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2019年9月2日 第7003号

【主な記事】

社員と率直な意見交換
日本郵便「フロントラインセッション」


 日本郵便は「フロントラインセッション」として率直な対話集会を8月23日に本社で開催した。「フロントラインセッション」は日々お客さまに接している社員一人ひとりの声を経営に活かし、本社役員等とフロントライン社員がフェイス・トゥ・フェイスで意見交換することが趣旨。「お客さまの要望から日ごろ負担に感じている事柄に至るまで、幅広い意見交換を行い、働き方改革をはじめ各種改革につなげていくもの」としている。

 今回は関東、東京、南関東支社管内の社員を対象に開催、約400人が参加した。
 出席者からの意見に横山邦男社長が「直接意見交換を行う場は以前も設けていたが、(かんぽ問題の)報道後は今回が初めてで、様々な内容をぶつけてほしい。私一人で皆さんと向き合う場」と対応した。「フロントラインセッション」は、引き続き他の支社管内でも実施する予定となっている。
 まず、横山社長が「誠実にお客さま対応に取り組んでいる皆さん、それは金融に携わる社員だけでなく郵便関係も含めて、一連のかんぽ営業の事案に関して深くお詫びしたい」と陳謝した。
 経営を遂行する上で考えていることとして「軸は現場・現物・現実。成長には環境や社会構造、テクノロジー、顧客志向、自然環境などの変化への対応が必要。状況変化を一番感じている現場の考えや意見が重要」と改めて強調した。
 また「企業の社会的使命を果たすこと。2万4千の郵便局ネットワークは、唯一無二の存在で絶対的な価値。この最大の強みを活かし、郵便・貯金・保険のサービスを全国に安定的に提供することが社会的使命」とした。
 さらに「人材無くして企業は成り立たない。社員が目標意識を持って働き、個性のある社員の集まりが組織を強くしていく」と経営についての考えを述べた。
 かんぽの問題については「転換制度がなく二重払いの問題が発生したが、準備を進めている。営業目標については個々のマーケットでの顧客構造をしっかり踏まえたものになっていなかったことを反省」とし、「創業以来の抜本的な見直しを図るときである。真心を届けてきたお客さまに想いをぶつけ、郵便局ファンづくりをお願いしたい」と呼びかけた。
 参加した社員からは「現場に直接来て実情を見てほしい」「管理者のマネジメントの発揮が必要」「現場は本社や支社の指示に従っているが、本社・支社は指示した内容のプロセスを検討しているのか」「かんぽの問題は昨年に一部報道があったときに対策を行うべきだった」などの意見が出された。

【「フロントラインセッション」での主なやり取り】

■ES調査、各種研修では本音の発言ができない。社長には直接、郵便局に来て話を聞いてほしい。
 今日は支社の担当者も本社の担当者もいないため、安心して話をしてほしい。

■若手の人材育成を今後どうするのか。この会社で働いて良かったと思える職場づくりの施策を検討・実施する部署を設立してはどうか。その部署には、現場をよく把握している人材を登用することで、本社との風通しを良くできると思う。
 若い人材をどう育てていくか、現時点では明確な指示は出していないが、新入社員に対しては目標は不要だと思っている。現場と本社との連絡体制については、良い提言だと思うので考えていきたい。

■かんぽに関する営業手当について、補填するという報道があった。しっかり補填してもらえるのか。また営業の再開はいつか。
 渉外社員の基本給の補填に関しては組合と調整中。販売再開については、1日も早く行いたいが、再発防止体制を構築してから開始する。

■少数精鋭でいいので、販売実力がある社員の採用について、コストをかけて行ってほしい。日本郵便として人材の採用にコストをかける必要があるのではないか。
 私自身としては、現場・支社・本社関係なく、意欲のある社員と一緒に働きたい。現在、採用手法もどのような人材をどのように採用していくか、見直しをしている。報酬は仕事の厳しさ、やりがいに応じたものが理想。ビジネス全体を見直ししている中で、皆さんと柔軟に話し合い、対応していく。

■「不適正」と名の付く事案が続いている。現場は本社や支社の指示に従っているが、本社・支社は指示した内容のプロセスを検討していないのではないか。このため、各施策のプロセスの検証を行い、それを支社も現場も共有すること、そしてモデル局を選定するなどして実施してはどうか。
 本社として現状に迅速に対応していくことが不得意と感じている。保険に関しては、以前は実績数字だけで表彰し中身を検証できていなかった事例もあったため、最近は表彰前に実績数字の根拠を検証して表彰を実施。保険だけでなく、全ビジネスにおいてこのような検証は必要であり、プロセスの審査を取り入れていきたい。

■営業自粛となっている今、お客さまとの信頼を深めるいい機会と捉えて取り組んでいくが、自粛になって何もしなくてもいいと思っている社員もいる。こういった状況を打開するためには、管理者の強力なマネジメントの発揮が必要だが、それが十分には発揮できない管理者の改革が必要。
 管理者のマネジメントができていなければ、指導をしていく。今後は、お客さまの変化に合わせて、本当にお客さまにとってふさわしい提案をできるよう社員育成をしていく。

■今回のフロントラインセッションは時間が短かった。あいさつの時間も長かったし、人数の都合もあるだろうが、発言の機会を多くしてほしい。この場で出た意見は、何らかの形でフィードバックすると言っていたが、単なるポーズではないのか。社長は現場が変わっているという手ごたえを感じていると言っていたが、現場ではそのような感覚はない。
 今日は皆さんに伝えたい思いがあり、お話させていただいた。今回の開催方法については、同じ会社として全事業の話を聞く場もあってもいいのではないかと思い、こうした形にした。また、今回の内容については、フィードバックではなく、経営に反映させる。

■かんぽの問題は、昨年一部報道があった時に、しっかりした対策を行うべきだったのではないか。現場では、推進管理ありきで、お客さま本位の営業活動はできていない。推進が上がらなければ、追いつめられるので、どうしてもお客さま本位ではなく、自分本位の営業活動になってしまった。社員と管理者が一体となって、こうした体制を改める対策を真剣に考え、取り組んでいく必要がある。
 一部の社員がお客さま本位ではなく、自分本位の営業をしており、その社員を本社が褒めるので、悪循環になっていた。2年前より改善を行い、実施していた最中であった。目標や推進管理の方法についても変えていき、お客さまと長年のお付き合いができる、それを評価するような企業風土に変えていく。
=2面に横山社長のあいさつ要旨=


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