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2020年 7月20日 第7049・7050合併号

【主な記事】

「関係人口」の活動が重要
国交省懇談会 地方創生に不可欠


 人口減少・少子高齢化が進む地方部での地域作りの新たな担い手として期待されている「関係人口」を話し合う「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」(座長・小田切徳美明治大学教授)の初会合が7月10日、東京・霞が関の合同庁舎で開催された。

 オブザーバーとして、総務省地域力創造グループ地域自立応援課の菊地信果夫課長補佐はじめ、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、農林水産省が出席し、国土交通省国土政策局総合計画課が事務局を務めた。
 「関係人口」は、地域外にあって、移住でもなく観光でもなく、特定の地域と継続的かつ多様な形で関わり、地域の課題解決に資する人などを意味し、地方創生の取組みでは不可欠な要素となっている。
 地方部では、人口減少・少子高齢化が進んでいる上、都市的サービスが縮小傾向にあることから、地域の「担い手」や「生業」の確保が必要となっている。人生100年時代を迎え、マルチステージ型の人生を送りたいというニーズが増えつつあり、人生を豊かなものにするために自らのペースで取り組める地域活動や、地域での居場所等が求められている。
 このような状況の下で、地域の活力を維持・向上させていくためには、「関係人口」の創出を含めて地域の活動力を高めていく必要があり、今後は一層、人々の関心を地域に向けていくことが重要となる。
 人口減少・少子高齢化が進行する状況で地域の社会的・経済的活力を維持していくためには、地域住民と関係人口の活動力を高めていく必要があるとの認識のもと、令和元年度は、前身となる「ライフスタイルの多様化等に関する懇談会」を4回にわたって開催。総務省、内閣官房、農水省がオブザーバーとして参加した。
 7月3日に公表された、審議結果等のとりまとめをたたき台として、来年の3月にかけて、計6回の新たな会合が開催される。10日に行われた第1回目の冒頭で、小田切座長は「議論を積み重ねてアウトプットを出す段階」と述べた。
 令和2年度は、ライフスタイルの多様化等に関する懇談会」の議論を踏襲した上で、新型コロナウイルスが関係人口に与える影響を踏まえ、9月中旬ごろに関係人口の全国規模の実態把握を行う。地域側の視点を取り入れた関係人口の拡大・深化に向けた施策の方向性の検討を通じて、関係人口と連携・協同する地域作りの在り方を示す。
 第1回目の懇談会は、キックオフとしての位置付けで、令和元年度の前懇談会で整理された論点を踏まえた上で、今後の議論の進め方がまとめられた。
 令和元年度の前懇談会で整理された論点は次の通り。
▽人と地域とのつながりによる地域づくり=(定住人口や関係人口として)人と地域とのつながりや共助のネットワーク形成が必要①地域が地域作りの担い手をイメージ(地域の主体性を確保)②地域側と都市側が連携・協働しつつ、人と地域とのつながりを創出③ライフステージを踏まえながら、人生の転機の有効な活用方策を検討。
▽取組みが持続可能となる環境の整備=人と地域とのつながり、シェアリングと地域とのつながりを支える中間支援組織等が取組みを継続できる環境を整備することが必要。
▽シェアリングを活用した共助システムの構築=公的サービスのレベルが低下している地域では、公的な役割を補完する可能性がある協同組合型等のシェアリングが有効。
 このような課題を勘案した上で、第2回は「地域作りにおける関係人口の位置付け」、第3回は「地域と関係人口とのつながりの創出」、第4回は「シェアリングを活用した地域作り」、第5回は「関係人口の実態把握を踏まえた地域作りの在り方」をテーマとし、第6回に議論のとりまとめを行う。
 今回の懇談会では、前懇談会のとりまとめを引用する形で、以下の5つの論点が提示された。
①地域との関わり度合いに応じた課題=前回行った首都圏調査では、地域に関心はあるが関わりがない人が約19%いる一方で、地域を訪問し、参加・交流をしている人が約6%いるなど、地域との関わり度合いに応じて、課題が異なるため、それぞれの段階(度合い)に応じた対応の整理が必要となる。
②関係人口と地域の人とのつながりのサポート=SNS等のソーシャルメディアやインターネットプラットフォームは、都市住民が地域等に興味を持つことや地域を訪れるきっかけになる。つながりをサポートする「人」「場」「仕組み」については、「そこに行けば誰かがいる」「何かがある」といった固着性が重要であり、それぞれの個性、特徴、多様性を活かした有機的な連携・協働を生み出していくことが求められる。
 持続性を担保するには、キーマンの入れ替えを許容するなど、オープンなシステムであることが必要であり、経済性を確保しながら、コミュニティの魅力や個性を受け継いでいくことが重要。
③関係人口と地域作り=人口減少、少子高齢化が深刻な地方部で地域作りを進めていくためには、地域の主体性を前提としながらも、外部アクターとの連携を強調する「新しい内発的発展」を実現していく必要がある。外部アクターの一例として関係人口が想定され、意欲の高い地域住民と関係人口が共通の価値観でつながる新たなコミュニティを形成しつつ、連携・協働しながら地域作りに取り組むことが重要となる。
 地域住民と関係人口が連携・協働するにあたっては、地域側が目指すべき方向性を明確化し、関係人口とどのように連携・協働していくのかについて、あらかじめ地域側で話し合いをしておくことが必要。
④地域と関係人口の視点=地域の維持・向上に必要となる定常的な活動量は存在しないため、地域側が目指すべき方向性を明確化し、関係人口とどのように連携・協働していくのかについて、あらかじめ地域側で話し合いを行うことが重要。
 ただ、内発的発展に直接関わらない関係人口も地域に刺激を与えるなどの観点から、地域が変容していくきっかけとなるため、幅広い関わりを受け入れる土壌が求められる。地域に行く側と地域で迎える側がウインウインの関係性を築き、相互が変容していくことが重要。
⑤関係人口の地域作り(地域活動)への関わりのイメージ=それぞれの地域やケースで多種多様だが、関係人口にはビジョン策定段階、企画段階、実行段階等の各段階で、単純な参加から積極的な参画など、濃淡のある多様な関わり方での活躍が期待される。
 新型コロナウイルス感染症に関する議論で提起されたのが「オンライン関係人口」。感染拡大によって、関係人口が地域への訪問を自粛した結果、リアルでの交流が途絶え、オンラインを介した関係人口が浮上した。
 SNSやウェブ会議システム等のインターネットを活用したバーチャルな交流が拡大。訪問系の関係人口の一部がオンライン関係人口に移行しているといわれる。新たに地域に関心を持つ層が現れ、オンライン関係人口に移行するなど、オンライン関係人口は存在意義を増し、コロナ禍が収束した後、地域の内発的発展に直接関わる関係人口になる可能性があるとされている。
 オンライン関係人口創出事例として、株式会社カヤックLivingが主催した「みんなの移住フェス2020オンライン」、株式会社Sotokoto on Line主催の「Whe Kumanoオンライン宿泊」、鳥取県、鳥取市、長野県塩尻市が共催した「オンライン関係人口未来プロジェクト」が紹介された。


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