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2020年 4月13日 第7035号

【主な記事】

業務改善の実行が重要課題
日本郵政、日本郵便の事業計画

 日本郵政と日本郵便の2020年度事業計画が3月30日、総務省から認可を受けた。かんぽ生命保険の不適正募集などの不祥事を受け、両社は「業務改善計画の実行を経営上の重要課題と位置づけ、信頼回復や再発防止に取り組むこと」を基本方針に盛り込んだ。両社の売上、利益はともに縮小する見込みで、日本郵便の当期純利益は前年と比べて5分の1と大幅減となる見込み。事業計画には新型コロナウイルスの影響は盛り込まれておらず、長引けばさらに収益減となる可能性もある。

売上、利益の減少を見込む

 日本郵政は営業収益、営業利益、当期純利益ともに減少を見込む。当期純利益は18億円減の2203億円。1株50円の配当には2022億円が必要なことから、日本郵政の利益の大半が株主配当に充てられる計算だ。
 営業収益は前年比82億円減の2742億円。主な要因は、子会社からの受取配当(109億円減)と宿泊事業収入(58億円減)の減少。宿泊事業は昨年度に15か所の「かんぽの宿」の営業を終了したことなども影響している。新型コロナウイルスの影響で経済の停滞が長引けば、更なる収益減は避けられない。
 営業費用は前年比77億円増の758億円。減少しているのは物件費だけで、人件費をはじめ他の費用は増加。営業利益は159億円減の1985億円を見込む。収益が上がっていないものの、費用は増えており、利益を押し下げるという構造。
 業務運営の基本方針には、かんぽ生命商品の不適切募集などの不祥事への対応や再発防止策の着実な実施、業務改善計画の実行、「お客さま本位の業務運営」やコンプライアンス・監査への取り組み、東京五輪2020への貢献などが示されている。
 総務省は認可に当たり、グループガバナンス体制の構築や業務改善計画の着実な実施、ユニバーサルサービスの安定的な提供、災害時や感染症発生時の対応、宿泊事業については「抜本的な見直し」を求めた。
 宿泊事業は昨年の要請では「引き続き経営改善の取り組みを着実に進める」とされていたが、一段と踏み込んだ内容になった。
 3月31日に開かれた日本郵政の増田寛也社長の会見で、通信文化新報は宿泊事業について「総務省からは抜本的な見直しが求められているが、その受け止めと現状・対応策は」と質問。
 増田社長は「新型コロナウイルスの影響で宿泊、宴会ともに稼働率が下がっており、厳しい状況にある。キャンセルがいつまで続くのか、出口が見えない。かんぽの宿の一部は地元に引き受けてもらっているが、赤字が生じている。最近の状況を踏まえると、健全化とは程遠い水準。政府の支援策も出てくると思うのでそれを見ながら、郵政の中でもどのようにやりくりしていくか考えていきたい」と答えた。
 また、新型コロナウイルスが終息した後の立て直しについて「新たな成長分野というよりは、まずは足元の事業を充実させて伸ばしていくことが大切だと思うが、環境に合わせてサービスの自由度を高めないと、新たな顧客層に訴求しないのではないか。例えば増加しているインバウンドを取り込もうとした時、全国一律のサービスでは、難しいのではないか」と質問。
 増田社長は「平常時に戻った時は、地域の状況によるが、インバウンドや若い人にも利用してもらえるよう、それぞれの特色を生かすことになるのではないか。総務省からの要望は重いもので真摯に受け止めたい。宿泊事業は厳しいことは覚悟しているが、この苦境を乗り越え、働く人に少しでも応えられるようにしていきたい」と述べた。
 日本郵便は、かんぽ問題で営業停止や営業自粛の影響などから金融2社からの受託手数料収益が前年比1073億円減の5659億円と予想。当期純利益も前年比780億円減の219億円。前年度事業計画の当期純利益の1000億円と比べ、約5分の1に落ち込む見込みだ。
 営業収益は前年比1427億円減の2兆9928億円、営業費用は同724億円減の2兆9441億円。人件費(同293億円減)や経費(同431億円減)を大幅に抑制していくものの、営業利益は同702億円減の487億円と大幅に縮小する予定。
 主な取り組みとして、「コンプライアンスの徹底」「風通しの良い職場づくり」「グループ各社との連携強化」などのガバナンス強化や組織風土改革、かんぽ生命保険商品の不適切募集対策として業務改善計画の着実な実施を掲げる。
 テレマティクス(移動体通信システムを利用してサービス)や荷物のルーティングを活用した物流オペレーションの見直し、デジタルの活用による商品・サービスへの付加価値の創出、郵便局ネットワークの価値向上にも引き続き取り組む。
 総務省からは、業務改善計画の着実な実施、不祥事が発生した時の情報公開の徹底などにより国民の信頼回復に努めることや、先端技術を活用した業務効率化・利用者の利便性向上を図ること、ユニバーサルサービスの安定的な提供、サイバーセキュリティサービス、地方銀行との連携などが要望されている。


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