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2021年4月5日 第7086号

【主な記事】

かんぽ営業を再開
不適正販売に一定の目途


 日本郵政グループは、4月1日から、新規顧客への訪問や商品提案を含めた保険営業を開始する。かんぽ生命保険の不適正販売での人事処分に一定の目途がついたことから、営業再開に踏み切った。日本郵便は13支社の支社長を一新するとともに、2018年度以前から在籍していた本社・支社・郵便局の金融営業関係の社員の8~9割を別の職務に異動させる。日本郵便の衣川和秀社長は「不適切募集を根絶させるための人事異動。新支社長には新しい目で郵便局の仕事をみてもらいたい」と話している。

 通信文化新報は「13社の支社長交代の理由と新体制でどのようなことがやりたいのか」と質問。衣川社長は「いろいろなことに一定の目途が付き、次のステップに進もうという時に人心を一新するということで、合意も得られた。新しい支社長には新しい目で、今の郵便局や仕事を見てもらい、問題があれば改善してもらいたい」と新体制に要望した。
 日本郵便では、2018年度以前に在籍していた約80人の「金融コンサルティング本部長」のうち、約70人を支社内の別の部署に異動させる。パワハラなどで一部の人が処分された「コンサルティングアドバイザー」(支社)約800人のうち、8割に当たる約600人は、郵便局などの他の職務に異動。その結果、2021年4月の時点でコンサルティングアドバイザーは565人となる。
 郵便局の金融コンサルティング部長は、約1100人が4月までに他の郵便局や支社に異動した。2018年度以前からの同部長は約450人。
 また、本社・支社の金融営業関係の社員のうち、かんぽ生命保険の管理者や役職者は全員支社の金融関係部長以外の部門に配置する。
 通信文化新報は「人事戦略の中で会社の収益を上げることを目的に行う異動というよりは、不祥事に対する人事処分の流れの中で、このような大規模な人事異動は、不協和音が生じパフォーマンスが下がることはないのか」と質問。
 衣川社長は「今回、人心を一新するということで大規模な人事異動を意識してやった。違う仕事に当たった時に、そこで何を学び取っていくのか、学んできたことをいろんなシチュエーションでどう生かしていけるのか。社会人・組織人として成長できるのではないか。いろんな思いはあると思うが、新しい職場で力を精いっぱい出すことを考えていただきたい」と答えた。
 これまでに実施された人事処分は、募集人と当時の郵便局管理者・本社支社の役員・責任者合わせて3333人が懲戒処分となった。募集人は全体(10万6850人)の2.1%に当たる2269人(特定事案2196人、多数契約73人)が処分された。処分者の内訳は、インストラクターが約50人、エリアマネージャー局長が約30人、有責者が約430人、エリアマネージャー社員が約360人。
 郵便局の管理者は686人。所属の内訳は単独マネジメント局約580人、エリア局約100人。このほか、当時の執行役員への厳重注意・報酬減額に当たる責任者が39人、当時の本社支社の責任者は357人となった。
 営業再開について衣川社長は「厳しいお叱りもあったが、一方で社員からもお客さまに向き合って、一定の提案をすることが大事だという機運が出てきた。課題に対応しながらあるべき姿に近づけていく。これまでやってきたことの成果を確認しながら、問題があれば修正していく。そういうステップを踏まなければ新たな問題に対応しにくい。次の段階に行くことに大きな問題はない」とそのプロセスを語る。
 かんぽ生命保険の千田哲也社長は「お客さまからはお叱りもあるが感謝の言葉もあり、それによって社員のモチベーションも少しずつ高まっている。お客さまの不利益解消もしっかり対応していかなければならない。人事処分など大きなところは進んだが、信頼回復までには至っていないと思っている。これからが正念場。日本郵便と一体となり取り組んでいきたい」と話している。
 不適正募集問題が起きた背景には、低金利で予定利率が下がり、貯蓄性商品の魅力が低くなっているにもかかわらず、営業目標達成のため、無理な営業を行ったことも原因の一つ。
 総務省と金融庁に提出した業務改善計画には保険の新商品開発も盛り込まれている。通信文化新報は新商品開発の状況と認可の時期について問うた。
 千田社長は「今回の問題は一定程度、商品にも問題があり、開発を進めており、認可手続きを睨みながら商品内容を詰めている段階。入院・手術などの医療系、病気の予防などの健康分野の保険商品の開発を目指し、段階的にはなるが、そういう分野でしっかりやっていきたい。これまでの基本保険料は死亡に重心を置いているが、今後は徐々に病気やけがに重心を動かしていかなければならないと思っている」と答えた。
 かんぽ生命保険では、新たな社会ニーズに応えるため4月に組織再編を実施する。お客さまの声を分析し経営に反映させるための「VOC分析室」や日本郵便の渉外社員が来年4月にかんぽ生命保険に出向するための「再編準備室」(経営企画部内)なども新設され、新たな体制に備える。


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