を集めた。日本郵便は今後、中国を中心にタイなど他アジアの国々も視野に入れながら貿易や決済など“商流”と“物流”をトータルにサポートする「商物一体型ビジネスモデル」の確立を目指す。





 日本郵便は、本年4月から5月末にかけて①中国で販売可能な日本産の商品②コンクール受賞歴などを持つ全国からの選りすぐりの逸品を手がける企業の募集を行った。70社ほどの応募がある中で40社に絞り、最終的に38社が参加した。出展費用は5万円で、一般的な商談会や展示会と比較し、安価なことも評価された。
 出展したのは伝統工芸の皿、傘などの日用品、天然素材の野菜洗浄剤や消臭剤、PM2.5(微小粒子状物質)を吸着させるような環境改善商品、自然食品や飲料などを扱う中小企業が中心。大気汚染や農薬の問題が深刻化する中国は、日本で作られた安心・安全な食品への関心が高く、梅干しやはちみつ、ゼリー、安全な食材を使ったドレッシングなどを製造販売する様々な企業も参加した。ユニークなものでは、炊いた米を入れると寿司のシャリが握られた状態で出てくる「すしマシーン」で、実際に業務用に使われるものが中国では高い関心が持たれていたという。
 企業のほかには、地域の特産品のPRや観光案内を目的に北海道から九州地方までの市町村含めて19自治体が参加した。
 商談会はあくまでビジネス支援を目的とすることから、一般の参加者には公開されずに、専門家同士がじっくりと話し合えるように配慮された。日本郵便は、中国側の日本商品を買いたいとするバイヤーを招待。通販事業者や卸業者、商社などのほか、政府関係者も視察を兼ねて来場した。
 3日のオープニングセレモニーには、日本郵便からは福田聖輝副社長が出席し、主催者を代表してあいさつ。また、同時期、中国国内で開催された郵便関係の国際会議に出席した髙橋亨社長も4日に視察し、全ての出展企業を見て回った。このほか本社国際事業部の関係者、出展企業を勧奨し、支社の営業担当者17人も出席して商談を側面からサポートした。
 商談会の目的は、中国販路を求める日本のセラーと商品を求める中国側のバイヤーが直接商談を行う場を提供し、日本郵便がマッチングをサポートすることで、成立後は物流と商流面で輸出全体をサポートすることにある。
 日本郵便国際事業部の高地晴子企画役(郵便〈中国〉国際物流有限公司薫事・総経理を兼務)は「eコマースなどアジア市場が大きく成長している。その新たな市場に日本の商品を欲しい人たちと売りたい人をうまく“つなぎ”、入口から出口まで一貫して支援する仕組みを作りたい。中国が安心なものを求めているといっても、実際にどのような商品が受けるのかは分からなかったが、商談会を行うことでそうした課題や日本の良い商品を中国にマッチングできる感触がつかめた。中国側の反応は非常に良かった」と強調。
 「通販事業では中国の雑貨やアパレルなど小荷物を輸入し、最後にゆうパックで運んでほしいなどの事業者のニーズもある。上海の自由貿易試験区なども活用の道を探りたい。中国側が日本郵便に期待するのは物流面だけではなく、地域に根差す〝地域性の発掘力〟。加えて、偽物や怪しい商品が出回る中、日本郵便がマッチングした企業や商品であれば大丈夫という信用力。商物一体化型ソリューションビジネスに向けて商談成約をフォローしたい」と意欲を示した。
 また、同部の武智勝担当部長(郵便〈中国〉国際物流有限公司副総経理を兼務)は「誰もが入れる展示会形式のものはこれまでも中国各地で開催されていたが、このような形でのビジネス向け商談会はかつてなかったと思う。例えば、自治体が主催する商談会はその地域に限られたものしか出展されない。金融機関などの商談会も自らの顧客に限定している。今回の商談会は、中国側の『一度に日本全国の逸品を見たい』とのニーズに応えたもの。郵便局ネットワークの強みだ。今後は商品カテゴリを絞ったり、逆に間口を広げたり、開催地も上海を含めて他地域でも検討したい。タイやシンガポールなどアジアもターゲットの一つとして視野に入れたい」と語った。


>戻る

ページTOPへ