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2019年 11月4日 第7012号

【主な記事】

顧客や社員の声を経営に
[郵政民営化委]かんぽ問題で

 第206回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が10月24日に開かれ、かんぽ生命保険の契約調査の中間報告やゆうちょ銀行の高齢者への投資信託販売に関する社内調査、土曜休配などを盛り込んだ「郵便サービスのあり方に関する検討」の取りまとめについて総務省や金融庁、郵政グループ各社にヒアリングを行った。郵政グループのコンプライアンス違反に対して、委員会からは「顧客からの苦情の分析が不十分」「顧客や社員の声が経営に届いていない」「投資信託はリスク性商品であることを販売員が十分認識していなかったのではないか」といった厳しい意見が相次いだ。

 ヒアリングには、日本郵政グループからは経営幹部が出席した。かんぽ生命保険に関して、委員からは「2018年に金融庁へ届け出た不適正募集事案は22件(日本郵政では、コンプライアンス委員会に提出された報告書で経営陣に報告)だが、中間報告の法令違反の疑いのある事案は1400件(2014年4月~2019年3月)と、ギャップがある。顧客からの苦情が正確に処理され、経営に上げていたのか」との指摘があった。
 これに対して日本郵政は「1400件の事実関係については確認しているところ。顧客からの情報分析が足りなかったと認識している。今後は分析をしっかり行い、顧客対応するとともに経営に生かしていけるようにしたい」と回答した。
 顧客の声の分析について、岩田委員長も「顧客の苦情は少しずつ減ってきているが、年間に10万件(2018年度)ある。顧客の声を十分に聞いていたのか。どうして不満が出たのか。原因分析が不十分だったのではないか。顧客の不満の声や社員の声は、新しいビジネスモデルを構築するうえで重要な材料を提供してくれる。顧客と社員の声をしっかり分析して、改善に努めてもらいたい」と要請した。
 また、研修について委員からの「フロントラインに研修を行う際、コンプライアンスを守れということも必要だが、社員をサポートし、モチベーションを上げる研修をすべき」との意見に、かんぽ生命保険は「まずは信頼回復に向けてお客さまに丁寧な対応ができる研修になる。営業再開に当たっては、社員のモチベーションが上がる研修を行いたい」と答えた。
 これに関して、岩田委員長も「お客さまの本当のニーズ、例えば人生100年時代の人生設計、資産管理をどうしていったらいいのか。日本郵政グループのトータル生活サポート企業という経営理念に金融面も加え、フルサポートする。販売員に経営理念を理解してもらうための研修をしていくことなのではないか」とコメントした。
 ゆうちょ銀行の高齢者への投資信託の販売での社内コンプライアンス違反の主な原因について、同社からは「リスク性のある商品を販売することに対して十分な準備をしてこなかった。お客さまと販売員が十分な理解をしたうえで、金融庁の言う適合性の原則・お客さまに見合ったサービスを提供する。これらを販売員が十分に認識していなかった。指導する方もその趣旨を徹底できなかった」という説明があったという。
 郵便サービスについては、委員から「速達のニーズが増えることが考えられるが、普通郵便の送達日数や速達郵便の利便性について周知徹底することが重要」という意見があった。
 総務省からは「郵便サービスの見直し後は、都市部では普通郵便と速達郵便は、送達日数に差が生じる。速達料金は1割程度値下げも検討されており、周知したい」と述べた。


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