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2020年10月19日 第7062号

【主な記事】

無人配送ロボット
国内初の公道実験を実施
[日本郵便]3年後の実用化を目指す

 日本郵便は、無人配送ロボットの公道実証を10月7日、東京都千代田区にある「東京逓信病院」と「麹町郵便局」間(約670メートル)で行った。公道では国内初。配送のラストワンマイルを補完するロボットとして、制度改正も進んでおり、同社では3年後を目途に事業化を目指す。

 使用されたロボットは、ベンチャー企業「ZMP」(東京都文京区、谷口恒社長)がサービスを展開する「デリロ」(縦96センチ、横66センチ、高さ109センチ)。最大時速6キロで走れる。80サイズまでの荷物を最大130キロまで積載可能。
 配送ロボットの無人走行には、近くから監視・操作する方法(近接監視)と遠隔監視で操作する方法がある。今回の実証は、人がロボットの後ろを歩き、コントローラーで動きを操作する近接監視で行われた。この日は2台のロボットが公道を走ったが、坂道も難なくクリア、無事に目的地に到着した。
 近接監視の実証は、10月1日から7日までJPローソン東京逓信病院店から麹町郵便局間でゆうパックを使い行われていた。引き続き同区間で、遠隔監視操作での実証を10月末まで実施する予定。
 今後について、日本郵便の五味儀浩オペレーション改革部長は「コロナ禍で、非対面でのニーズが高まっている。無人配送は、お客さまの多様な受け取り方のニーズにも応えることができる。技術面、制度面での課題をクリアし、3年後の事業化を目指したい。公道のほかにも、ビルや大規模施設内など制度面での規制がかからない領域も並行して実証実験を行い、実用化に進めればと考えている」と述べている。
 安全性を重視し、スピードなどの効率性も考慮しながら、活用シーンを考えていきたいという。
 制度面では、国土交通省と警察庁間で「交通ルール」や「車両の安全性」の擦り合わせが必要となる。野原諭内閣審議官(内閣官房日本経済再生総合事務局次長)は「事業者は早い所で来年度、再来年度にもサービスインの計画があり、それらが実現できるようにしていきたい。規制当局の間ではすでに議論が進められている」と話している。
 課題として野原内閣審議官は「配送ロボットが、車両なのか、電動車椅子のようなものなのか。走るのは歩道なのか、車道なのか。分離されていない所ではどうするのか。左右どちらを走るのか。実証実験を踏まえ、きめ細かな交通ルールを議論したうえで決めていかなければならない。制度の改正時期については法改正が必要なのかにもよる」と話している。
 運用面では、ZMPの谷口社長は「公道はいろんな環境がある。狭い道路では待機場所を設定して、先に行くのか、待つのか運用の仕方を決める必要がある。自転車とぶつからないようにもしなければならない。歩道を走ることになるなら、自転車の時速を6キロ以下にしてもらうなどロボットにも人にも優しいようにしてもらいたい」と話す。
 また技術面では「通信手段は現在、4Gを使っているが、遅延がある。ただ時速6キロ程度なら運用できる範囲ではあるが、5Gを使えば、リアルタイムで操縦ができる。操縦が精緻にできるようになるうえ、解像度の高い映像が使えるようになれば、問題の発覚もし易くなる」と5Gの全国展開に期待を寄せる。


日本郵便が全国で初めて行った無人配送ロボットの公道実証。麹町郵便局を出発。コントローラーで人が操縦する


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