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2020年 4月13日 第7035号

【主な記事】

組織改革で意見交換
JP改革実行委が第1回会合


 1月から日本郵政グループの新体制がスタートしたが、日本郵政の増田寛也社長の下に、「JP改革実行委員会」が4月2日に発足した。外部の専門家で構成され、信頼回復・営業再開への助言、再発防止策やガバナンス・コンプライアンスへの検証を行う。

 JP改革実行委員会のミッションは▽国民の信頼回復への取り組みに対する助言▽特別調査委員会調査報告書の提言や業務改善計画の進捗状況の検証▽郵政グループの重要課題への提言の3つ。
第1回の委員会が同日に開かれ、日本郵政グループの4社長と5人の委員らが出席。開会に当たり増田社長は「かんぽ生命の不適切募集を受けて、郵政グループは抜本的な改革に取り組むとともに、実行に移していかなければならない。特別調査委員会からは提言をいただいたが、実行する上で外部の専門家によるモニタリングが必要。改善計画には新たな提案も必要になる」と述べた。
 また、日本郵政グループが抱える問題の解決について、「1月に経営陣は変わったが、長く組織にいると色に染まり、思考が内向きになりがちだ。郵政の常識が世間から乖離していないか、幅広い意見を持つ専門家に指摘していただこうと思う」と委員会の役割を説明。
 組織改革については「40万人もの大組織で、社員の仕事も様々。上からの押し付け改革にするわけにはいかない。社員自らが考え、おかしなところがあれば、直していくという意識を持ってもらいたい。委員会には忌憚のない厳しい指摘をいただき、真摯に受け止め改革につなげたい」と指針を述べた。
 委員会は金融、コンプライアンス、ガバナンス、消費者団体、法曹界にバックグラウンドを持つ5人の専門家で構成。第1回の委員会では、座長に山内弘隆・一橋大学経営管理研究科特任教授が指名された。
 山内座長は公共経済学、交通経済学、公益事業論が専門の経済学者。政府の宿泊施設活性化などの政策形成にも参加した経験がある。「日本郵政グループは社会的に重要なインフラを提供するという大きな役割がある。人口減少、高齢化、過疎化の中、ユニバーサルサービスを維持しながら、一方で事業収益を確保しなければならない。社会が求めるサービスになるよう、経営課題の解決にできる限りお手伝いしたい」とあいさつ。
 梶川融委員(太陽有限責任監査法人・代表社員会長)は、社会福祉法人や医療法人の改革に携わった経験がある。「不祥事というマイナスをゼロにするのではなく、更に強い組織に発展させるという点を含めて議論したい。公共性・信頼性は最大の経営資源だが、今回それを毀損してしまった。信頼性は組織の発展にとって重要。商品開発も日本郵政グループにしかできないものにしていく。競争力の高い商品開発ができれば、無理な営業も防ぐことができ、国民の利益、企業の利益にもつながる」と、郵政グループの強みを生かした商品開発への提言に意欲を示した。
 野村修也委員(中央大学法科大学院教授・弁護士)は2005年10月に公布された郵政民営化法に基づく初代郵政民営化委員として、増田社長と共に民営化のプロセス監視などにも携わった。総務省の法令等遵守調査室長としてコンプライアンス監視、金融政策では金融検査マニュアルの策定、金融問題タスクフォースメンバーとして不良債権処理にも関わった。
 「日本郵政グループのガバナンスやコンプライアンスは、最前線から見るとたどり着いていない所がたくさんある。第一線の現場は自分の仕事がどういうリスクに直面しているのか、自分自身で考える組織にしていかないと、コンプライアンスは実現できない。社員が問題を自分のこととして受け止めているか」と組織改革を訴える。
 また、ビジネスについては「社会の課題解決により、新たなビジネスが生まれていくという発想のSDGS投資が一般化している。公共の課題を見据え、新たなビジネスを生み出すトップランナーとしてのポジションが取れる。トップランナーが目指せるような改革に役立てばと思っている」と述べた。
 増田悦子委員(全国消費生活相談員協会理事長)は、生活相談センターで長期にわたり相談員を務めた。「企業が消費者の気持ちを伝える努力をしている役割を果たしたい」と抱負を語る。
 横田尤孝(ともゆき)委員(青陵法律事務所・弁護士)は、最高裁判所裁判官、検事、弁護士、千葉銀行取締役などを務める。「保護司の支援をしているが、人が立ち直り、社会に戻る時、大事なのは本人が立ち直りの意思を持っていること。日本郵政グループも大事なのは組織全体として立ち直っていこうという気持ちを持つこと。40万人の社員には家族がいる。100万人を超える人たちの生活につながっている。調査委員会の提案の実現に尽くしたい」と意見を述べた。
 委員会後に会見が開かれ、増田社長は「たいへん重たい意見をいただいた。今後は4社でどう実行するかだ。これらを受け止められる組織に変えていかなければならない。一つひとつ検討していきたい」と感想を述べた。
 通信文化新報は委員の選定基準について質問。増田社長は「金融、コンプライアンス、ガバナンス、消費者団体、法曹界の五つの分野のバックグラウンドを考えながら、委員会に時間を割いていただける方ということで引き受けていただいた」と答えた。
 さらに「かんぽ問題についてはとても良い布陣だと思うが、郵政グループは今後、成長も必要で、新商品・サービスなど実際に現場に下ろしていく上で、ビジネス的な視点も必要。ビジネスの経験者を入れる予定はないのか」と質問。
 増田社長は「今後、ビジネス系の方を入れることは考えていない。委員には、様々な企業で問題が生じ、それを克服して成長につなげていくことをそれぞれの立場で経験された方が多い。ビジネス的な意見は5人の委員から頂だいできると考えている」と述べた。
 第1回目の委員会では組織改革を中心に議論したという。委員からは「どういう会社になりたいか。トップが前面に出て、目指す姿を明確にし、直接社員に伝えることが大事」「都会の郵便局と地方の郵便局では意識にズレがある。都市部の採算性と地方の不採算という対立軸ではなく、両立できるようなメッセージの発信が必要」「郵便局が持つ信頼性が、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険に好影響を与えている。そういう歯車を回していかなければならない。それにはトップからのメッセージが重要」などの意見が出たという。
 委員会は来年5月まで2か月から3か月に1度のペースで、6回予定されている。第2回は5月下旬に開催予定だが、その間に経営層へのインタビューや郵便局視察を行う。第2回目以降は担当部門へのヒアリングも実施する。必要に応じて臨時委員会も開催する。


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