「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6992号

【主な記事】

「日本のオリンピック・パラリンピック」へ
東京2020に貢献 木下範子日本郵政執行役

■東京オリンピック・パラリンピックに向けた日本郵政グループの取組み方針は。
 東京オリンピック・パラリンピックを「日本オリンピック・パラリンピック」にしたいということが最大のポイントです。東京2020のムーブメントを、東京だけではなく、全国的に広げていきたいと考えています。
 2万4000の郵便局ネットワークと40万人を超える社員のいる日本郵政グループだからこそできることがあるのだと思います。この力を最大限に活用し、オリンピック・パラリンピックを全国で盛り上げて、多くの人に一生に一度のイベントとして良い思い出をつくり、記憶に残してほしいですね。
 全国的なムーブメントづくりに貢献することは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)からも期待されているところです。
 そのために①郵便カテゴリー商品販売の極大化による「収益拡大」②東京2020ムーブメントを活用した「企業イメージの向上」③国家プロジェクトへの参画を通じた「社員の士気高揚」の3本柱を立てて取り組んでいます。

スポーツを切り口に
新たな展開を

■3本の柱の具体的な施策については。
 まずは「収益の拡大」です。郵便カテゴリーでスポンサーシップを取ったので、郵便の商品を活用して行うことになります。これまで、メダリスト切手の作成、東京2020大会[寄附金付]年賀はがき、ライセンス商品の郵便局での販売などを手がけてきましたが、これらに加え、様々な仕掛けを考えていきます。
 例えば、特定競技へのアプローチを通じた顧客基盤(熱狂的なファン、競技団体)の獲得。我々はラグビー日本代表に協賛していますが、ラグビーファン向けの新商品の開発を通じて、新たな顧客にアプローチすることを狙います。また、ラグビーW杯や東京2020大会で増加が見込まれるインバウンド(訪日旅行)のお客さまに対して、これまでの売れ筋商品の分析を進め、新たな商品拡充を検討しています。このほかにも、スポンサー企業と関係を深め、フレーム切手等既存商品の活用機会拡大や新規事業・サービスの創出などを目指していきます。
 「企業イメージの向上」では、スポーツフレンドリーな企業イメージを発信することを目指しています。具体的には、オリンピック・パラリンピック応援ステッカーを3月から全国の郵便配達のバイクに掲出しています。
 このほか、日本郵政の会社Webサイトではオリンピック・パラリンピック特設ページを開設し、各大会開会式までのカウントダウンを行うとともに、イベント出展や特殊切手「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(寄附金付)」を紹介しています。
 特設ページでは“「そばにいるから、できることがある。」リレー”と題して、各地の名所・名物を紹介しながら大会への声援や想いをグループ社員の皆さんに語ってもらい、日本の隅々からオリンピック・パラリンピックを応援するグループの姿をPRしています。
 オリンピック・パラリンピック競技への協賛も行っています。オリンピック競技では、先ほど申し上げたラグビー日本代表への協賛のほか、東京2020大会で新種目として採用された3対3で競うバスケットボールに協賛しています。パラリンピック競技では、アイシェード(目隠し)を着けて、鈴の入ったボールを転がしゴールを狙う「ゴールボール」という競技に協賛しています。こうしたスポーツ協賛も積極的に活用していきたいと思います。
 「社員の士気高揚」では、スポーツ体験や応援を通じた一体感の醸成を図ります。通常業務とは異なる切り口で地域のお客さまや同僚と交流する機会を通じて、国家プロジェクトへ参画している実感を持ってもらうこと。それによって、モチベーションアップの良い機会にしたいと思っています。具体的には様々なことが考えられると思いますが、協賛する各競技の大会は1年を通じて全国各地で開催されますので、競技会場へ足を運ぶ機会をつくることで、東京2020大会を目指す選手たちの迫力を、社員の皆さんに肌で感じていただきたいです。
 また、日本郵政グループ女子陸上部の選手2名がマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)に出場する予定ですし、トラック競技でも有望な選手がいますので、オリンピック日本代表に選出されるよう、グループを挙げて応援していきたいと思っています。
 来年7月の開幕まで、もうすぐ1年前になります。また、100日前になると聖火リレーも始まります。そうした節目のタイミングでは全国で大きなムーブメントが起こってきますので、時流を捉えたイベントや施策も打ち出していきたいと考えています。

地方自治体と連携を強化
郵便局の創意工夫に期待

■地域社会への貢献も大きな目的と聞いています。
 地方自治体との連携強化も重要です。参加国・地域との交流を図るホストタウンは300以上、自治体数にすると400近くあります。こうした自治体と郵便局が連携して色々な施策ができるとよいと考えているところです。
 地方創生という流れの中で、自治体との関係を強化していくことは経営の方針でもあります。地域との繋がりを深め関係を強化する一助として、東京2020大会や競技協賛の権益も活用していただければと思っています。

■ホストタウンでの取組みは、支社や連絡会が創意工夫で自主的に行うことになるのでしょうか。
 積極的な取組みを期待しています。自治体によってニーズが様々だと思います。先日、ゴールボールのとある海外代表チームのキャンプ地となった市では、市主催で海外代表チーム対日本代表チームの親善試合が計画されました。 その際、ゴールボール協会を通じて市から「集客に苦戦しているので郵便局に声かけが出来ないか」との相談があり、支社と地区連絡会にお話して開催周知に協力したということもありました。
 各々の自治体ニーズに合わせて対応し、自治体との良好な関係をさらに深めていけば、オリンピック・パラリンピック以外の場面でも活きてくるものと思います。

■自主的に取り組むことは、士気高揚やモチベーションのアップになりますね。
 そのとおりです。フロントラインにはたくさんの知恵やアイディアがあるはずで、オリンピック・パラリンピックを盛り上げるために、そうした各局の創意工夫を活かしていければと思います。
 自治体との連携で言えば、例えば、地域包括連携協定に基づいて競技会場がある自治体が作成したステッカーをポストやバイクに貼付したり、周知物品を製作したりということがあります。また、スポーツをモチーフに切手アートを作成して公共施設に掲示した例もあります。郵便局に対する自治体の感謝は大きいものがあり、色々な発展性があると思います。

■全国の支社、郵便局から多くのアイディアが出てくることが期待されます。
 今、非常に反省しているのは、「オリンピック・パラリンピックは制約が大きすぎて何もできない」との印象をフロントの皆さんに与えすぎてしまったということです。
 以前、何度かフロントラインからのアイディアを募集したことがありましたが、組織委員会の許諾(アプルーバル)が非常に厳しいという理由で実現に結びつけられなかった。フロントの皆さんは、おそらく何もできないのではないかという先入観を持ったのではないでしょうか。
 確かに、許諾については細目が定められていて面倒な面はあります。いただいたアイディアは、そのままでは実現できないかもしれない。でも、そのアイディアを基にして少し修正を加えれば可能ということもあるかもしれない。その知恵出しを一緒になって行い、一緒に汗をかいていきたいと思っています。
 組織委員会も走りながら考えている面があり、以前ダメだったことが今もそうだというわけでもないのです。例えば、オリ・パラのバッジ〈写真参照〉は、当初郵便事業に従事する社員しか着用できないと言われていましたが、現在は荷物や金融業務に従事する郵便局社員、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の社員も着けてよいことになっています。 最もお客さまのニーズが分かっているのはフロントの皆さんです。そのアイディアを受け取って、相談しながら同じ方向を向いてチャレンジし、一緒に突破していきたいと思っています。
 郵便カテゴリー商品販売による収益拡大の機会でもあり、様々なアイディアを活かし、人の呼び込みや間接的な郵便局商品・サービスの営業にもつながることにもなります。そうした可能性を探っていきたいと思います。

■社員の皆さんも地域の人との結びつきを強固にできる良い機会になりますね。
 先日、ゴールボールの体験会に行ってきました。協賛企業となった縁で講習会に出席しました。最初はゴールボールがどういう競技かも知りませんでしたが、やってみるといろんなことが分かりました。
 体験会を通して感じたのは、この競技は、我々が日々の仕事で最も大切にしなければならない「声を掛け合うこと」「コミュニケーションをとること」の大切さを改めて認識させてくれるということです。目隠しをしていますから、ボールがどこに来たかを「はい、〇〇さん。そこにボールがあります」と伝え、コミュニケーションを図るのです。大きなはっきりとした声で、意思疎通を図らなければならないのです。
 最近はパソコンやスマホで文字情報を追うことが増えた一方で、耳で聞くことや人と話すことが、ともすると疎かになっていることもあるように思います。人の話をよく聞くことの重要性は、競技に限らない話です。
 パラリンピック競技は、我々が日頃忘れて、疎かにしていることを思い起こせるきっかけになるのですね。社内研修にパラリンピック競技を使っている企業もあると聞いています。パラスポーツは、そうした気付きを与えてくれるのだなとすごく勉強になりました。
 パラリンピック競技にボッチャという種目がありますが、現在、日本郵便では体験キットを貸し出していますので、それを使って臨時出張所などでボッチャの体験会を開催すると集客効果も期待できるかもしれません。
 オリンピック競技もしかりです。女子陸上部の応援もそうですが、行くまでは少しためらいがあっても、実際やってみると意外と面白く学ぶことも大変多いです。実際に観に行ってみると、競技に興味を持てるし、自分も入って行けます。協賛を活用し、自ら進んで一歩行動することで気付きが得られるという経験機会も作っていければ良いと考えています。
 日本各地のホストタウンや事前キャンプ地では、受け入れる選手団のデモンストレーションもあるでしょう。そんなところに足を運ぶと、その競技や参加する国がすごく近くなるはずです。なおかつ自治体と連携するので喜ばれます。ウィン・ウィンの関係になれるように活用していくことが必要だと思います。
 東京オリンピック・パラリンピックへの参画は、1粒でいくつもおいしいところがあるのですね。日本郵政グループがスポンサーシップを取得した大きな意義もあるということです。社員は士気高揚、お客さまに向けては商品や郵便局をPRしていくツールとなれば、日本郵政グループとしてたいへん良い機会となります。

■全国の郵便局長の皆さんへメッセージをお願いします。
 ぜひ、東京オリンピック・パラリンピックを「日本のオリンピック・パラリンピック」にしましょう。日本郵政グループがスポンサーとして強みを活かした貢献策だと思います。一緒になって考えて汗を流していきたいですね。気軽に相談もしてもらいたいと思います。
 自治体に足を運んでいただき、何に困っているのかを知り、何ができるかを聞いてみてください。私たちの強みは、郵便局がすでに自治体とのパイプを持っていることです。それを活かしながら、さらにパイプを太くしていただくための機会として、東京2020オリンピック・パラリンピックを活用していただければと考えています。
 日本郵政グループのスポンサーとしての役割が成功するかどうかは、まさに全国のフロントの皆さんの双肩にかかっています。

■郵便局が取り組みたいと思った場合はどこに問い合わせたらいいでしょうか。
 基本的には通常業務と同様に支社、本社の担当に問い合わせていただくのだと思います。
 本社は日本郵便、日本郵政それぞれにオリンピック・パラリンピック室があり一体となって動いていますので、気軽にご相談いただければと思います。



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