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第6736・6737合併号

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陸前高田市 米崎郵便局が待望の新築オープン
2年7か月の仮設を経て

 岩手県陸前高田市の米崎郵便局が7月14日、仮設局舎からショッピングセンター「イオンスーパーセンター陸前高田店」(本社・盛岡市)の敷地内に移転し新築オープンした。黄川田正洋局長は「社員一同、感謝の気持ちを忘れず地域の期待に沿えるよう精進していく」と決意を語った。



 開局に先立ち、全員で東日本大震災の犠牲となった人々に対し黙祷。
 東北支社の渡辺満郵便局本部長は「東北では、まだ再開できていない郵便局が47、仮設が23局。そうした中で、米崎局のオープンは地域をはじめとした皆さんのおかげ。ショッピングセンターに開局するのは東北で初の試み。地域の皆さんの利便性やサービス向上に最も適したところだと思う。地域の復興へ向けた新たなシンボルとなり、再開できていない局への勇気と希望になることを願う」と語った。
 陸前高田市の戸羽太市長は「イオンスーパーセンターでの開局は、高齢化社会で被災地の市民にとり非常に利便性の高いものとなるだろう。新しい街をつくっていく上でも重要であり、ここがモデルになるといい。待望の郵便局、地域に貢献していってもらいたい」、イオンスーパーセンターの東尾啓央社長は「米崎郵便局にテナントとして入っていただいた。地域に密着した小売業を営む者として、黄川田局長と相談し相互利用を促進する。郵便局と一緒に市のインフラ整備と復興に協力していきたい」と祝辞。
 黄川田局長は「大震災で局舎が流失、平成23年11月25日から仮設で業務を行ってきた。2年7か月ぶりに新たな歩みを開始する。地域と関係の皆さんの協力があってこそ。社員一同、感謝の気持ちを忘れず地域の期待に沿えるよう精進していく。これまで以上のご愛顧と陸前高田の1日も早い復興を」と述べた。
 戸羽市長、東尾社長、米崎地区コミュニティー推進協議会の新沼幸男会長、熊谷恭二元米崎局長、渡辺本部長、岩手県南部地区連絡会の加藤隆一統括局長(曽慶)、黄川田局長、陸前高田市のマスコットキャラクター「たかたのゆめちゃん」がテープカット。畑井進ゆうちょ銀行盛岡店長、小野木喜恵子かんぽ生命盛岡支店長、櫻井清幸陸前高田局長、気仙第一・第二部会の局長ら全員で開局を祝った。
 9時から営業開始。ゆうパックの差し出しや切手の購入などに来局した人は「本局舎ができて便利になった。駐車場も広いし助かる」(男性)、「立派になって良かった。津波で流される前からの長い付き合い。これからも気軽に利用したい」(女性)などと話していた。
 加藤統括局長は「連絡会では多くの局が被災した。仮設は設備も十分ではなく、夏は暑く冬は寒い。社員に良い環境で仕事をしてもらいたいと常々思ってきたので、今日のオープンを素直に喜んでいる」と語り、地元の竹駒局で復興祈念ポストを見守る松野まき局長は「利便性を考えると早く本局でとの思いは強いが、難しい面もある。今は地域と共に地道に歩んでいくことが大事。復興祈念ポストはとても好評」、広田局の米谷一範局長は「同じ仮設でやってきたから自分のことのようにうれしい。新たな一歩を踏み出したことは、地域や仮設で頑張る仲間にとっても励みになる」と思いを述べた。
米崎郵便局はJR大船渡線の脇ノ沢駅前にあったが、津波に流され約8か月後から仮設局舎で業務を続けてきた。「昭和17年の開局だから震災翌年には70周年を迎える予定だった。仮設ができたのは市内の被災局でも一番遅かった」と黄川田局長。
 旧局舎と国道を挟んで目と鼻の先にある新局舎は、床面積が約143平方メートル、所在地は〒029-2206 陸前高田市米崎町川崎226/電話0192-55-5474。地元の書家による「感謝」「ありがとう」の書が来局者を迎える。営業時間は郵便・物販が9~17時、貯金・保険が9~16時(共に平日)、ATMは9~21時(平日、土日・祝日)。
旧中心市街地から大船渡方面に約2キロの国道45号線沿いにあるイオンスーパーセンター陸前高田店は、大震災で浸水した約2ヘクタールの農地を転用、308台収容の駐車場もある。
黄川田局長の座右の銘は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」だ。「地域の皆さんに利用してもらわないと郵便局は成り立たない。我々脇役が主役の地域を盛り立てていく。社員と力を合わせ頑張っていきたい」と力を込める。
リアス式海岸が続く三陸海岸の南寄りにある陸前高田市には、日本の渚百選の風光明媚な高田松原があったが、23年3月11日の東日本大震災で10メートルを超す大津波が押し寄せ市の中心部は壊滅、7割以上の世帯が被害を受けた。死者・行方不明者は合わせて1800人を超えるという。
 高田松原で唯一残った高さ27メートル「奇跡の一本松」(レプリカ)の近くには、旧市街地を10メートルかさ上げするのに必要な土を山から運び出す全長約3キロのベルトコンベア「希望のかけ橋」が架けられている。
23年の暮れ、復興祈念ポスト設置の取材に訪れた時に比べると確かに風景は変わり、新市街地づくりの作業が進行しているように思えるものの、33の郵便局が被災した岩手県で、移転・新築になったのは米崎局を含め3局(他は大船渡市の細浦局と大船渡駅前局)。12局は未だ仮設のままだ。土地確保など難しい条件もあるようだが、1日も早い新築局舎での再開が待たれる。


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