「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2020年5月4日 第7038・7039合併号

【主な記事】

郵便局で国民生活を支援
[日本郵政]増田社長
コロナ禍 福祉資金貸付や物流など多方面で


 日本郵政の増田寛也社長は4月27日、新型コロナウイルス感染予防による外出自粛を背景に、EC需要が急増していることについて「単純な価格競争だけでは当社の良さが理解されない。さまざまな状況を良く分析して、当社の強みとして利用してもらえる所を郵便物流戦略に反映させていきたい」と述べるとともに、「都道府県の社会福祉協議会が窓口となっている生活福祉資金貸付制度が我々の取組みとして俎上に載っている。社会福祉協議会の窓口は、たいへん混雑しており、受付が難しい状況にあるため、その申し込みを郵便局窓口で行えるように、関係機関との調整を始めている」ことを明らかにした。今回の記者会見は、新型コロナウイルスの感染予防のため、インターネット回線を使ったオンライン会見となった。


 増田社長は冒頭、グループ4社で31人(4月27日現在)の感染者を確認したことを報告した。「グループを代表して、感染症で亡くなられた方々に謹んでお悔やみ、罹患された方々にお見舞いを申し上げます」と語りかけた。
 「外出自粛要請に伴うネット通販需要の急増で荷物の取扱量にはどのような影響があるか。ネット通販の宅配で価格競争が起きているが」との問いについては、「現在進行形で説明すると、国内の物流については全体的に増加している一方、国際物流はほとんど止まっている。EC需要増により価格競争が生じている。日本郵便の強みは、全国あまねくネットワークを持っていて、エリアを区切って配達するなど確実な仕組みがある上、お届けする先を常に更新するなど現場に熟知していることだ」と強調。
 「EC需要の急増の中で、単純な価格競争だけでは当社の良さが理解されない。当社の物流ネットワークが持っている強みを十分アピールしていくことが必要だと思う。さまざまな状況を良く分析して、どういう部分を当社の強みとして利用していただくかを戦略に反映させていきたい」と述べた。
 「福祉的な観点での新しい取組み」については、「福祉の範囲は広いが、都道府県の社会福祉協議会で実施している生活福祉資金貸付制度が俎上に載っている。生活に困窮された人にお金を貸す制度だが、社会福祉協議会の窓口は、たいへん混雑しており、受付が難しい状況にあるため、その申し込みを郵便局窓口で行えるように関係機関との調整を始めている」ことを明らかにした。
 そして「郵便局で密になってはいけないので、そのあたりの調整が必要だが、全体としては急ぐ必要があるため、早期に実施できるよう準備をしていきたい」との考えを示した。
 「国内の荷物の量が増える中、布マスク配布も重なり、郵便物流の現場はひっ迫しているが、今後、荷物や郵便物の総量規制や一部サービス停止の考えはあるのか」との問いには、「物流サービスについては、基本的なライフラインを我々が担っている。そして、こういう時期に国民が求めているサービスの内容そのものを提供していると考えているため、荷物や郵便物の総量規制や一部サービスの停止ということは考えていないが、営業時間短縮などの不便をお願いすることはある」とした。
 しかし「海外向け航空便等が無いことによる引き受け停止などはあるが、そういったことでもない限りサービスは継続していかなければならないと思っている。一方で、現場の社員を守っていく、感染リスクをきちんと低減させていくということも必要と考えている。現場の声には十分耳を傾けていきたいと思っている。どうやったら、お客さまに適切なサービスが提供できるか、安全で必要なサービスをお届けできるのかを考えたい」と語った。
 「感染拡大とユニバーサルサービス維持のバランスには困難が伴うのでは」との問いについては、「ユニバーサルサービスを維持するということから、どうしても仕事のやり方の中で実施しなければいけない使命を負っている。お客さまや社員の安全をどう両立させるかということは、非常に難しい問題ではあるが、一方で今回のコロナ対策は長期間にわたって継続して実施していかなければならないものだ」と強調。
 「『不要不急のご来店、ご来客をお控えください』というお願いを一部でさせていただくとともに、郵便局によっては開局時間を一部短縮し、午前10時から午後3時までとするところもある。事業継続との兼ね合いや両立のために、ぎりぎりの環境の中で再配達を止める等の措置を取らざるを得ないことを是非ともご理解願いたいと思う」と述べた。
 全戸配布される予定の布マスクについては、「全体でいうと、全戸配達の布マスクは約6300万か所に配達をすることになっていて、4月25日現在で約230万か所分が、都内の配達を受け持つ郵便局に納入されていて、順次配達されている。1通あたり42円で受注をした。全体で6300万戸なので、総額約26億円で仕事を引き受けた」とした。
 また「考え方としては、通常の郵便に合わせて届けるというよりは、できるだけ早く各世帯に届ける必要があるということだ。先般、特別な体制を組んで開始した。通常、特別な体制で配達する場合、追加負担になるが、今回はそういった追加負担はいただかない。全戸向け配達については、ユニバーサルサービスを使命とする日本郵便として、利益を見込まずに引き受けた」と説明した。
 新型コロナウイルス感染症によるかんぽ契約調査への影響については、「お客さまへの訪問や対面での話は控えており、郵送や電話による聞き取りを行っている。契約調査について大きな遅れ等は現時点では発生していない。大きな影響は生じていないが、今後、新型コロナウイルス感染症の影響で、確認に遅延が生ずる可能性がある。募集人調査の方は、面談による調査を中断しているため、進捗に影響が生じている。代替策あるいはリカバリー策があるかどうかを検討しているところだ」と語った。
 かんぽ問題の管理者の調査については、「順番では、まず募集人の調査があり、事実を固めた上で管理者に対する調査となる。管理者に対する調査も、明らかなパワハラ等の行為があれば、処分対象になる。そうでなくとも、管理責任ということで責任を問うていくべきではないかと考えているので、管理者の調査についても、一部実施をしているのが現在の状況だ」と答えた。
 営業再開の時期については、「監督官庁に提出した業務改善計画がきちんと実行されているか、徹底されているか、内部管理体制がきちんと機能しているかといったようなことを十分に見極めていく必要がある。信頼回復が何よりも重要。新型コロナウイルスの関係というよりも、今申し上げたことがきちんと行われているかどうかが先立って必要となる」と語った。
 さらに「お客さまへの対応状況は、『経済被害はすべて解消する』という方針に変わりはなく徹底させていく。お客さまへの対応状況、募集人の処分の状況、契約内容のチェック体制の確立、こういったことをきちんと実施できているかどうかを確認して慎重に判断していく必要がある。今の時点で、募集を再開し通常の営業体制に戻すというのは軽々に申し上げる段階にはないと考えている」と述べた。
 トール社の売却を視野に投資銀行を確保したという海外報道については、「就任以来、トール社をどうするかについては大きな課題だった。トール社についてはこれまでも不採算部門の売却などが行われてきた。本体も含めて売却を検討し始めたという趣旨の報道がオーストラリア発で流れたと聞いている。本体を売却することを検討しているわけではない。トール社の再建についてどうしたら良いのかは大きな課題なので、その検討過程に入っている。外部アドバイザーを決めてアドバイスをもらうということを始めたところだ」と明かした。
 「企業決算や監査に影響が生じ有価証券報告書の提出期限延長や決算開示の45日ルールの緩和が出されている」との意見に対しては、「感染防止の面などで困難を伴うが、工夫しながら決算作業を続けている。今後、変更が生ずる可能性があるが、現時点では5月15日に予定通り決算を発表したいと考えている。有価証券報告書の提出期限も従来通りに行いたいと思っている。株主総会も6月に実施する方向で準備を進めている」と回答した。


>戻る

ページTOPへ