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2019年9月30日号 第7007号 

【主な記事】

「一丸で信頼の回復を」
[日本郵便]東北でフロントラインセッション


 日本郵便は「フロントラインセッション」として率直な対話集会を開催しているが、9月19日には東北支社で行われた。「日々お客さまに接している社員一人ひとりの声を経営に活かし、本社役員等とフロントライン社員がフェイス・トゥ・フェイスで意見交換。お客さまの要望から日ごろ負担に感じている事柄に至るまで、幅広い意見交換を行い、働き方改革をはじめ各種改革につなげていく」ことが趣旨。東北支社管内の社員を中心に約200人が参加した。

 横山邦男社長が「誠実に、真摯にお客さま対応に取り組んでいる皆さん、それは金融に携わる社員だけでなく、郵便関係も含めて、そしてお客さまに一連のかんぽ営業の事案に関して深くお詫びしたい」と陳謝、「今日は率直に対話したい。不満もぶつけてほしい」と呼びかけた。
 経営を遂行する上で考えていることとして「軸は現場・現物・現実。世の中の変化のスピードは早い。経営環境の変化への対応、社会構造の変革、顧客志向の変化などに対応、お客さま、社会、時代にふさわしいか常に検証していかなければならない。このためには、現場にいる皆さんの考えや意見が重要」と述べた。
 「着任以来、企業の社会的使命を果たすことを言い続けてきた」とし、「社会との関わりなしでは、企業は生きていけない。社会的使命を果たすことは企業が存続する上で、不可欠なことであり、社会的使命の全うなくして成長はない」と強調した。
 また「2万4000の郵便局ネットワークは、我々にとっても、国にとっても、唯一無二の存在。これは相対的な価値ではなく、絶対的な価値であり、最大の強み。この郵便局の強みを活かし、郵便・貯金・保険のサービスを全国に安定的に提供することがわが社の普遍的な社会的使命」と語った。
 さらに「社会的使命には、この普遍的な社会的使命に加え、時代の要請に基づく社会的使命がある。具体的には高齢社会への対応、貯蓄から資産形成への対応、eコマースへの対応など。これらの社会的使命を踏まえ、時代と共に成長していく」との考えを示した。
 人材の重要性にも触れ、「人材なくして企業は成り立たない。理想の組織とは、社員の皆さんが目標意識を持って働くこと、そして個性のある社員が集まることで組織はより強固になる。お客さまの幸せ・社員の幸せ、これが会社の幸せにつながるといった幸せの好循環につなげていきたい」と述べた。
 そして「いろんな考え方を持った社員がおり、その社員を企業の成長に取り入れていくが、お客さまや社会への考え方は、社員と企業は同じ方向感であるべき」とし、「現在は大変な難局。しかしお客さま本位の原点に戻れば、難局は乗り越えられる。ほとんどの社員はお客さま本位を実践。全社員が一丸となって、信頼の回復に向け、真摯に誠実に、そして郵便局で働いているという誇りを持ってお客さまに向き合ってほしい」と訴えた。
 参加した社員からは「情報は新聞などが先。統制が取れていない」「郵便局は目標を達成することだけに汲々となっている職場になってしまった。どのように変えていくのか」「段階的に営業再開ということだが、どういった状況なのか」「働いている社員も仕事に希望が持てないような職場になっているのではないか。まじめにやっている社員が評価されていない現状もある」などの意見が出された。
 最後に横山社長は「私は中途採用。でも郵便局が好き。郵便局の素晴らしさは認識している。こういう苦しい時こそお客さまと対話しよう。信頼してくれるお客さまはたくさんいる。みんなで、一丸となってやっていこう」と改めて呼びかけた。

【フロントラインセッションでの主なやり取り】

■ほとんどの情報は新聞などが先。統制が取れていない。何とかしてほしい。
 本社からの情報送付が後手後手で申し訳ない。ただ、公の情報でないこともある。会社として決めたことは社員の皆さんに最優先でお知らせしていく。

■郵便局を変えると言われたが、並大抵のことではない。今までも変えるチャンスはあったのに変わってこなかった。今は目標を達成することだけに汲々となっている職場になってしまった。どのように変えていくのか。
 日本郵便は他のどんな企業よりも巨大。40万人を超える社員が働いている。変革するのは難しいが、私が着任して3年。この間、郵便・物流の分野は徐々にではあるが変革してきた。これからも変革していきたい。
 目標に関しては、立地条件やお客さまの状況を理解した上で設定することが必要。右肩上がり一辺倒では無理がある。我々は金融コンサル。お客さまの預かり総資産で企業としての成長をしていかなければならない。

■段階的に営業の再開ということだが、これについてはどういった状況なのか。
 18.3万件についてはかんぽで調査、中間報告も出す予定。全件調査の手紙も今週中には出し終える。こうした状況で、段階的に営業を再開できるか現在検討している。やみくもに全て再開というわけではない。

■社長の考え方が社員に届くまでに歪曲され実効性のないものになってしまう。その原因の一つはマネジメントにあると思う。これを変えてほしい。
 マネジメントに実効性がなければ、社員もお客さまも不幸。マネジメントはしっかり検証して、変えていきたい。

■契約社員を応募しても中々集まらない。採用しても、営業を含めて色々なことをやらなければならないので、すぐ辞めてしまう。働いている社員も仕事に希望が持てないような職場になっているのではないかと思う。また、まじめにやっている社員が評価されていない現状もある。
 そうした状況は、局長が部下をしっかり把握していないということ。また、評価がやってもやらなくても変わらないという状況であれば、組織の活性化は実現しない。みんなが意欲を持って生き生きと働ける職場に変えていきたい。

■今までは、お客さま本位を目指してきたが、これからはお客さま満足度の向上を目指すべきではないか。
 お客さまの満足度については、その通りだと思う。環境が変わっても昔と同様の手法で同じものを売っていた。お客さまと信頼関係を逆手に取ったようなやり方もあったのではないかと思う。原点に戻って考え直したい。

■今回の件でお客さまを訪問させていただいた時でも、震災の時に郵便局に助けてもらったというお客さまもおり、そうしたお客さまの中には我々のことを心配してくれる方もいらした。ありがたいこと。
 素晴らしいお客さま。郵便局の今までの活動がいかに素晴らしいものだったかが分かるもの。お客さまの信頼に甘えることなく頑張ってほしい。


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