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2021年3月1日 第7081号

【主な記事】

“特段の問題なし”
[民営化委]ゆうちょ銀行の新規業務で

 第227回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が2月17日に開かれた。ゆうちょ銀行の新規業務の認可申請や、現行の中期経営計画の進捗状況、日本郵政グループの第3四半期決算について関係者にヒアリングが行われた。春に取りまとめが予定されている「総合的な検証」の構成案についても了承された。

 ゆうちょ銀行の新規業務の認可申請については、総務省と金融庁にヒアリングを行った。総務省からは「郵政民営化法にのっとり、審査を進めているが、これまでのところ特段の問題は生じていない」との状況報告を受けており、同委員会では、すでに終えている「意見募集の報告」「意見提出者へのヒアリング」に、今回の両省庁のヒアリング結果を踏まえ、取りまとめを行うことにした。
 委員からは「ゆうちょ銀行のフラット35の直接取扱について、他の金融機関から業務範囲が拡大するのではないかという懸念があるが、どう考えているのか」という質問があった。金融庁は「フラット35を扱う直営店は41店舗。ゆうちょ銀行から業務範囲を拡大するという話が出てきた場合は適正な競争に影響することがないように対応する」と答えた。
 また「フラット35に参入した場合のシェアは」との質問に、金融庁は「銀行、信用金庫、信用組合と比べると相当少ない。民間金融機関に大きなインパクトを与えることはないのではないかと考えている」と回答した。
 金融庁の提出資料によると国内住宅ローン約200兆円のうち、銀行は65.2%(132兆円)、信用金庫8.5%(17.1兆円)、信用組合は1%(2兆円)、フラット35は約11%(約23兆円)。
 「ゆうちょ銀行の実務能力を含めた態勢整備の状況」についての委員の質問に、金融庁は「他の民間金融機関の住宅ローン経験者受け入れ、住宅ローン経験者(スルガ銀行の媒介業務)を配置することで態勢を整えると聞いている」と回答した。
 決算について、委員からは「郵便事業の落ち込みを物流が支える構造はより明確になった。物流は料金が定められている郵便とは異なり、採算性を重視した付加価値の高いサービスを提供するためどのような取組みをしているのか」という質問があった。
 日本郵便は「デジタル化の進展により、物数減が加速するものと考えている。Eコマースは拡大しており、便利な場所にある郵便局の空きスペースを含めて物流倉庫を構えることにより、物流ソリューションを提供していきたい。楽天との提携により顧客データを早い段階で入手することで受取人の利便性を高める取り組みができないか検討している」と答えた。
 日本郵便は物流のワンストップサービスの取り扱い増加に伴い、物流の営業倉庫を増やしている。2012年7月から2021年1月末までに、地域区分局や一般局内や外部倉庫を含めて全国に14拠点を設置した。
 ネットワークの再編により区分機を撤去したスペースなどの活用が課題となっており、倉庫としても活用している。昨年からは主に外部倉庫を営業倉庫としている。昨年2月には愛知、3月には川越西、10月には東京多摩の3つの外部倉庫が新設された。
 昨年12月24日に発表した楽天との物流分野での戦略的提携への合意では、「物流プラットフォームを共同事業化するための新会社の設立」のほか、「共同物流拠点や配送網の構築」などについても検討を進めている。
 また委員からは「楽天との業務提携は物流DXに向けて新会社を設置することはとても良いことで、注目している。日通のペリカン便がうまくいかなかった原因は何か。今回も同様の問題が発生することはないのか」と質問があった。
 日本郵便は「日通との共同会社は、ペリカン便とゆうパックの新会社を作るプランだったが、合弁会社の認可が受けられず、ペリカン便を取り込む形になった。拙速なスタートで大幅な遅配を生じさせ、営業的にもダメージを受けた。準備不足が大きな原因。楽天との新会社は準備を怠りなくしていきたい」と説明したという。

 2020年度見込み 経営目標を下回る
 日本郵政グループの2020度の連結の予想は中期経営計画の経営目標を下回る見込み。グループ連結の1株当たりの当期純利益は100円以上を目標にしていたが、予想では84.09円。当期純利益の目標額は4100億円プラスαだったが、目標値を大きく下回り3400億円と予測する。
 各社の当期純利益(連結)については、日本郵便は目標の650億円に対して予測はゼロ、ゆうちょ銀行は2800億円に対して、2700億円、かんぽ生命保険は930億円に対して1570億円。日本郵便は大幅減と予測する一方でかんぽ生命保険は大幅増。
 
 成長戦略、トール社、ガバナンスなど検証
 郵政民営化委員会の3年に一度、行われている「郵政民営化の進捗状況についての総合的な検証」の構成が同日の会見で明らかになった。グループDXを中心とする新たな成長戦略やトール社の立て直し、グループガバナンスなど新たな課題を取り上げる。グループの経営状況と株式処分についても取り扱う。
 かんぽ生命保険商品の不適切募集やゆうちょ銀行のキャッシュレスサービスの不正利用問題など、グループ全体のガバナンスやコンプライアンスが問われたことから、グループガバナンス態勢の再構築を検証する。
 デジタル時代のビジネスについて「グループDXを中心とする新たな成長戦略」をテーマに、各社のDX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境、社会、ガバナンスへの取組みで企業価値を図る)、不動産への取組みと課題を検証。次期中期経営計画への期待や、総務省のデジタル時代における郵政事業の在り方懇談会の検討内容についても触れる。
 トール社は、経営が悪化している豪国内エクスプレス事業の売却を検討するなど、経営改善が求められているが、同検証では「経営改革と戦略」「経営悪化と立て直し」「今後の課題」について検証する。
 日本郵便の国内事業(郵便・物流、郵便窓口)では、労働力の確保と労働条件の改善、EC市場の発展とデジタル化への対応、収入源の多様化と新たな成長分野の構築、新型コロナウイルス感染症対策などを取り扱う。
 郵便局ネットワークの水準や活用、ユニバーサルサービスの安定的提供の確保については「郵便局ネットワークと地方創生」の中で扱われる。
 ゆうちょ銀行は、「持続可能なビジネスモデルの確立」や「キャッシュレス決済サービスを通じた不正出金問題」「限度額改正後の状況」、かんぽ生命保険は「顧客ニーズに合った新商品の開発・新規顧客の開拓を含む経営戦略」と「限度額改定後の状況」を盛り込む。


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