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2021年6月28日 第7098号

【主な記事】

[JP改革委]組織風土改革などで意見交換
現場力の再構築を
支社に権限・独立性高める

 第11回JP改革実行委員会(梶川融座長)が6月9日、開かれた。
 中期経営計画「JPビジョン2025」に盛り込まれた共創プラットフォームや信頼回復・組織風土改革などについて、日本郵政グループの各支社長と委員との間で、活発な意見交換が行われた。
 日本郵政の増田寛也社長は「不祥事を忘れることなく、組織風土改革に取組むことが大切。デジタル化への取り組みは急務」と述べた。
 座長については、山内弘隆座長が郵政民営化委員長に就任したことに伴い、梶川融委員(太陽有限責任監査法人代表社員会長)が選ばれた。
 組織風土改革について横田尤孝委員(青陵法律事務所 弁護士)からは「日本郵政グループの強みについては中計にも書かれているが、弱みについての指摘がない」という意見があった。
 増田社長は「弱みはたくさんある。強みが最大の弱みになることもある。日本郵便は13の支社の下に2万4000の郵便局がある。郵便局の大きさも2000人から2人と様々。支社がどういう役割を果たすのか、整理し切れていない。本社が何でもかんでも支持文書を出す。現場は立ち止まってゆっくり考えることが削がれている」と問題点を指摘する。
 そのうえで「おかしなことはきちんと跳ね返す。しっかり議論していく部分が弱いと思う。現場の力をどう再構築していくかが難しい課題だ。上から降ってきて徹底的にやり抜かなければならないと、コンプライアンスも飛び越えて走り出す。現場力が生かせれば、無理難題の目標に、何の意識もなく、お客さまに迷惑をかけながら契約を取ることはなかったと思う。もう一度、良き生真面目な文化を取り戻したいと思う」と述べた。
 横田委員は「支社に権限を与えて機能的で、独立性のあるものにして、自由な発想でいろんなことをしてもらう仕組みを作る必要がある。権限集中型から権限分散型に変えて、社員一人ひとりにも権限を持たせて自由にさせる。今は指示待ち族になっていて能率も悪い」と意見を述べた。
 また、日本郵政グループの組織風土については「この1年2か月に、かんぽ問題、内部通報、ゆうちょ銀行のガバナンスについて検証を行って感じたことだが、悪しき組織風土がいくつかある。大きな組織にある大企業病で、縦割り、保守的、責任の所在が明確でない、お客さま本位の意識の欠如などがある。不祥事が多いという印象もある。上司が責任を取ることが少ないと、部下はついてこないのではないか」と、問題点を指摘する。
 その対策として「悪しき組織風土と良き組織風土を洗い出し認識することから始め、目的にかなった組織にすることが大切。組織を変えれば人の意識も変わる。外部人材を入れていくことも会社の空気を変えていくことになる」と意見を述べた。
 上司の責任について、増田社長は「郵便局の大きな犯罪で、過去に上司の処分がどのような形で行われていたのかよく分からないことがある。上に責任があるが、どういう責任を果たすのか、共通認識ができていない。不祥事の処分の後に人事権で動かす、不祥事でないものについては人事権で空気を変えていくことももっとあっていいと思う。社員には適性を見極めていつでも変える、と言っている。毎月、必要な手直しをやっていく必要があると思う」と考えを述べた。
 中計の共創プラットフォームについて、野村修也委員(中央大学法科大学院教授)は「各社の取組みは共創プラットフォームという概念が宙に浮いている感じがする。社員が日々の仕事そのものが自覚的に共創プラットフォームの確立につながるという自信を持たせるくらい、概念の落とし込みがないとお題目に終わるのではないか。そういう視点で取り組んでもらいたい」と意見を述べた。
 増田悦子委員(全国消費生活相談員協会理事長)は「郵便局は健康や財産など各種相談窓口としての機能、リアル窓口からデジタルにつなぐ機能を果たしてもらいたい。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は保有する大量のデータを活用し、お客さまに合った資産運用や新サービスの提供があるが、新しいサービスには教育も必要。そういうことがお客さまの声を拾う場にもなる」と各社の社長に取組みを尋ねた。
 タブレット端末の活用について、ゆうちょ銀行の池田憲人社長は「窓口にタブレット端末を導入していく予定。お客さまが簡単に登録でき、利用できるようにする。便利に使える選択肢を提供したい。直営店に配備した後、郵便局でどう円滑に使えるか考えているところ」。
 かんぽ生命保険の千田哲也社長は「中高齢層のお客さまの中にはデジタルは厳しい状況も出てくる。タブレット端末で、家族とつなぎ、一緒に説明を聞いていただく。家族を一世帯として守ることをやっていきたい」。
 日本郵便の衣川和秀社長は「相談窓口は有効なご意見だと思う。お客さまのご要望を繋いでいくという役割は一定の収益をどう組み立てるかについても考えていきたい」と述べた。
 これらの意見を受けて、増田社長は「組織が縦割りで、冷たくなっている部分もある。切り替えていかなければならない。厳しさと根っこには愛情を持って会社を育てていくことは大事だと思った」と感想を述べた。


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