「通信文化新報」特集記事詳細

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2019年8月26日 第7002号

【主な記事】

公的使命を担う郵政事業
柘植芳文参議院議員インタビュー②

60万票の期待に応える

■前回(2013年)の42万9002票を大きく超える60万189票という得票でした。たいへん大きな数字です。

 60万を超したのは、本当に夢みたいな数字ですよ。一時ある議員の方から70万は取れるのではと言われました。本当にしっかりした形で選挙に取り組めば、郵政の組織は70万、80万を得る力はあると思いますが、素人の皆さんが手弁当でやっていますからね。
 選対本部も初めての人ばかりですから、それでこれだけの票が取れたということは非常に素晴らしいことと感激しています。
 60万という数にもう一つ大きな意味があるのは、当選の中では個人票としては単独で1位だということです。政治は数というのはものすごいウエイトを占めていますので、目標を大きくクリアして成果が出たということは、自分たちがやってきた活動が間違っていなかったという会員の皆さんの強い思いにも、大きくつながっていきます。 日本郵政グループ全体としても、やはり自分たちの郵政事業というのが、国民利用者から高く評価されていることの表れにもなり、意義があります。

■改めて後援会、支援者の皆さん、さらに郵便局長の皆さんにメッセージをお願いします。

 局長の皆さんはもちろん、夫人会、OB、日本郵政グループの方々、すべての皆さんが一体的に本当に一生懸命になってやっていただいた成果だと思っています。日本郵政グループで働く皆さん、関係する方々は大きな自信と誇りを持っていただきたいと思います。 国民から与えられた郵政事業に対する勤務評定だとも思います。私たちが行ってきた事業は、まだまだ課題は多くありますが、広く世の中に認知をされていることの評価につながります。
 もう一つは60万を超す票が大きいことは、自民党の中で旧来以上に日本郵政グループとの信頼関係が深まったということだと思います。これからの郵政事業の様々な改革を進めるときに大きな力になり得ると思っています。
 今回の一つの特徴としては、大半の候補者は票を落としていますが、そういう中にあって前回私にいただいたより大きく約17万も伸ばしていることが、非常に大きな点です。徳茂先生の時と比べても約7万くらい伸ばしており、これはやはり大きな意味を持つと思います。

■今回の得票は政治的活動をする上での大きな力になりますね。

 絶対になりますよ。また、そうさせなければいけません。これは私の今後の活動の原動力となります。60万超も集めていただいた方々の期待にしっかりと応え、責任を果たしていかなければなりません。改めて気の引き締まる思いです。

郵便局ネットワークを維持

■1期目のとき、国会に出られて郵政は多くの政治課題の一つに過ぎないと感じたと話されていました。現在は郵政に関する理解度も深まってきているのではないでしょうか。

 郵政事業の重要性を否定する先生は一人もいませんが、郵政事業というパッケージに入れると政策的に様々な議論が出ます。しかし、一定の枠をはめてはいますが、郵活連は260人を超える大きな勢力になっています。郵政事業に対する理解は深まっていると思っています。
 ただ、6年間やってみて、外から見た政治の世界にあって民営化以降の郵政事業の理解度というのは、こんなに低いのかと思ったことも事実です。
 民営化されて今日に至っていますが、国民にかつてあの時に約束したサービスはもっと良くなるといったことは、本当に担保されているのかということなど、政治はしっかり検証する責任があります。
 事業形態は果たして適切か、法律の施行や推進状況などをチェックする責任です。国の事業から民営化しましたが、その問題もこれから大いに問うていこうと思っています。国に戻すというのではなく、国民生活の利便性を高める法律の運用や解釈により郵政事業の改革を前に進めなくてはなりません。しっかり対応していきたいと思います。

■改正郵政民営化法で、郵政事業は郵便局を通じて3事業一体のユニバーサルサービスを提供するということになりました。そうした法律の趣旨に沿っているものになっていますか。

 郵政事業の難しいところですね。民営化されたときに郵便だけがユニバーサルサービスを提供して、金融は事実上ユニバーサルサービスを外れました。当時から、自民党の中でも金融2社もユニバーサルサービスとして提供すべきだとの意見はあったのです。改正郵政民営化法では、自民党から提案があり、金融も入れるという形になったのです。国が日本郵政グループにユニバーサルサービスの責務を課した意味は、非常に大きいです。
 しかし、郵政で働く皆さんも国民の皆さんもそうですが、国営時の郵政事業はユニバーサルサービスそのものでしたので、旧来と一緒だと理解している方が多く見えます。旧民営化法でなくなったユニバーサルサービスが改正郵政民営化法で復活したという意味を真摯に受け止めることです。
 郵便局を介して3事業を生活の基礎的インフラとして、ユニバーサルサービス商品として提供することは、国が課した大きな責務です。
 民営化された郵政事業に課した意味は、旧来の国の管理下でのユニバーサルサービスとは建て付けが違うのです。どういう形で国がユニバーサルサービスのコストを担保し国民に提供するか、たいへん大事なことなのです。中にいると、ずっとやってきたことの延長上のようなものですから、当たり前だと思ってしまうのです。だから、ユニバーサルサービスを提供するにおいて、様々な不条理なことが政治の場で議論されてこなかったし、会社の方もそのことを提案しなかったのです。
 一つにはユニバーサルサービスにはコストがかかりますが、この構図の中では日本郵便が簡易局を合わせ2万4000のネットワークを維持するということが大事なのです。郵便局を介してユニバーサルサービスの商品を提供するということになっていますので、郵便局ネットワークの現行水準の維持が法的にも担保されていますが、日本郵便の経営安定は極めて重要であり、様々な郵便事業に対する上乗せ規制は本当に事業収益のためになっているのか、国が課した責任があるので的確に対応してもらいたいということです。
 金融2社のゆうちょ銀行、かんぽ生命に、ダイレクトにはユニバーサルサービス義務はかかってはいませんが、どういう形でユニバーサルサービスに協力をしなければならないかということの意味合いもよく分かっていません。こういう問題は、特に限度額引上げの仕上げの段階などになると、金融2社の独自の判断でいいのではといった話になりますが、これは全く違います。
 金融2社の株式の売却も、様々な規制の中で日本郵便が安定的に郵便局ネットワークを維持できる体制がとれなかったら、売ってはいけないということに法律ではなっています。にもかかわらず、安易に株を売れ、特にマスコミ関係は早く株を売って完全民営化にしなければいけないなどと言います。こうしたことが、ごっちゃに議論されていることが難しいところです。
 昨年に成立した交付金制度は非常に意義があり、国が関与しながら第3者機関を通じて、日本郵便のネットワークを維持するという仕組みに基本的にはなっています。ユニバーサルサービスにも関係しますが、主たるところは郵便局ネットワークを維持するところです。そこに国が関与していることが、言葉を変えるとまた国営に戻ったのではないかと言う人もあり、郵政事業の難しさを痛感しています。

新しいビジネスモデル確立を

■1期目は郵活連や特命委の立ち上げ、ゆうちょ・かんぽの限度額の引上げ、交付金制度の創設など大きな成果をあげられました。苦労も多かったのではないでしょうか。

 郵活連は最初は78人、参院では20人くらいでした。私はとにかく議連の仲間を多くしなければいけない、郵政事業を分かってくれる人をたくさん作らなければいけないと、いろいろとお願いして回りました。2年間くらいは、そのことに集中してやらざるを得ませんでした。党の中でしっかり理解を広げることだと幹事長室にも入れていただき、幹部の方々との人脈をいかに作っていくか、組織の存在感をしっかり理解してもらうということでは、確かに一つの大きな苦労はありましたが全特組織のご理解と行動により大きな成果があったと確信しています。
 いま一つは限度額の問題でもそうですが、法案を作っている当初はそんなに難しい問題とは思わなかったです。しかし、多くの与党の先生に根回しをし、頭を下げて回って理解してもらえないと通らないことはよく勉強させられました。
 全特の時は議員会館に行ってお願いしますと頭を下げればよく、比較的、気が楽と言えばおかしいのですが、今度は主体的に法案を通さなければいけません。より多くの先生方と話をして人間関係を作ることです。しょせん、政治の世界も人間関係が大切です。あいつは嫌いとか、好きとかいって付き合っていれば楽ですよ。立場が違っても、どんなに自分が罵倒されても、郵政事業のためにという一つの果実を得るには、土下座をしてまでも頭を下げて協力してもらいたいという思いでやってきたことは事実です。
 全特という組織でも、多種多様な局長の皆さんがいて、その人たちも全部に協力してもらわないと組織をまとめていけないというところで育ってきたことも良い経験になりました。

■2期目となります。まだ郵政事業の課題は多いですが、主に取り組まれることは。

 2期目の最初の仕事は郵便法の改正です。更にこれを機として様々なことについての上乗せ規制を撤廃したいと思います。郵便法は、もう少しシンプルにしたいと思います。物流事業のような側面も強く、そこに対応して営業体制も再構築できるようにしたいと考えています。
 これは経営者の問題で、あまり立ち入ってはいけませんが、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のビジネスモデルは、今のままで本当にいいのかといった課題があります。民営化になって何が変わってきているのかというと、何も変わってはいないのではないかと思います。このビジネスモデルを変えていかないと、将来展望が見えてきません。経営が着手していないし、方向性ができていないことに非常に危機感を持っています。
 3社の株式が売り出されていますが、いずれも上向いていません。なぜかと言うと企業の魅力がないからです。現場で働く方々には罪はありません。責任は経営者です。新しいビジネスモデルをしっかり作って、市場に対して将来展望のあるメッセージを発信していないからです。
 国会議員は選挙で国民の皆さんに審判していただきますが、株価は会社の評価、経営者にとっては勤務評定です。これからの大きな課題ですが、なぜ評価されないのかなどしっかりと意見を交換していきたいと思います。
 郵政事業は3事業以外の新たな分野へ果敢に挑戦することが強く求められています。

■日本郵政グループの一体性について、もっと強化が必要との指摘があります。

 旧民営化法のときは5社体制でした。そのときの法律の建て付けというものは、主たる目的として5社が自由に独立を目指すということになっていました。グループという言葉、各社が協力してシナジー効果を発揮してということもなく、だいたい郵便局という文字が法律の中にないのですから。そういう中でスタートし、民間の経営者が入ってきました。そうした考えが、改正郵政民営化法になって大きく変わったにもかかわらず、まだ変わっていないところに一体感ができていないということです。
 改正郵政民営化法が成立したときに、日本郵政の齋藤次郎社長、その後に就任した坂篤郎社長に、とにかく金融2社、そして日本郵便に今回の法律の趣旨はどこにあるか、日本郵政グループとして一体感を出すことが最も大事だ、そのためには旧民営化法の趣旨から早く脱却してもらいたい、このことをホールディングの社長としてぜひやって欲しいとお願いしました。
 これがまだできていないことは否めません。あるときは民間会社になったんだからと息巻いて話されますが、ホールディング会社ということを理解しているのか、昔の郵政省のような思想でまだやっているのか、よく分からない面があります。ゆうちょ銀行も経営が非常に苦しいと話されますが、だったら身内に日本郵便という大きな会社がある、そことどのような連携を深め、ビジネスとして日本郵便を介して稼げる仕組みはあるではないかということに対して、意識がなかなか向かないことに寂しい思いです。
 当面、やるべきことは、一体感を醸し出すことに経営者の方々に取り組んでもらいたいですね。今回のかんぽの契約問題も、不適切なことはしっかりとわきまえながら、解決に向けていい機会にしなければいけません。

日本郵便はグループの要

■かんぽの契約問題ですが、どうのように捉えられていますか。

 かんぽの契約問題は、出てきた事案はこれは絶対的にだめで、何を言っても通りません。しかし、日本郵政グループで長く現場で仕事をしてきましたから、会社の風土というのはよく分かります。
 どこの社会でもそうですが、やはり、頑張る社員とちょっと力のないやらない社員とのグループがあり、かんぽの渉外社員も例外ではありません。かんぽの販売の仕組みが何も変わっていないことです。
 日本郵便も問題ですが、委託元としてかんぽ生命も使命感が足りません。民間のコンビニも委託と代理店ですが、委託元は自社商品がどういうように店舗の中で売って、収益を上げてもらえるか、様々な企画もして、もちろん商品開発、店の陳列の場所、宣伝の仕方、社員、オーナーに対する教育・研修、そういうことを全て委託元がお願いをしています。
 かんぽ生命と日本郵便の委託、代理の関係で、日本郵便は旧来の販売システムでやってきて、かんぽ生命が売れるために今日まで何をしてきたのかというと、そこに問題があったのではないかと思います。そういう問題も含めて解決していかないと、意味がないだろうと思っています。かんぽ生命だけでなく、ゆうちょ銀行とも関連します。
 委託、代理の関係にもかかわらず、郵便局では外観的には何も変わっておらず営業がなされています。世の中の方々は何も変わっていないと思いますが、体系は大いに変わっています。日本郵便が全部やってくれるからいい、手数料を払うから売れと、基本的な姿勢はそうだと思いますよ。かんぽ生命が現行の商品開発で、どれだけ政治的に活動し実現に努力してきたか、あるいは限度額の問題でもどうやって少しでも上げようと努力したか、もちろん対アメリカとの関係もあって難しいことはよく分かりますが、経営が問われます。
 かんぽ生命に郵政省のときから残っている方々は、今回の事案のようなことについては熟知しているはずです。にもかかわらず、例えば研修体制とか営業や業務の関係も、どれだけ代理店である日本郵便に資金を援助してフォローをしてきたか、これもないと言ってもいいでしょう。起きるべくしてと言っては語弊がありますが、今回の問題も責任が双方にあるのは間違いありませんが、最も問われなければならないのは、旧来からの仕組みでずっとやってきたことです。
 また、ホールディング会社としての一体感も検証すべきと考えます。郵政省のときもそうでしたが、様々な通達を山ほど発信する、それでこれだけ指導したから問題が起きたのは現場の責任だという形で処理してきているのです。仕組み、制度についての責任をしっかり検証しないと問題は片付きません。ノルマの目標をなくすとかいう程度では解決しません。
 日本郵便として対処しなければいけない問題、かんぽ生命として対処しなければいけない問題、委託代理店の問題、かんぽ生命として何を怠っていたか、さらにホールディングとしての日本郵政が、何を調整、何を問題点として解決に加わってきたかということも問われなければなりません。
 そういうことと合わせて、民営化の仕組み全体として急ごしらえで5年間やり、改正郵政民営化法で変わったこと、法体系上の問題などは政治がしっかり対応すべきです。ただし、今やるべきことは不利益を与えたお客さまに対応策を練り、不利益なことがあったら見直すことを行わなければいけません。
 いい機会として全ての作業は郵政グループ全体としてやるべきだと思っています。しかしながら日本郵便が販売したことは事実であり、ここでしっかり対応することです。委託元であるかんぽ生命の責任もあります。
 もともと製販分離というビジネス設計がいかがなものか、90%を販売する日本郵便に何も権限がないこの体制の見直しを早期に検討することが求められると思います。製販一体でないとなかなか難しい事業であると思います。もう一度見直して、日本郵便が自発的に営業できる環境をどう構築するか、そのために必要な資金はかんぽ生命や持ち株の日本郵政が出したりしてサポートすることです。日本郵便という会社が生々発展しないと、日本郵政グループは成り立ちません。そういう問題点を提起しています。

■進展する高齢化社会の問題に関して、超党派で新しい協同組合的なものを作り、郵便局がその中核としての役割を果たすということが進められていると聞いています。

 超党派議連で細田博之先生が中心になって作っている法案ですが、仕組みは地方創生など国が関与しながら、地方自治体が中心となって消滅する地方を救っていこうという趣旨です。これまで、地方活性化では、いろんな政策が打ち出されてきましたが、なかなか成功していません。また、人口減少で消滅することは防ぎようがない面もあります。
 しかし、そこに現実的に人が住んでいる限りは、国も地方自治体も何等かの形でその方々の生活を見ていく責任があります。そのときにどういう仕組みを作るか、既存の仕組みでは難しいです。
 国や地公体の手がなかなか細やかに届かないような所では、救えるのは住んでいる方々の力となります。協力してみんなが助け合っていくという、共同体を作らなければならないということです。
 協同組合的なものを作り、国が地方自治体を介して交付金を支給するという仕組みです。運用は協同組合が担うわけですが、ここの核になるのが郵便局だと思っています。そういう仕組みを作るには、地域に存在する異業種の方々、郵便局や農協、信組、信金もみんなが力を合わせ、助け合っていかないとできません。地域のための法案として、極めて大きい意義があります。これは政治の責任だと思っています。


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