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2019年8月5日付 第6999号

【主な記事】

特定調査を18万件に拡大
かんぽの契約問題 12月までに全体像把握

 日本郵政と日本郵便、かんぽ生命保険は7月31日、かんぽ生命保険の契約を巡り顧客に不利益をもたらしたことに対して、謝罪と今後の調査の進め方などについて、各社社長が出席し会見を行った。日本郵政の長門正貢社長は「お客さまの不利益の確実な解消や郵便局の信頼回復、再発防止のための改善策に迅速に取り組みたい。3社の社長はそれぞれの立場でしっかりと職責を果たすことが経営者としての責任」と述べた。調査は12月までに完了の目途をつける予定。9月には進ちょく状況を中間発表する。

 長門社長は「郵便局へのお客さまの信頼を大きく裏切ることになったことは断腸の思い。お客さまと日々誠実に業務に精励している社員の皆さんに深くお詫び申し上げる。お客さま本位の業務運営に取り組んできたが、十分ではなかった。お客さま第一の真の実現に向けて、全力で取り組みたい」と謝罪した。
 契約乗り換えに際して、顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能性のある「特定事案調査」はこれまで発表した9万3000件から18万件に拡大する。「契約乗換前後で予定利率が低下していて、保障内容や保障期間に変動のないもの」(約2万件)、「契約乗り換え判定期間後の解約により保障の重複・二重払いが生じたもの」(約7万件)、「新契約で不利益は確認されていないが、募集実態の把握のため調査するもの」(約4.6万件)などを新たに追加した。
 特定事案の対象者には8月5日からは返信用はがきを同封した書面を送付。8月中には全対象者への配布を終える。かんぽ生命の専用コールセンターからは復元の意向などを確認する。対面での説明が必要な契約者に対しては訪問も実施する。
 全契約2914万件、約2000万人に対しては9月中に書面を送付する。不利益が疑われる事案はかんぽ生命社員が調査を実施。疑問を持った契約者には、郵便局社員が訪問や電話で対応する。
 かんぽ生命では、全国の約400人のスタッフが調査を実施するが、募集人の調査には日本郵便コンプライアンス部門約150人の社員が協力する。かんぽ生命保険のコールセンターではスタッフ400人分の席を増やし、顧客からの問い合わせに備える。
 日本郵便では顧客からの問い合わせなどに対応するため、8月中は積極的な営業活動を自粛しているが、アフラックのがん保険と自動車保険は営業を続ける。そのほかの金融商品の販売については委託元との調整がついたものから再開する。
 かんぽ生命保険の商品については、8月中に営業社員に対して真のお客さま本位の徹底に向けた研修を実施する。チェック体制も整えたうえで、かんぽ生命の顧客対応に支障がない範囲で、営業活動を再開する。
 日本郵便の営業目標について横山邦男社長は、「今回の問題は貯蓄性商品の魅力が低下し、目標が達成困難になっているにもかかわらず、変えることができなかったことが原因の一つ」と述べた。今期は目標を設定せず、来期以降は、営業目標をお客さま本位の営業ができるよう抜本的に見直す。新規契約獲得を主とした目標から、定着率や保有期間などを指標に長期保有資産をベースとした目標に切り替えることを基本に組合などと話し合う。
 また、風通しの良い組織を目指し、現場の社員と役員の意見交換の場「フロントライン・セッション」を定期的に開催し、社員が感じている負担や不満、喜びなどを率直に話し合う。必要なものは速やかに経営に反映する仕組みを構築する。
 かんぽ生命保険は、2021年4月以降を予定していた「契約転換制度」や2020年4月に実施予定の「条件付き解約制度」の前倒しを検討する。また募集事前チェック機能強化は10月から実施する。かんぽ生命社員の営業目標の見直しは8月以降に行う。
 植平光彦社長は「今回の問題で新規契約数は減少し追加の費用は発生するが、販売費用も減少するため、2020年3月期の当期純利益の修正は行わない」としている。
 記者からは「4月のかんぽ生命保険の株式売却の時にこの問題を知っていたのではないか」という質問があった。長門社長は「目論見書は証券会社や法律事務所を通して、各種データをディスクローズしたうえで、会社の身体チェックも受けている。そのタイミングで隠すという判断はしていない。2018年は22件の不適正募集があったことがコンプライアンス委員会の報告書で数字だけ知っていた。その後、乗換に関することは1件だけと聞いている。重大事項と認識したのは6月27日の前」と答えた。
 また、記者から「この問題により、日本郵政の株価が下がり、数千億円の含み損が出て国民の財産が損なわれている。どう責任を取るのか」との質問があった。
 長門社長は「申し訳ないと思っている。我々はやれるべきことを精一杯努力してやっていくしかない」、横山社長は「不利益が生じた最後の方までしっかり対応したい。健全な企業価値向上の施策を進めていきたい」、植平社長は「18万件の調査をしっかり仕上げて、信頼回復を図っていく。責任を持って対処したい」と述べた。


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