「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2021年6月21日 第7097号

【主な記事】

[日本郵政]自己株式を取得
政府保有は50.7%に

 日本郵政は6月11日、政府が保有する株式の自社株買いを実施した。約2500億円で発行済株式総数(自己株式を除く)の6.83%を取得した。これにより政府の日本郵政株式の保有は、56.9%から50.7%に下がった。
 自己株式取得は、株主還元や資本効率の向上を目的としたもので、中期経営計画「JPビジョン2025」に基づき、10日の取締役会で決議した。財務省はこの決定を受けて、郵政民営化法上で「政府は3分の1まで株式を早期に処分する」となっていることから、売却に応じた。
 日本郵政は1株905.5円(10日の終値)で、2億7609万500株を取得した。これにより、政府の議決権比率(自己株式の除かれる)は2.7ポイント減り60.6%となった。
 日本郵政は、財務省の日本郵政株の第2次売り出しの時に約1000億円で自社株買いを行ったが、株式は消却せずに保有している。
 今回取得した株式も含めて、必要な株数を除き消却する方針。時期は未定。
 自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)を使い実施された。少数株主保護の立場からこのシステムを使い、市場からも買い付けもできる体制だったが、応募者はいなかった。
 日本郵政株の売却益(3分の1の保有義務があるため3分の2程度の売却)は、東日本大震災復興財源に充てられる。全体で4兆円を確保すると決められており、財務省は2017年9月に売出価格1322円で第2次売り出しを実施。1次と2次合わせて、2.8兆円を確保した。第3次売り出しで、残りの1.2兆円を得る計画だった。
 2019年5月には主幹事会社を選定し、売り出しの準備を進めていたが、かんぽ生命保険の不適正募集問題で日本郵政の株価が低迷し、売り出し時機を逸していた。900円台の株価では1.2兆円の確保は難しいが、日本郵政の自己株式消却という一手も残されている。
 自己株式消却により政府保有の売却可能な株式数が増える(自己株式の消却で発行済株式数が減ると、政府の保有義務のある株式数も少なくなり、売却可能な株式数が増える)とともに、一株の価値が高くなり、株価が上がる可能性もある。株価は日本郵政が保有する金融2社株式の売却との関係もある。
 残り9500億円の確保について、財務省では「日本郵政の株価や経営状況により、時期については未定だが、復興財源については全体で4兆円程度を確保していきたい」としている。売却期限は当初は2022年度までだったが、2027年度に延長された。


>戻る

ページTOPへ