「通信文化新報」特集記事詳細
2020年8月24日 第7054号
【主な記事】販売順調
日本郵便オリジナル商品第1号
フルーツトマト「さやまる」
日本郵便はオリジナル商品づくりを進めている。2月にはその開発商品第一弾・長野県産フルーツトマト「さやまる」を発売。7月には第2弾「さやまるプロジェクトの朝採り完熟トマト」も販売され、順調に滑り出している。ICTを駆使したハイテクトマト。普通のトマトの2倍に当たる高糖度の栽培に成功し、ネット販売での完売も続いている。事業を手掛けているのは、デジタルビジネス戦略部の鈴木雄輔係長(32)。2017年に社内副業制度で採用され、一から事業を始めた。現在、生産から販売、収益管理まで、鈴木さんが事業の全てを切り盛りしている。日本郵便には今後、益々必要になるチャレンジ精神。その原動力について鈴木さんに聞いた。
社内副業制度で誕生
高糖度を実現 完売が続く
さやまるは長野県長野市にある信越郵政研修センター(信越支社の隣)で生まれた。この場所の郵便番号「380」の語呂合わせにちなんで名付けられた。運動場跡地の一角に、砂栽培ができる自動管理のビニールハウス(東レ建設のトレファーム)が建っている。
砂栽培を採用したのは、土に直接、植えなくてもよい高床式の設備により、農地でなくても作物の栽培と販売ができるからだ。
2017年の社内副業制度で、鈴木さんの提案が採用された背景には、オリジナル商品の開発と遊休地の活用、ふるさと小包の商品の充実、ゆうパックの活用など、社内のリソースをフルに活用できることがある。成功すれば、いくつものメリットが生まれるからだ。
当時、物販ビジネス部に所属していた鈴木さんは、ロングセラーの「つぶらなカボスジュース」に続く、オリジナル商品を自社で作りたいと、トマトの商品化を提案した。
鈴木さんの提案は2016年に募集のあった新規事業の提案で数十の提案の中から選ばれた7つに入った。その時はプレゼンテーションだけだったが、翌年から始まった「社内副業制度」で再び応募し、事業化が認められた。その時、採用されたのは鈴木さんの提案を含めて2つだけだったという。
2018年6月、構想から2年目。ようやく実証実験用のビニールハウスの建設までこぎつけた。同10月からは東京農業大学学術研究員の新井陽子さん(26)も加わり、糖度の高いフルーツトマトづくりが始まった。センサーやカメラが配置され、砂の温度や水分・肥料の量を自動管理している。送られてくる画像を見ながらスマホから水やりなどの操作ができる。ICTを駆使した栽培方法だ。
データを取ることで、これまで勘に頼っていた栽培方法と比べて、安定して糖度の高いトマト栽培が可能となった。
今年の出荷時には、通常のトマトの2倍の糖度10.4度という高い数値をたたき出した。土に直接植える栽培方法では、初心者が技能を習得には10年掛かると言われるフルーツトマトづくり。2年目にしてこの数字を出すことができたのは大成功だ。
高糖度のトマトができ、商品化のめどが付いた。こうして「さやまるプロジェクト」は本格的にスタートした。2月からは第一弾のフルーツトマト「さやまる」の出荷が始まり、収穫などの作業には近くに住む郵政OBの清水久一さん(67)も加わった。
(永見恵子)
>戻る