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2021年9月6日第7108号

【主な記事】

[日本郵便]目時政彦常務執行役員
万国郵便連合の事務局長に


 第27回万国郵便連合(UPU)大会議で、国際事務局長選挙が8月25日、コートジボワールで行われ、日本郵便の目時政彦常務執行役員(62)が次期事務局長に選出された。アジアで初めてとなり、政府を挙げて選挙戦に挑んだ結果の圧勝だった。日本が国連機関のトップに就任するのは6人目で、2019年国際原子力機関事務局長以来2年ぶりとなる。国連機関での日本のプレゼンスが高まることが期待される。就任は来年1月で1期4年(最大2期まで)。当選を受け、目時氏はSNSで「私にとって大きな名誉。UPUの明るい未来に全力を尽くしたい」とコメントしている。

 事務局長選には、目時氏のほか、UPU国際事務局次長のパスカル・クリバ氏(元スイスポスト)、管理理事会(CA)第二委員会議長のジャック・ハマンド氏(ベルギー郵政情報通信委員会委員)が立候補。投票の結果、有効票156票のうち、目時氏は102票を獲得。2位のクリバ氏は40票と大差で勝利した。2人の候補者とは遅れて立候補を表明したハマンド氏は14票。
 国際事務局次長選挙では、スロベニアポスト国際部長のマリアン・オスヴァルド氏が選ばれた。選挙にはオスヴァルド氏のほか、汎アフリカ郵便連合事務局長のユーノス・ジブリン氏(カメルーン)とスロベニアポスト国際部長のマリアン・オスヴァルド氏、アルゼンチン大統領府情報通信技術事務局付加価値サービス局長のマルセラ・マロン氏、UPU財務局長のヴラディスラフ・デュベンコ氏(ウクライナ)の4人が立候補した。
 郵便業務理事会(POC)議長選挙は、8月26日に投票された。中国郵政国際関係マネジングダイレクターのドン・ホンメイ氏と、ラポスト欧州及び国際関係局長のジャン・ポール・フォースビーユ氏の一騎打ちとなり、フォースビーユ氏が僅差で当選した。投票はPOC理事国48か国で行われ、フォースビーユ氏は26票を獲得。ホンメイ氏は22票。
 UPU大会議は当初、昨年8月に開かれる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で1年間延期となった。国際事務局長やPOC議長の改選期を迎えており、事務局では特に選挙について検討を重ねてきた。アフリカ初の大会議でアフリカの加盟国からの強い要望もあり、コロナの状況を見ながらの開催となった。
 大会議に出席できない国には、当初は電子投票も検討されたが、大会議に出席する国に投票を委任する形での選挙となった。1国1委任という条件が付いた。
 目時氏は、2018年10月に総務省が開いたUPU本部でレセプションの場を借りて正式に出馬を表明した。「新ビジネスの機会の拡大」「SDGsの推進」「長期的に安定したUPUのマネージメントの実現」「加盟国とUPU職員の双方向コミュニケーションによるグローバルな調和」の4つの政策(公約)と、2012年から2期にわたるPOCの議長としての実績をアピールし、支持を訴えてきた。
 POC議長としては、Eコマース市場の発展に向けて、国際郵便商品を書類と物品に再編する「商品統合計画」を各国間の調整を図りながら進めている。また、アメリカのトランプ前大統領が「中国からの郵便物が不当に安くなっていること」を理由に「2020年1月1日までに到着料の改革をしなければ離脱する」と宣言すると、到着料を巡っての加盟国の調整に奔走。アメリカの脱退回避に貢献した。その手腕は高く評価されている。
 2018年9月には、当時の野田聖子総務大臣が官邸に働きかけ、政府のバックアップを取り付けた。閣議後の会見で「当選に向けて政府を挙げて全力で取り組みたい」と発表。選挙に向けて体制が整った。
 選挙戦は、関係する総務省と外務省がそれぞれのネットワークを生かし、PR活動を続けてきた。外務省は在大使館から各国に支持を要請。総務省もUPU会合でのロビー活動や独自のルートでPR活動を続けてきた。武田良太総務大臣も8月4~5日に開催されたG20デジタル大臣会合で、各国の要人と会談した際に目時氏の支持を要請した。

社会インフラ「郵便」の発展に貢献

 目時氏は当選後すぐに次のようにコメントを寄せている(日本郵便発表)。
 「総務省、外務省はじめ、関係各所の力を結集していただいた結果と考えている。郵便という社会インフラは、歴史的にみて世界中の国と国民の生活に密着した重要なインフラであり、コミュニケーションの手段として各国の文化・社会・経済の発展を担ってきた。192の国や地域が加盟している最も大きな組織の一つ」
 「郵便という歴史ある世界の社会インフラをいかに発展させることができるか、人類の未来とその文化・社会・経済にいかに貢献できるかが、UPUの事務局長としての私の使命でもある」
 「急速に発展するデジタル化の中にあって、事務局長として取り組むべき課題は、加盟国間の良好な関係の維持、効率的な国際事務局の運営といった地道な取組みが不可欠と認識している。更には、コロナという、人々の社会生活を一変させる非常に難しい場面での舵取りを任せられたと考えており、世界中の郵便サービス維持向上のため、精一杯取り組みたい」。
 目時氏は1983年東京大学文学部社会心理学専修課程卒。翌年、郵政省に入省。貯金局国際業務室長、郵便事業会社国際・調査部企画役、日本郵便国際事業部長、執行役員(国際担当)などを歴任。主に郵便の国際事業に携わる。
 内閣官房郵政民営化推進室参事官として、郵政民営化の制度設計などに携わった(2006年~)。在タイ日本大使館一等書記官(1992年~)も経験。UPU関係では第5委員会(郵便金融業務)議長、POC議長を務める。

【目時氏の公約】
●新ビジネス=▽収益性のあるサービスを促進するため、郵便がEコマース時代のネットワークと公共の役割への投資を可能とする。▽迅速な決定と先進的な技術による付加価値の強化に資するためにシンクタンク機能を強化する。▽郵便事業の機会を共有し、ともに発展するため幅広いステークホルダーと協力する。
●SDGsの推進=▽郵便ネットワークを災害に対し弾力性がありながらも環境にやさしいものにする。▽金融包摂及び社会的責任のため郵便ネットワークを活用する。
●長期的に安定したマネージメント=▽財政面及び将来見通しの点で困難な課題に直面しており、長期的に安定した解決のため、透明性のある手続きを通じ、加盟国の叡智を結集させる。▽効果的なマネージメントを全ての加盟国と国際事務局職員との対話を通じて実施する。


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