「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

2019年 11月11日 第7013号

【主な記事】

地域、行政との連携を
地方創生フォーラム・イン北陸


 北陸地方郵便局長会(山本利郎会長)の「地方創生フォーラム・イン北陸」が11月3日、石川県金沢市のANAホリデイ・イン金沢スカイホテルで開かれた。「富山県魚津市」「石川県加賀市」「福井県永平寺町」の地方創生の取組みと郵便局との連携についての発表と意見交換が行われた。郵便局からは全国初の郵便局と地方自治体の広域包括連携協定や自治体事務の業務委託などの事例も紹介され、人口減少社会が抱える地方創生の課題について活発な議論が行われた。


 山本会長は「地方創生は自分の町さえ良ければいいというのではうまくいかない。また、変革するには、地元にしがらみや思い込みがない人を入れること。強い意志を持って成し遂げるため、本気で働く人がいなければいけない。永平寺や加賀の局長が本気でやっている姿を見ている。郵便局は148年の歴史があるが、古い中にも新しいものを取り入れていくことにより、光り輝いていきたい」とあいさつした。
 招かれた全国郵便局長会の吉城和秀理事(近畿地方会長)は「郵便局ネットワークの将来像は、本社との話し合いで方向性が出た。4500件の提案を本社に出したが進んでいない。思いつきで何かしようとしても、いろいろな規制があることが分かった。しかし『できない、無理』と言うのでは、壁は乗り越えられない。規制にも全力でぶち当たり、実現可能なものを一つひとつものにしていきたい。将来像は会員一人ひとりが議論して、実現しなければならない。全国に発信するフォーラムとして期待」と述べた。
 パネルディスカッションでは眞鍋知子・金沢大学人間社会研究域人間科学系教授をコーディネーターに、村椿晃・魚津市長、河合永充・永平寺町長、荒谷啓一・加賀市市民生活部長、潮由加子・西布施郵便局長、細野幸伸・大聖寺菅生郵便局長、鈴木清永・山王郵便局長の6人がパネラーとなり、地方創生について活発に議論した。

 魚津市 人材育成を核に
 魚津市では、平坦な土地が少なく工場の誘致は難しいというハンディを克服しようと、ゲームソフトの開発人材の育成と新産業の創出に取り組んだ。「つくるUOZUプロジェクト」を立ち上げ、廃校を利用したゲーム開発合宿や、開発したゲームを発表する「ゲームフォーラム」などを開催した。
 ゲームクリエーターの育成だけでなく、その受け皿として就職先の確保も必要なことから、魚津市は「ゲームクリエーター人材育成過程における連携協定」を10月、市内企業、県内の学校と締結した。このほか、産学官に金融機関を連携させる「魚津三太郎塾」、女性の力を活用した事例など、人材を核にした地方創生の取組みが紹介された。
 郵便局と行政の連携として紹介されたのは、6月に締結された「富山県東部の3市2町(滑川市、魚津市、黒部市、入善町、朝日町)と31郵便局との「広域包括連携協定」。広域での包括連携協定は全国初で、この取組みにチャレンジした富山県呉東地区会の潮由加子局長が発表した。
 この新たな広域連携モデルを実現するため、潮局長は3市2町の担当者や首長らに何度も説明して回った。潮局長は「支社に相談したら、前例がない、難題だと言われた。各市や町を回ると、『郵便局と連携する意義は?』『10年以上関わりがなく、郵便局に頼らなくてもできているので、今まで通りでいい』などの意見があったが、広域連携により経済が活性化することを説明して回った」と苦労話を披露した。26日間で走った距離は1040キロに及んだという。
 広域包括連携のメリットについては「これまでの包括連携協定とは違い、地域が抱える様々な問題解決に協力することになっている。観光振興や女性活躍など幅広く柔軟に対応できる。地域には共通の課題もあり、防災や災害、行方不明の高齢者を探す、3市2町の風景や特産品のオリジナルフレーム切手の発行など単独ではできないことがある」とする。今後は「これらについて自治体と協議していきたい」と抱負を述べている。

 加賀市 行政事務を受託
 加賀市は人口減少に歯止めがかからず消滅可能性都市にも入っている。その対策として子育てと教育への予算を充実させている。縁結び支援も行い、婚活イベントにより9組が結婚した。同市と郵便局とは昨年1月に包括連携協定を締結した。10月からは橋立出張所の廃止に伴い、橋立郵便局が行政事務業務を包括受託した。
 細野局長は「出張所と郵便局は100メートルほどしか離れておらず、スムーズな移行ができた。一方で住民には今までと何も変わらずできると説明していたが、取り扱いできない業務もある。法改正してもらわないと乗り越えられない。横展開していくうえで社員の負担も少なく、利便性を意識して考え改善していきたい」と述べた。細野局長は「テレビ電話を使って市内と同じサービスが受けられるようになれば…」と要望している。
 加賀市の荒谷部長は「加賀市の5つの出張所の統廃合は流れた。15ある郵便局にお願いできることがあれば、統廃合もスムーズにできると思う。いろんなことで郵便局の知恵を拝借したい」と述べている。


 永平寺町 近所タクシーを開始
 永平寺町では、郵便局と永平寺町、トヨタが連携して「近所タクシー」(志比北地区、鳴鹿山鹿地区)が11月1日から始まった。有償ボランティアが運転。将来的には郵便局が配車業務を行うことも視野に入れている。
また5GやAI、IoTなどの先端技術を活用して交通弱者やドライバー不足などの課題解決のため「永平寺町MaaS(Mobility as a Serviceの略)会議」が1月に開催された。郵便局をはじめ、地元商店や経済産業省らが参加し、意見交換が行われた。同町では今後、テレワークやコワーキングスペースなどにも取り組む計画。
 鈴木局長は「永平寺町のMaaSについて経済産業省は、行政、地元企業、地元住民が三位一体となって取り組んでいるのは永平寺が一番。その中心には地元に根付いた郵便局が核となっている」と取組みが高く評価されていることを披露した。
 河合永平寺町長は「過疎地に郵便局があるのは心強い。行政だけではできないこともあり、郵便局と連携を取りながらやっていきたい」と抱負。貨客混載にも取組みや行政事務の委託も検討したいという。


 コンサルタント機能にも期待
 意見交換で郵便局の強みについて村椿魚津市長は「郵便局はリアルタイムの地域情報に触れていることが強み。それらを行政にもつないでもらいたい。また全国にネットワークがあり、いろんな対応ケースが蓄積されている。アドバイスやコンサルタント機能にも期待したい」と述べた。
 最後に北陸地方会の上田彦哉副会長は「今回の発表は全国で先駆けたものばかり。郵便局ネットワークを維持するため、これから何をしていくべきか模索しているところではあるが、重要なのは地域、行政との連携。私たちは地域の中で仕事をしてきた。行政の手の届かないところで手伝いできればと思う。規制などの課題はあるが、住民の『必要だ』という声が大きければ物事が動いていく。行政の皆さんと手を携えていきたい」と締めくくった。


>戻る

ページTOPへ