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2020年 4月20日 第7036号

【主な記事】

村営バスで貨客混載
宮崎・「ホイホイ便」を本格運行
[全国初]日本郵便など宅配業者が連携

 宮崎県西米良村(にしめらそん)では、村営バスで日本郵便やヤマト運輸、佐川急便の3社の荷物や郵便物を配送する貨客混載事業「カリコボーズのホイホイ便」を3月23日から始めた。3社が貨客混載を共同で取り組むのは全国で初めて。
 同村では過疎化と高齢化が進み、村営バスは村民の足として、2008年4月から同村の中心部の村所地区と小川地区間で運行を開始した。約21キロの区間を平日1日3往復、土日祝日は1日1往復している。運賃は距離に応じて100円から900円。
 2019年3月からはそのバスに荷物を混載した配送事業「ホイホイ便」の実証運行を始めた。一方で、2015年10月からは宮崎交通の西都市と西米良村間を結ぶ路線バスにヤマト運輸の荷物を載せた共同輸送が始まり、2018年2月からは日本郵便もこれに加わった。
 また、同村では、日本郵便と郵便業務の委託契約を結び、ポストからの郵便物の回収や郵便局への配送、郵便配達を引き受けている。郵便物は委託配達員が午前の便で村所郵便局に取りに行き、地区内に配達。ポストの郵便物の回収も行い、湖の駅に持っていき、村営バスに載せ、村所郵便局まで運ぶ。
 逆便は、小川地区で村委託の作業員が郵便ポストから回収した郵便物を、集落拠点施設「おがわ作小屋村」の前で積み込み、村所郵便局で降ろす。
 基幹ルートはホイホイ便、個配は委託配達員が行う仕組み。ホイホイ便を活用して、村内間の荷物は1箱(3辺の合計が685センチ以内)100円と、低料金で配送するサービスもある。
 貨客混載の輸送の流れとしては、村所地区から小川地区への便は、日本郵便は村所郵便局、ヤマト運輸と佐川急便は観光施設「湖の駅」に荷物を運び、村営バスに載せる。小川地区では、「おがわ作小屋村」前で荷物を降ろし、村委託の配達員に引き渡す。配達員が各戸に配達する。
 路線バス便とホイホイ便は、時間が合わないため、荷物についてはその日のうちに配達できないものは引き受けられない、という課題がある。路線バス便についても、ヤマト運輸と佐川急便は、終点の村所から湖の駅までの便を路線バスの到着時間に合わせて配送便を調達しなければならず、小川地区内に配達する荷物だけは路線バス便は使っていない。別便で直接、湖の駅に運んでいるという。
 同村では「現状では、追跡サービスや荷物の保管場所などクリアできない問題があり、日をまたいで荷物を運ぶことができない。時間指定の荷物の配達も引き受けられない。ホイホイ便は本格サービスを始めたが、課題が残っている。走りながら、できるものから一つひとつ解決していきたい」と話している。
 このサービスができるまでには「ホイホイ便プロジェクト協議会」(2015年)を立ち上げるなど、多くの人が関わっている。九州工業大学大学院の吉武哲信教授や大分経済大学の大井尚司教授、日本郵便九州支社、村所郵便局、ヤマト運輸、佐川急便、日本工営、地元のタクシーやトラック協会、国土交通省や県・村の関係者も参画し、実証を重ねながら作り上げてきた。
 サービス名の「カリコボーズ」とは村に伝わる精霊の名前。春の彼岸から秋の彼岸までは川に、秋の彼岸が過ぎると山に帰ると言われている。移動する時に「ホイホイ」という音を立てるのだという。カリコボーズホイホイ便という名は、この伝承から名づけられた。


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