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2020年 3月9日 第7030号

【主な記事】

金融関係は設定せず
[日本郵政]増田社長 2020年度の営業目標


 日本郵政の増田寛也社長は2月27日、東京大手町の本社ビルで記者会見し、2020年度は日本郵便での金融関係の営業目標を設定しない方針を示した。日本郵便は、お客さまからの信頼回復に向けたフォローアップ活動を最優先して取り組むことになる。一方、感染拡大が危惧されている新型コロナウイルス対策に関しては本社・支社の管理部門と郵便局では対策が異なることを示した上で、「郵便の業務は、必ず続けなければならないものだ」と述べ、郵便事業の社会的な意義と責務を強調。「感染した社員が本社から出た場合、郵便局等の現場から出た場合、いずれについても適切に対応することができるよう、対応策のシミュレーション等を行っており、万全の態勢で臨みたい」と述べた。

 増田社長は、営業目標を設定しないことにした理由について、「信頼回復を最優先させる考え方に基づいている。特別調査委員会をはじめ、さまざまなところで営業目標必達主義の弊害が指摘された。従って、信頼回復活動を最優先して、いろいろな研修等に取り組んでいる」と強調。
 「こうしたことを確実に行っていくことが重要であって、そのうえで信頼回復に至れば、やがて営業にもつながって来るだろうと思っている。営業目標自身は、きちんと品質を考慮すれば、あって然るべきだと考えている。従来は品質面で欠けていた側面があったと思う」と語った。
 販売再開については「今、お答えする段階ではない。大事なことは信頼回復を確実に実現していくことだ。そういった活動を続けていけば、いずれは商品販売に至るだろう。どれだけ売りなさいという目標自体がなくても、お客さまのニーズがきちんと把握できていれば商品を販売できると思う」とした。
 また「2020年度は、お客さまに状況、さらに商品等を丁寧に説明するという活動を繰り返して行い、お客さまのニーズにきちんと合うようなことであれば、販売開始をいつにするかは別として、販売するということはあると思う。目標を設定して販売を行うということはしない」と回答した。
 記者の「どういう状況になれば販売再開となるのか」との質問には、「手続き的には、販売再開等の段階に至れば、当然ながら金融庁等に報告することになる。まずは我々の中できちんと状況を把握して考えていかなければいけない。業務停止は金融庁サイドの判断であり、それ以前に会社として営業自粛をしていたことなどから、営業再開は会社としての判断であるべきだと考えている。それを誤らないようにしないと信頼回復の道を失うことになってしまう」と述べた。
 新型コロナウイルス対策について、増田社長は「2月15日、日本郵便における東京国際郵便局および成田空港で、中国向けチャーター便の運航を実施した。本日もこの後、広州へのフライトを予定している。同便も含めると、本日までに7便のチャーター便を運航して、約12万通の郵便物を中国向けに発送した」と説明。
 さらに「明日の大連へのフライト2便を含め、2月中に合計9便のチャーター便の運航を予定している(会見時点)。我々としてはお客さまからお預かりした郵便物を一刻も早くお届けしたいと考えている」とした。
 現在までのグループとしての取組みとしては、社員に対して各種感染予防策の励行(うがい、手洗い、マスク着用)や、中国湖北省・浙江省への渡航の取りやめを指示したほか、感染拡大防止のため、通勤ラッシュの時間帯を避ける時差出勤の活用、大規模な会議や出張の自粛、本社社員についてはテレワークの活用等を指示しているという。
 増田社長は「グループ全体で40万人超の社員を抱えており、感染者を出さないことが望ましいが、多人数を抱える企業グループなので、社員の中から必ず感染者が出るという前提のもと、種々のシミュレーションを行っている。感染した社員が本社から出た場合、郵便局等の現場から出た場合、いずれについても適切に対応することができるよう、対応策のシミュレーション等を行っている。引き続き、状況を注視して万全の態勢で臨みたい」と強調した。
 「本社、あるいは郵便局に感染者が出た場合、どのように対応するのか」との質問には、「本社と郵便局で対応は異なる。郵便局であっても規模感で異なる。郵便の業務は、必ず続けなければならないものだ。きちんとお届けしなければならない。お約束しているものは止められない。第一次的には保健所の指示に従うのが最優先、そのうえで絶対に止められない業務は止めないようにしたい。しかし、少しお待ちいただける業務、あるいはバックヤード業務で違う形でできるものは、的確に対応し感染を広げないようにしていく」と述べた。
 本社に関しては「どこの部局がどうなったかによって対応が異なる。その対応の最高の本部長は私になっている。その下に各社の社長がいて、そして現場の者がいる。本社や支社のような管理部門的なところで感染者が出た場合と、大きさがさまざまに異なる現場の郵便局から感染者が出た場合では、対応が変わってくる」とした。
 3事業のユニバーサルサービスについては「ユニバーサルサービスは、郵便局ネットワークの根幹に関わる話であるとともに、郵政事業あるいは郵政グループ全体のサービスの根幹に関わる話だ。ユニバーサルサービスの内容については、地域のニーズによってさまざまだと思う。過疎地域の状況については存じ上げているつもりだが、必要とされるニーズは実に多様で、これまで提供していたところが撤退してしまい、最後は役場あるいは郵便局が拠点として残っている地域も少なくない」との認識を示した。
 そして「郵便局が単に郵便と金融事業を提供するだけではなく、場合によっては、役場ですら郵便局に包括業務委託して、(拠点を)引き払っている。ユニバーサルサービスを維持することは住民からも指示されると思う。すべてを直営でやる必要はないし、直営でやる体制を取ってもいない。例えば、物販をやるのであれば、どこかと提携することなどが考えられる。サービスの中身を、地域ニーズを踏まえた上で、常に見直しながら提供するユニバーサルサービスが、地域から支持されるのではないかと思う」との考えを明らかにした。
 営業目標を設定しないことによる手数料収入とユニバーサルサービス維持への影響については、「ユニバーサルサービスの関係で言うと、今回のかんぽ生命の問題によって、金融2社からの手数料を日本郵便が確保できるか難しい状況が生じることは事実だが、それぞれの会社の中で他部門の収益があるので、その中でやりくりをして、ユニバーサルサービスを維持していくということをやっていかなければならない」と語った。
 「きちんとした対応によって、いずれは信頼回復ができれば、新しいお客さま、若い層のお客さまへの訴求効果も出てくることも考えられる。今回のことをきちんと受け止めて、一刻も早く信頼回復することに尽きると思う。ユニバーサルサービスについては、きちんと維持したうえで、サービスを提供していく」と改めて述べた。
 かんぽ問題の再発防止に向けたタスクフォースの人選と、アドバイザリー組織に関しては、「タスクフォースについては、社内的には他の事業会社から人を出してもらって、各社社長にも関わってもらうように進めている。仮称ではあるが、アドバイザリーコミッティというものも設けるということで、人選を進めているところだ。ほぼ予定通り4月頃からスタートできると思っている」とした。


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