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2019年8月12日付 第7000・7001合併号

【主な記事】

支所業務を包括受託
[全国初]長野県泰阜村(やすおかむら)で開始


 日本郵便は全国初の取組みとして、長野県泰阜村(やすおかむら=横前明村長)の地方公共団体事務の包括受託を開始した(本紙7月29日付2面既報)。泰阜村の7つの地区を管轄していた南支所の廃止(7月26日付)に伴い、南支所業務を包括的に受託する。受託業務が行われる温田(ぬくだ)郵便局(丹羽亮浩局長)で8月1日、オープニングセレモニーが開催された。同支所が担っていた業務を7月29日に開始しており、セレモニー後に支所業務の包括受託が本格的に稼働した。

温田郵便局でオープニングセレモニー

 「地方公共団体の特定事務の郵便局における取り扱いに関する法律」(2001年)に基づき、地方公共団体の職員不在でも可能な5業務(住民票の写し・戸籍の附票の写し、戸籍謄本・抄本、納税証明書の交付)のほか、国民年金などの受付・取次、小型家電の回収、凍結防止剤の在庫管理業務等を担う。
 丹羽局長はじめ社員1人、非常勤1人の体制で受託業務を行うとともに、「印鑑登録」と「住民異動届」の2つの発行業務については、常駐する泰阜村職員(1人)が行う。
 村職員は1年間常駐し、局長と局員のフォローも行う。丹羽局長によれば「年間の取扱いは2000件に達する見通し」という。
 住民票の写し等の公的証明書交付事務のデータ入力を行うため、泰阜村役場と専用回線で結ばれている(同村役場の)パソコンを設置。同パソコンは、住民基本台帳システムなどの住民情報にアクセスする権限を付与されていないという。
 セレモニーには、泰阜村から横前村長、木下育夫副村長、原田瑞穂教育長、宮島善文参院議員(秘書代理)、長野地方法務局飯田支局の蜂谷稔局長、阿南警察署の宮林雄二署長、JAみなみ信州下条支所の原澤正光所長、温田商栄会の早野晶会長、泰阜村村議会の牧島忠雄議長、中島正夫副議長、温田区の中原利雄区長ほか計40人。
 また、日本郵便からは大澤誠執行役員副社長、信越支社の栁澤明彦支社長、中島孝経営管理本部長、塩沢房人地方創生推進役、酒井晃地方創生推進役、原田喜延主幹地区統括局長(浅川)、南信南部地区連絡会の栁田二郎統括局長(大島)、吉川勝彦副統括局長(鼎)、長澤好美副統括局長(旦開)、小林一男副統括局長(上郷)、稲垣一実副統括局長(阿智)、丹羽局長(温田)ほか、全特からは内海文男事務局次長が出席した。
 大澤副社長は「このたび、泰阜村の南支所で実施していた業務を温田郵便局が包括受託して行うことになった。自治体事務業務の包括受託は全国で初めてのこと。支所の窓口業務を受託するにあたり、泰阜村はじめ多くの方々と長い間検討してきた。開始にあたり、横前村長はじめ職員の方々の意見、希望を伺いつつ、総務省あるいはその他関係省庁とも調整しながら今日に至るまで約2年間かかった。その結果、この幅広い行政サービスを開始することが可能となった」と経緯を説明。
 「これまで南支所が担っていた役割を温田郵便局が引き継いで、地域と住民を結びつける郵便局としての役割をしっかり果たしていきたい。このような新たな連携をこれから全国で展開していきたいと考えている。地方公共団体にとって、住民の皆さまへの行政サービスの提供のあり方を今後どのように維持していくのかは大きなテーマ。一方、日本郵便にとっては、地方公共団体の事務の包括受託は、2万4000の郵便局ネットワークを維持していく上で非常に大事な業務だ。地域と地域の皆さまの利便性向上を図るため、郵便局も少しずつ力を出し、今後も積極的に進めていきたい」と語った。
 横前村長は「日本郵便から話をいただいて以来、包括業務委託するまで2年ほどの年月が過ぎた。この間、様々な課題があり、一つひとつ解決をしていくために、日本郵便と一緒になって取り組んできた。その結果、課題を超えることができ、先月7月17日には委託契約の調印式を行い本日を迎えた」と述べた。
 そして「この間、尽力をいただいた日本郵便はじめ、長野地方法務局飯田支局の蜂谷局長、多くの関係各位に尽力をいただいたことに感謝を申し上げるとともに、南支所を廃止して温田郵便局に業務のすべてを包括的に委託することに対して、村議会議員、村民の皆さまの理解をいただいたことにも改めてお礼を申し上げたい」と謝意を表した。
 南支所は昭和35年に支所として産声を上げ、昭和60年に現在の多目的集会センターの場所に移設をして以来、約34年間業務を担ってきた。泰阜村は南地区と北地区に大別され、保育園、小学校、中学校といった教育機関もそれぞれ南北にあった。道路環境も悪く、南北間の移動時には時間を要したが、道路改良も進んだことで現在ではスムーズに移動できるようになった。
 交通移動の利便性向上などの環境変化もあり、学校は統合したが、行政の窓口である南支所については行政サービスの低下につながることから統合を行わなかった。
 村の歴史を踏まえたうえで、横前村長は「近年の人口減少を考えると、住民サービスを後退せずに、いかに行政のスリム化を図っていくかが課題。南地区で唯一の金融機関である郵便局の存在、さらには村の南の玄関口である温田地区の活性化、それらを総合的に勘案して、温田郵便局が希望をすべて汲み取ってくれ、包括的に業務を担ってもらえることになった。村にとっても、大きな新たな一歩を踏み出したと思っている」と評価した。
 また「歴史が証明するとは思っているが、業務を委託したことで後々、村民の皆さまから『あの時こういうふうにして良かった』と言ってもらえることが最大の願いでもある。全国的には過疎町村があるが、こういった取組みを通じてひとつのきっかけとなって波及していくことを望んでいる。まだ課題はすべて解決したわけではない。さらに皆さまに支援を賜りたくお願いしたい」と語った。
 丹羽局長は「現在一部の郵便局で地方公共団体の窓口事務のうち、住民票の写しなど証明書交付事務を受託している。この受託範囲を、国民年金などの受付やその他の窓口業務にも拡大し、今まで南支所で取り扱っていたほぼすべての業務を温田郵便局で行えるようになった。全国初の取組みとなる」と意義を強調した。
 さらに「郵便局は郵便、貯金、保険のユニバーサルサービスを中核とする様々な商品やサービスを提供し、地域と寄り添い、地域と共に生き、地域を支える会社であり続けることを社会的な使命としている。包括受託を通じて、郵便局ネットワークを強化し、地域の皆さまの利便のさらなる向上に取り組んでまいりたい。南地区の行政の窓口という大事な業務を行う責任の大きさを改めて感じている。今まで以上に地域のコミュニティの場となり貢献できるよう、また温田駅前通りの繁栄につながるよう社員一同、精一杯がんばってまいりたい」と抱負を述べた。
 出席者の紹介後、テープカットと看板かけセレモニーなどが行われた。


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