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2019年9月23日 第7006号

【主な記事】

「お客さま本位の原点に」
[日本郵便]東海でフロントラインセッション


 日本郵便の経営陣と社員との率直な対話集会「フロントラインセッション」が、東海支社でも9月11日に開催された。「日々お客さまに接している社員一人ひとりの声を経営に活かすため、本社役員等とフロントライン社員が直接、お客さまの要望から日ごろ負担に感じている事柄まで意見を交換、働き方改革をはじめ各種改革につなげていく」ことが趣旨。今回は米澤友宏上級副社長が東海支社管内の社員を中心に対話、約140人が参加した。

 米澤副社長は、まず「一連のかんぽ営業の事案に関して深くお詫びする。日々のお客さまの信頼回復に向けた皆さん方の努力に感謝するとともに、深くお詫びしたい」と陳謝、「今日は率直に意見をうかがいたい」と呼びかけた。
 そして、横山邦男社長の経営の理念でもあるとして「経営の軸は現場・現物・現実。経営を成長させていく上では、経営環境の変化への対応、社会構造の変革、顧客志向の変化といった様々な視点が必要。これは、現場にいる皆さんが一番感じている。だからこそ、皆さんの考えや意見が重要」と強調した。
 さらに「外に目を向けて、商品サービス、ルールが世の中に対応できているかどうか、世の中のスピードに対応できているかどうかを常に見極めていることが必要」と改めて経営の在り方についての考えを示した。
 また「企業は社会との関わりなしでは生きていけない。社会的使命を果たすことは企業が存続する上で、不可欠なことであり、社会的使命の全うなくして成長はない」と語った。
 2万4000の郵便局ネットワークについても「我々にとっても、日本国にとっても、唯一無二の存在。これは相対的な価値ではなく、絶対的な価値であり、最大の強み。この強みに磨きをかけ、郵便・貯金・保険のサービスを全国に安定的に提供することが日本郵便の普遍的な社会的使命」と郵便局の意義を述べた。
 これについては「普遍的社会的使命に加え、時代の要請に基づく社会的使命がある。時代の要請に基づく社会的使命とは、金融の分野でいえば、貯蓄から資産形成へといった流れであり、物流の分野では、eコマースの発展といったことである」とした。
 人材の育成についても「人材なくして企業は成り立たない。理想の組織とは、社員の皆さんが目標意識を持って働くこと、そして個性のある社員が集まることで組織はより強固になる。お客さまの幸せ・社員の幸せ、これが会社の発展につながる」と語った。
 最後に「現在は非常に困難な状況。お客さま本位の原点に立ち戻って、立て直しを図っていきたい。お客さまと最前線で接する皆さんの力を借りて全力で取り組んでいきたい」と訴えた。
 参加した社員からは「重要な情報がお客さまやメディアから知らされる。社員として信頼されていないのではないか」「調査も終わらない中で、10月1日の再開は納得がいかない」「郵便局は3事業を行っているが、全ての業務に精通して対応するのは難しい状況、金融機関などのように専門の人を置くことはできないのか」との質問があった。
 また「新入社員が数年で辞めていく状況。このような状況をどう考えているのか」「期間雇用社員を募集しても人が集まらない。有効な手段はないのか。2万4000のネットワークについての考えは」などの意見も出された。

【フロントラインセッションでの主なやり取り】
■会社の重要な情報がお客さまやメディアから知らされる。社員として信頼されていないのではないか。
 本社からの情報の送付が後手後手で申し訳ない。早く正常な状態に戻し、まず社員の皆さんに最優先で情報が届くようにしたい。

■調査も終わらない中で、10月1日の再開は納得がいかない。納得いく説明が欲しい。かんぽだけでなく貯金などについてはどうなのか。
 まず、今でもかんぽは営業している。ユニバーサルサービスを掲げている以上、お客さまからご要望があればしっかり対応していくもの。今は、郵便局から積極的にお声掛けすることを控えるということ。
 再開にあたっても、一律一斉に10月1日から、今回の事案が発生する前にいきなり戻るということではなく、調査に支障のない範囲と段階的にということである。
 かんぽ以外の商品については、商品毎に委託元とも相談しながら順次再開していくことになる。

■郵便局では3事業を行っているが、現状ではその全ての業務に精通してお客さまに対応するのは非常に難しい状況、金融機関などのように専門の人を置いて対応するようなことはできないのか。
 以前であれば3事業全てについて対応することは可能だった。しかし、現在ではお客さまから求められるサービス水準が高くなっており、3事業は必ずやっていく前提の中で、全てについて同じ水準で対応することは非常に困難。サービス提供の頻度などに応じて、商品サービスのメニューを整理していく必要があると考えている。
 また、専門家の人員の配置については、郵便局という数多くの拠点を持つこともあり個々に専門家を置くということは難しい。

■新入社員が数年で辞めていく状況。こんな状況をどう考えているのか。
 金融渉外の業務は非常にストレスが強い職場。離職率もなべて高い。せっかく郵便局を選んで入社してもらったからには、是非続けて欲しい。
辞めることは、本人や同僚、そして会社にとっても不幸なこと。若い社員に寄り添って考えていきたい。

■期間雇用社員を募集しても、なかなか人も集まらない。人手不足と言っているだけでなく、もっと有効な手段はないのか。また、2万4000のネットワークについてはどう考えるのか。
 人手不足は深刻な状況。地域差はあるものの、少子高齢化が進むので、今後はますますそうした状況が顕著になってくる。現在、土曜休配などの制度改正を要望して、今後とも安定的にユニバーサルサービスを提供していくための手立てを講じている。
 2万4000という郵便局の拠点については、地域に根ざしている、地域に愛されているという、いわゆる郵便局ならではの特性もある。このネットワークの維持は、国民からの強い要望であると認識しており、維持する方針は揺るがないもの。

■この事案が発生してから、お客さまのところへ足を運んだ。何軒回っても私ではダメ、局長でないとダメと感じた。私は正社員になって9年目。今でも郵便局が大好き。この会社をなくさないで欲しい。
 つらいことも多かったと思う。そういった活動自身が郵便局への信頼につながるのだと思う。心から感謝したい。

■郵便局でお客さまの名前が記された名簿を見るたびに、お客さま一人ひとりの顔が浮かぶ。早くお客さまのところへ訪問させていただいたり、電話で連絡していきたい。
 お客さまの名簿からお客さま一人ひとりの顔が浮かぶというのは、正にお客さま本位の活動をやってこられた証。非常に歯がゆい思いをされたのであろう。心から感謝したい。


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