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2021年5月3日 第7090・7091合併号

【主な記事】

トール社エクスプレス事業
[日本郵便]7億円で売却

 日本郵便は4月21日、100%子会社の豪・トールホールディングス(以下、トール社)の「エクスプレス事業」(宅配事業)を、豪・投資ファンド「Allegro Funds Pty Ltd」(アレグロ・ファンズ・プロプリエタリー・リミテッド、本社所在地・シドニー、Adrian Loader代表) に売却する契約を締結した。売却金額は約7億円(780万豪ドル、1豪ドル84.36円)。オーストラリアなどビジネスを展開する政府の外国投資機関の承認手続きを経て、事業譲渡は6月末に完了する予定。

 契約は、同日開かれた日本郵政と日本郵便の取締役会で承認され同日、契約を締結した。
 トール社はすでに昨年11月5日の取締役会で売却を決めていた。昨年11月には売却プロセスを管理するフィナンシャルアドバイザーとしてJPモルガン証券と野村證券を選定し、公募により売却先を探していた。
 同日の会見で日本郵便の衣川和秀社長は「社内の専門家の助言や議論を重ね、公正なプロセスの下で、入札に参加した企業を比較衡量した結果、総合的に判断し売却先を決定した」とした。
 簿価690億円(1豪ドル84・36円)の100分の1程度で売却しなければならなかった理由について、「直近の経営成績や今後の経営計画を基に第3者が株式価値を算出し、相手先と協議した結果、売却額が決まった。十分な利益を出せない状態で事業環境は厳しい。将来価値について悲観的な見方をされ、高い価格の提案がされなかった」と話す。
 エクスプレス事業は、オーストラリアやニュージーランド国内の陸海空の貨物輸送を手掛けており、BtoBの宅配事業を中心にビジネスを行っている。事業譲渡には豪「外国投資審査委員会」とニュージーランドの「国土情報省海外投資局」の承認などが必要となる。その間に発生する運転資本(営業活動を行う資本)である売掛金や買掛金の差額の調整が行われた後に売却金額が確定する。衣川社長は「最終的な売却額に大きな変更があるとは想定していない」と話す。
 売却後に残る「コントラクトロジスティクス事業」「フォワーディング事業」について、衣川社長は「ここしばらくはコロナウイルス感染症対策、サイバー攻撃、エクスプレス事業の売却完了に全力を尽くしたい。国際物流分野の重要性は認識しているが、残った事業についての社内での議論が十分でない。アジアを中心に軸を固めていくことはできないか。社内で時間を掛けて議論していきたい」と話している。
 同事業の売却により、日本郵便では2021年度3月期決算で、674億円を特別損失(減損損失619億円、売却に必要な税金などの諸費用として54億円)を計上する。
 2017年3月期の減損処理で日本郵便は5429億円の株式評価損(特別損失は5728億円、 当期純損失は4785億円)を計上したが、税務計算上の算出としての条件が満たされなかったため、その会計年度には税務処理をしていなかった。
 売却ということで、今回はそれが認められ、株式評価損の税務処理を行うことにした。
 税負担の軽減措置と特別損失は同程度のため、日本郵便の2021年3月期の決算には大きな影響はないという。


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