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通信文化新報

2013年9月16日号

中期計画は来年2月に公表
郵便局改修やシステム見直し
日本郵政西室社長

  日本郵政の西室泰三社長は9月11日の会見で、今秋にも公表予定だった中期経営計画を再度見直し、来年2月に発表することを明らかにした。毎年2月に総務省に提出する単年度経営計画も同時期になる見通し。延期した理由として、平成27年春に上場するために、老朽化した郵便局設備の一部修繕や現場と継続的に対話する中でのシステム見直しを行う費用、時間を中期経営計画に盛り込むには、若干時間を要することを挙げた。「中期経営計画を本格的に見直すのは、会社として非常に大きな決断」と強調。「上場に耐え得る精度の高い確実な計画」にするため、慎重に進める姿勢を示した。改訂版学資保険で想定される収益なども計画に盛り込みたい考えだ。経営計画と同時に「郵政グループビジョン2021」も基本内容を変更せず、“郵便局ネットワークが郵政事業の根幹”と加えた改訂版を作成する可能性もあるという。

 西室社長は、中期経営計画の公表延期とともに、初の実業団チーム「女子陸上部」を発足させることや来春の採用予定者の内定式などについて説明。「平成27年に上場するための体制整備として、経営内容を充実し、透明性を確保しなければならない。一番大きな問題は中期経営計画。上場前に会社の体質を良くすることがどうしても必要だ」と強調した。
 「公社化以来の民営化の流れの中で、単年度利益を出さなければこの会社はつぶれるかもしれないと必死で利益を出すことに努めてきたため、必要な設備投資も先送りしてきた」と語った。上場に耐え得るために、郵便局設備などやシステム全体の見直しの必要性を指摘した。
 「郵便局をはじめとする老朽化設備の見直しは、全国のお客さまにサービスを提供する会社として、社員の作業環境改善をもう一歩踏み込んで進める必要がある。エレベーターの耐用年数は30~40年だが、30年以上経過したものが3分の1近くもある。水漏れなどの事故が年間300件程度に上る。抜本的な対策を打たなければ作業効率が低下する。郵便局の化粧室は相当悲惨な状況にあるところが多い。お客さまへの姿勢は作業環境の影響もあるため、的確に見直していかなければならない。現在、見直し作業に入っている」と語った。
 また「郵政グループはさまざまな意味でシステムを活用するいわばシステム会社。4社がグループとして存続するためには、全体の見直しがなされなければならない。システムの世界は、日進月歩の非常に速いスピードで変わりつつある。クラウドの導入もアジェンダの中に入っているが、さらに高度化されたシステムにも確実に対応していける体制がどうしても必要だ」と述べた。
 その観点から「日立ソリューションズの小松敏秀副社長に日本郵政の執行役副社長として入っていただき、システム全体を見てもらう。システム根幹に深い認識のある人が窓口サービスをする最前線と継続的な対話を行って作り上げることが肝要。システム見直しは時間も経費もかかる。その見直しを中期経営計画にしっかりと据えたい」と強調した。
 西室社長は、中期経営計画は平成26、27、28年の3年間分の計画を毎年度見直すこととし、上場準備期間、上場、上場後の各年度に何をして、どのような形にすべきかを具体的な数値を盛り込む方針を示した。
 ただし「現段階での株主は財務省。金融庁、総務省との間でも上場時期などを相談していかなければならない。それによって明確な時期が決まる。タイミングで重要なのは経済状況と株式市場。東京オリンピックの決定は日本経済に明るい方向を示していると解釈し、早期に上場が達成できるようにと考えている」と期待感を表した。
 また「今後1年半の間にどこまでいけるか、難しさは十分承知しているが、27年春の上場を確保できる状態まで持っていきたい。日本の今までの株式市場の歴史の中では最大規模の上場になるだろう」と予測した。

 「女子陸上部」来年4月に設立
 駅伝競技も人と人“つなぐ”
 一方、来年4月に設立される日本郵政初の「女子陸上部」について、「計画そのものは私が社長に就任するはるか以前にさまざまな形で論議され、スポーツ競技会とも話をしていたようだ。女子陸上部は、駅伝を中心に中長距離競技を行う。駅伝は人と人をたすきで“つなぐ”。郵政事業も人と人を手紙で“つなぐ”ため、親和性が高く、応援しやすい。東京オリンピック開催が決まったため、派遣選手を育成できればこれ以上の幸せはない」と語った。
 また、「10月1日に来年採用予定者のグループ合同内定式を行う。総合職の内定式にはグループの約200人を集めて行う。一般職の内定式は全国13エリアごとに集めてグループ合同で行う。グループの一員としての自覚を持ち、お客さまに貢献してほしい」と期待を寄せた。
 さらに、「今回、承認された新人事制度の一部を先行導入し、業務範囲を限定する新一般職に非正規社員からの内部登用を考えていきたい。全体の制度の実施より若干前倒しになるが、良いことを極力早く実施したい。12月からは再来年入社の採用活動もスタートする。優秀な学生を数多く採用したい」とし、非正規社員からの登用規模への質問には「まだ決めていないが、労働組合とある程度内定した数字は3000~4000人」であることを明らかにした。

 学資の年内認可に期待
 保険代理業務拡大も継続

 記者団からは中期経営計画や女子陸上部などへの質問が相次いだ。「中期経営計画の策定は、いつを目指しているか。アフラックとの提携の進捗状況について」との質問に、西室社長は「来年2月を予定している。経営計画そのものも見直して発表するが、それとの整合性もとることになるだろう。アフラック商品は現在1000局で扱っているが、急いでやるよりは研修などで的確に業務を理解いただき、理解レベルを上げながらゆっくり着手していくことを想定している。2年以内に2万局までいけばよい」と答えた。
 また「既に代理業務を行っている他の保険会社の業務も、さらに力を入れながら範囲を広げていかなければならない。各保険会社から関心が寄せられているが、範囲を広げ過ぎることによって事故が起きることがないよう注意しながら門戸を開放し、代理業務のスキルを上げ、一番大切な郵便局ネットワークが、収益性とサービスレベルの両方を向上させ、発展できることを期待している」と語った。
 さらに「かんぽ生命の改定版学資保険が、なかなか認可されないのは中期経営計画の遅れに影響しているのか」との質問には、「かんぽ生命がクリアしなければならない8条件について、郵政グループの対応はすべて報告を終えた。未払い75万件の対応を的確に実施している。作業が完了するのは年内。完了するまでには認可いただけるとの希望を持っている。中期経営計画の見直しが後ろにずれたため、来年2月までに改訂版学資保険の収益を見込んだ形で計画が作れるだろう」との見通しを示した。
 このほか「メガバンクや保険会社、物流企業など一般企業で中長期にわたる目標の経営数値、PBR(株価純資産倍率)やOHR(経費÷業務粗利益で算出される比率)、ROA(総資産利益率)などあるが、中期経営計画にはそれらも盛り込まれてくるとの理解でよいか。例えば、グループは特殊事業があり、OHRが非常に高いなどの問題があるが」との質問があった。
 西室社長は「それらの数値を盛り込まなければ上場計画にならない。特殊会社という企業の事情などはあるが、それを隠して上場するわけにいかない。上場するということは会社の情報を開示して、納得が得られるものにしていかないといけない。覚悟の上で進める」と強調した。
 一方「システムは老朽化が進んでいるのか」との質問には、「節約を懸命に進めてきた企業のため、設備にしわ寄せが出て、これ以上持ちこたえさせ、社員に我慢をしてもらう段階は通り過ぎていることを実感している。事故の発生などを含めて、全体のシステム構成にも目配りをしていかなければいけない」と指摘した。
 「設備の更新、システムの見直しなど予算はどの程度かかるのか」「郵便局の修繕は何局程度を想定しているのか」などの質問には、「どの程度かかるか分からない。数字を積み上げている段階」、また「実は調査が終わっていない。単独エリアマネジメント局にまず着手し、会社が所有していないところをどうするかなどの方針は決めていない」と答えた。
 「システムの改修については、統合の観点からも相当必要な部分が出てくると思われるが」との質問に、「何もない状況から新しいシステムを構築する余裕はないし、再構築の時間的、金銭的な余裕もない。システム統合について、トータルシステムを新たに導入したり、従来システムを全く異なるものにするようなことは考えていない。9月17日から、いよいよ実働に入ってもらう」と述べた。
 通信文化新報は「郵政グループビジョン2021と中期経営計画の関連性はどうなっていくのか」と質問。
 西室社長は「大幅に変える必要はないが、中期経営計画を発表する際に、グループビジョンの改訂版を同時に考えなければならない可能性がある。総合生活支援企業という基本理念のほかにも、郵便局ネットワークが郵政事業の根幹と書き込む必要があるかもしれない」と答えた。

 切手発行でオリンピック支援
 日本郵政の西室社長は9月11日の会見で「東京オリンピック支援として記念切手などを考えているか」との記者団の質問に「盛大にやりたい。記念切手は言うまでもない。さらに何ができるかも検討していきたい。これまでも国内でのオリンピックでは、臨時郵便局を選手村に設置したり、選手の宿泊施設の一部提供、郵便料金に関する各国語の解説書を郵便局窓口に設置、国際交流を希望する小学生のサポートなどもあった。開催まで7年あるため、3~4年は考える時間がある」と答えた。

 陸上部選手の出場も期待
 「女子陸上部の東京オリンピックへの目標は」との質問には、「郵政グループとして初のスポーツチーム編成のため、スポーツというカテゴリーの中で存在感を持つ陸上部にしたい。
 まずは駅伝だが、参加できる数の選手を揃えていきたい。オリンピックは7年先のため、最初のチームから選手が生まれれば喜ばしい。陸上部を育てていく上で有望な選手に参加していただきながら、オリンピックにも出場できるようになればよい。開催は、日本のスポーツ全体の底上げになるだろう」と話した。
 「他企業の実業団は廃部が相次いでいる。継続していくために何が必要と思われるか」との質問には、「二つやり方がある。一つはスポーツをやる会社をつくりプロフェッショナルにやっていくことと、一般の企業が従業員のチームを持ち、広告宣伝費の一部を割いてキープするやり方がある」と説明。
 「会社全体のイメージ向上のためには何らかのスポーツチームを持つのは大切で、社員のサポート、お客さまからも理解を得られると考え、女子陸上部を発足させた。続ける資金的な余裕はある。国内企業で廃部が続いたのは景気が悪くなると経費が削られるためで、今後、経済が回復すればわれわれと同じように、チームを立ち上げる企業も増えていくのではないか。郵政グループがスポーツという分野でも社会貢献できれば、これ以上の幸せはない」と語った。