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2020年 3月9日 第7030号

【主な記事】

郵便局の信頼回復に全力
行動規範を研修し定着へ
かんぽ生命・千田社長に聞く


 かんぽ保険の不適切販売で信頼回復を託されたのが千田哲也新社長。東京サービスセンター所長として、顧客苦情処理も行う責任者を経験した。「かんぽ生命のお客さまは、郵便局のお客さま。日本郵便と協力し、郵便局の信頼回復に全力を注ぎたい」と2020年度の目標を語る。千田社長からは「グループで協力して」「スピード感を持って」といった言葉も聞かれ、「変わらなければならない」という気概を感じる。特定事案調査の完了や「かんぽ商品のスタンダードモデル」の浸透、次期中期経営計画の策定など、課題は山積している。

■信頼回復はどのようにしていくのか。
 かんぽ生命のお客さまは、郵便局のお客さま。お客さまもそう思っている。郵便局なしには成り立たないビジネスでもあり、郵便局の信頼が回復しないと、次のステップは見えてこない。
 2020年度は日本郵便としっかりタッグを組み、郵便局の信頼回復に全力を注ぎたい。お客さまへの訪問を通じて、謝罪したうえで、気づきができる活動をしていきたい。

■楽天モバイルは、基地局の開拓に苦戦しているというが、担当部署だけでなくEコマースの社員までも投入し危機を乗り越えようとしている。郵政グループの危機を脱するための協力態勢は。
 これまではかんぽ生命主導で、調査や訪問活動を行ってきたが、今後は日本郵政、日本郵便の本社や支社、現場の方々も含めて協力してもらえると思う。衣川社長にも了解してもらっている。
 私は1日も早く調査を終えたい思いでいっぱいだ。受け入れ態勢や研修もしっかりしながら、スピード感を持って対処していきたい。グループ全体で危機意識を共有し、この最大の危機を乗り越えたい。

■今回の問題が起きた要因の一つに、予定利率が下がり貯蓄性商品の魅力がなくなった中、商品のラインナップが少なかったことがあるとも言われている。業務改善計画にも「青壮年層を含めた保障ニーズに応える商品」の開発を目指すことが明記されているが。
 かんぽ生命の商品はラインナップが少ないとはいえるが、貯蓄性商品しかないかというとそうでもない。養老保険も普通養老保険だけではなく、2倍型、5倍型、10倍型がある。特約もいろいろなバリエーションが付けられる。昨年4月からは引受緩和型は、基本契約に5倍まで付けられるようになった。
 終身保険もバリエーションがあり、先進医療特約、高額な医療を保障する商品もある。医療単品はないが、ここ2~3年はかんぽ商品のラインナップも変わってきている。予定利率が下がり、お客さまに対して貯蓄性商品の魅力を説明するのが難しいとなると、保障の説明をしていかなければならない。
 商品開発は行っていかなければならないが、大事なのはお客さまのニーズを捉える力と質を伴った営業力。その両方を備えることこそがコンサルタントセールスの力となる。

■かんぽ生命は「かんぽ商品のスタンダードモデル」、日本郵便は金融コンサルティングができる社員の育成を進めているが。
 お客さまのニーズに気づき、適した商品を提案する。かんぽ商品のスタンダードモデルと金融コンサルティングは一対のもので、同じ考え方の下にある。スタンダードモデルは、量を売る力をつけるのではなく、保障の提供をしっかりしていくことだ。
 それにはモラルや心を身に着けてもらうことが必要。時間はかかると思うが、我々は変わらなければならない。行動規範をしっかり研修して、定着させていく。実践されているか、検証しながら進めていく。
 お客さまに話を聞いて人生を打ち明けていただくには、聞く力が必要。商品は、ニーズを捉える力、信用力、ブランド力があって初めて売れる。一番大事なのは信用力。今年はそこに全力を投じたい。コンサルティングにより商品をどのように売っていくか、しっかりと考えなければならない。

■次期中期経営計画に新商品開発は盛り込むのか。
 今は「これをやります」という状況ではないが、2021年度からは次期中期経営計画が始まる。ビジョンは出していかなければならない。前向き感が出るようにしなければならない。保険商品の開発は次期中経に盛り込めればと思っている。
 商品開発は与えられた環境と規制を前提に進めたい。規制緩和の流れの中で受け入れてもらえると思っている。他の生命保険会社にも「かんぽ生命も頑張ってください」と受け入れていただけるよう、我々としても競争環境を作っていきたい。

■昨年夏から12月までは営業自粛、1月から3月までは営業停止となり、営業活動ができていないが、中期経営計画で掲げた2020年度保有契約年換算保険料の数値目標の4.9兆円は達成できるのか。
 不祥事が起きる前の段階、昨年6月には4.9兆円の達成は難しいという話は出ていた。中経では、期間中に保有契約数の底打ち反転を掲げていた。予定利率も下がり、営業目標は下がっていったものの、新規契約が伸び悩む中、目標はもっと弾力的にしなければならなかったと反省している。
 昨年の営業自粛期間は営業が1割しかできていない。これからどのように這い上がるか、再生プランはどうするのか、保有契約はすぐには回復できないが、回復の基礎を作っていかなければならない。


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